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漫画の話です。

『好きめが』藤近小梅の描く心の距離に悩む姿の話

ここに結婚式場を建てよう(挨拶)。好きな子がめがねを忘れた 8巻通常版 (デジタル版ガンガンコミックスJOKER)作者:藤近小梅スクウェア・エニックスAmazon8巻の発売された『好きめが』こと『好きな子がめがねを忘れた』。小村君も三重ちゃんも、お互いの親…

人の形は何のため 「よき」舞いを求めて踊る『ワールド イズ ダンシング』の話

今を時めく猿楽集団・観世座の座頭の息子として生まれた鬼夜叉。しかし彼には芸のよさがわからぬ。人の形は踊るための形などではないのではないか。そんな思いを捨てきれぬ。しかしある日、彼が偶然目にして白拍子の舞い。そこにはたしかに「よさ」があった…

少女はちんちんを探しにどこまでも『ミムムとシララ ドラゴンのちんちんを見に行こう』の話

魔術学園でいつも成績二番のシララは、いつも一番のミムムにライバル心を燃やしている。今日も今日とて張り出されたテスト結果を見て悔しさに身を撃ち震わせていたシララはだが。突然ミムムから話しかけられた。 「私とドラゴンのちんちんを見に行かない?」…

『3月のライオン』子供姿の零とスタートラインと、生きていいと思える「居場所」の話

ようやく新刊の発売された『3月のライオン』。約1年10か月ぶりか。そうか……3月のライオン 16 (ヤングアニマルコミックス)作者:羽海野チカ白泉社Amazon前半はひなとの零のアンニャモンニャで「あー零くんいけませんそれはいけませんよーあーいけませんい…

知の美しさと過去からの集積 『チ。』と『はじめアルゴリズム』の話

5巻が発売された『チ。』。チ。―地球の運動について―(5) (ビッグコミックス)作者:魚豊小学館Amazon地動説に文字通り命を賭けた人間たちが、また命を消し、そして次の誰かへと知をつないでいく。相変わらず、残酷さと感動が同居しています。 さて、『チ。…

『ワンダンス』カボの強さと弱さ、浮かぶ宇宙と踏みしめる大地の話

高校対抗ダンスバトルの個人戦が佳境に入った『ワンダンス』。ワンダンス(6) (アフタヌーンコミックス)作者:珈琲講談社Amazonワンダ、伊折、恩ちゃん、宇千、カベ、そしてカボ。それぞれがそれぞれのニュアンスを出して踊るバトルは、ビートを見せていく…

『アオアシ』サッカーとアドリブの、言語化の先の身体化の話

着々と読み進んでいる『アオアシ』。 現時点で21巻まで行ったんですが、読んでて色々考えが広がるところはあるのですが、中でも「これこれ!」となったのは12巻。読んでて膝を打ちました。アオアシ(12) (ビッグコミックス)作者:小林有吾小学館Amazonどこ…

『アオアシ』「つながる」ことの面白さ、気持ちよさの話

サンデーうぇぶりにて6巻まで解放されたのを機に、そこまで一気に読んだサッカー漫画の『アオアシ』。アオアシ(1) (ビッグコミックス)作者:小林有吾小学館Amazon実は以前、同じ作者の『ショート・ピース』を読んで面白かったので、試しにと1巻に手をだ…

『チ。―地球の運動について―』積み重なる知の価値の話

今回も『チ。』についての話。チ。―地球の運動について―(1) (ビッグコミックス)作者:魚豊小学館Amazon前回の記事では、理論の美しさの価値の話をしました。今回はまた別の価値として、タイトルの通り、積み重なる知の価値について書こうと思います。本作…

『チ。―地球の運動についてー』理論の「美しさ」の意味と価値の話

新刊の発売された、魚豊先生の『チ。ー地球の運動についてー』。先ごろにはマンガ大賞2021の第2位も受賞している、今ノリにノっている漫画の一つだと言えるでしょう。チ。―地球の運動について―【分冊版】 1 (ビッグコミックス)作者:魚豊小学館Amazon『…

『子供はわかってあげない』あまりにも自然だったLGBT+明大の話

本年8月20日公開予定の、映画『子供はわかってあげない』。 agenai-movie.jp 子供はわかってあげない(上) (モーニングコミックス)作者:田島列島講談社Amazon本日は、主人公の一人であるもじくんのお兄さん(?)である、明大の登場する場面が公開されま…

『葬送のフリーレン』人との交わりと褒めることの意味の話

前々回、前々々回の続きにあたる、『葬送のフリーレン』の話。葬送のフリーレン(4) (少年サンデーコミックス)作者:山田鐘人,アベツカサ発売日: 2021/03/17メディア: Kindle版それらの記事で、大人/子供や、交換などについて書いてきましたが、フリーレン…

『その着せ替え人形は恋をする』自分では気づけぬ思い込み・決めつけの話

アニメ化が決定した『その着せ替え人形は恋をする』。やんややんや。その着せ替え人形は恋をする 1巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)作者:福田晋一発売日: 2018/11/24メディア: Kindle版将来頭師*1になることを夢見るインドア系ボッチ・五条新菜(ご…

『葬送のフリーレン』「交換」と恩返しと連環する人のつながりの話

前回に引き続き、今回も『葬送のフリーレン』のお話。葬送のフリーレン(4) (少年サンデーコミックス)作者:山田鐘人,アベツカサ発売日: 2021/03/17メディア: Kindle版前回の記事では、同作で描かれている「理想の大人」像について書きました。 yamada10-07…

『葬送のフリーレン』「理想の大人」と大人の在り方の話

マンガ大賞2021の大賞に見事輝いた『葬送のフリーレン』。やんややんや。葬送のフリーレン(4) (少年サンデーコミックス)作者:山田鐘人,アベツカサ発売日: 2021/03/17メディア: Kindle版さて、最新刊の4巻では僧侶のザインをパーティーに加え、一行は…

『違国日記』7巻の感想の話 下

違国日記(7)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing)作者:ヤマシタトモコ発売日: 2021/02/08メディア: Kindle版page.34 オーディションの朝 嘘と本当 存在と欠如 悩みの貴賎 何気なく歌っていた歌のうまさを、槙生に褒められ、照れる朝。 「愛されること…

『違国日記』7巻の感想の話 中

違国日記(7)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing)作者:ヤマシタトモコ発売日: 2021/02/08メディア: Kindle版 page.33 目立つこと キャラのこと ボーカルオーディションに出るかどうか悩む朝。 人前で歌うことに怖気づく朝へ、目立つのが嫌なのになぜ軽…

『違国日記』7巻前半の感想の話

違国日記(7)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing)作者:ヤマシタトモコ発売日: 2021/02/08メディア: Kindle版 page.31 私の父親って「誰」? 通り過ぎざまに、ドラマの感想で「空虚なやつだなあ」と吐き捨てる槙生。 実際同居している人間がこうだった…

全一お嬢様は世界を熱くする!『ゲーミングお嬢様』の話

全一お嬢様。 国民の九割がご存知のとおりそれは、ゲームの大会で優勝したお嬢様のこと。今その看板を背負うのは、日本屈指のお嬢様が集う超・お嬢様高校、聖閣東芸夢学園に通う祥龍院隆子である。eお嬢様戦国時代にその名を轟かす彼女は今日も、勝てば全力…

『よふかしのうた』6巻後半の感想の話

よふかしのうた(6) (少年サンデーコミックス)作者:コトヤマ発売日: 2021/01/18メディア: Kindle版 第54夜。ドキッ!男だらけの銭湯大会! 吸血鬼のなり方(され方)は知ってるけど、まだなっていないマヒル。つまり、まだ血を吸われていないということ。 …

『よふかしのうた』6巻(前半)の感想の話

よふかしのうた(6) (少年サンデーコミックス)作者:コトヤマ発売日: 2021/01/18メディア: Kindle版 第50夜。吸血鬼になることを決意するマヒル 人当たりがよくて、友達も多い。と思われてるマヒルの内面。キクと出会って楽しさを感じたことで、翻って今ま…

俺マン2020の話

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 昨年はコロナ禍で引きこもるしかなく、本好きには絶好の積読崩しイヤーだったかもしれませんが、もともと引きこもり傾向のある私にはあまり関係なく、例年と大差ない読書量でした。今年もぼち…

『GIANT KILLING』椿が「好きにやる」ことの意味の話

最新巻が発売された『GIANT KILLING』。GIANT KILLING(57) (モーニングコミックス)作者:ツジトモ発売日: 2020/12/23メディア: Kindle版天宮杯で緒戦の徳島を破ったチームをよそに、アジアカップの敗戦から椿は塞ぎこみ続けています。 靭帯を…

おかしみを生み出すズレの話 ボケとツッコミ編2

前回に引き続き。 おかしみを生み出すズレの話 ボケとツッコミ編1 - ポンコツ山田.com 前回の記事の引きで、前回取り扱ったボケとツッコミの関係を「逸脱修正型」と名付け、それとは違うものを「逸脱発見型」としました。今回は、そちらについて。 逸脱発見…

おかしみを生み出すズレの話 ボケとツッコミ編1

前回の記事を承けて今回は、笑いの場でしばしば言及される、ボケとツッコミについて。 おかしみを生み出すズレについての話 - ポンコツ山田.com ボケにしろツッコミにしろ、明確な定義があるわけではないと思いますが、ふんわりした捉え方としては、 ボケ:…

おかしみを生み出すズレについての話

笑いについて、過去から現代にいたるまで多くの知の巨人たちがさまざまな論考を残しており、もちろんその大半、どころか1%も読めてはいないだろうけど、その寡聞の中で私は、河合隼雄氏の、何かを対象化し、対象の中に見出したズレを楽しむ、というもの*1…

『BLUE GIANT SUPREME』辿り着いた極点とゼロからの探求の話

続編の『BLUE GIANT EXPLORER』とともに、満を持して発売された『BLUE GIANT SUPREME』の最終巻。あまりにも最の高だったので、雑に感想を書こうと思います。BLUE GIANT SUPREME(11) (ビッグコミックススペシャル)作者:石塚真一発売日: 2020/10/30メディ…

『水は海に向かって流れる』「いい子」の直達の怒りと大人への成長の話

前回の記事の最後で予告したくせに少し間が空いてしまいましたが、今回も『水は海に向かって流れる』の話です。前回一か月近くも前じゃん。 ともかく、予告どおりに今回は直達のお話。榊との出会いを通じて、子供のままでいようとする呪いを解いた直達の話で…

『水は海に向かって流れる』榊の怒りと幸せのなり方の話

先ごろ最終巻が発売された、『水は海に向かって流れる』。水は海に向かって流れる(3) (週刊少年マガジンコミックス)作者:田島列島発売日: 2020/09/09メディア: Kindle版16歳の少年と26歳のお姉さんの、一つ屋根の下の複雑な関係もこれに終幕。軽妙な中に…

『葬送のフリーレン』旅でフリーレンが知るもの、気づくものの話

先日発売された1巻を読んで以来、評価うなぎのぼり中の『葬送のフリーレン』。葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)作者:山田鐘人,アベツカサ発売日: 2020/08/18メディア: Kindle版レビューは前回の記事で書きましたが(魔王を倒しても世界は続…