ポンコツ山田.com

漫画の話です。

寡黙な眼鏡と空気読みのギャル 凸凹二人の手探り恋模様『正反対な君と僕』の話

高校生の初交際話の漫画だって面白く読めちゃうんだから、読む人間と作品の距離なんて大して関係ないってのが分かりますね(挨拶)。 ということで、現在ジャンプ+で連載中の、『正反対な君と僕』の話です。正反対な君と僕 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)作…

『スペシャル』読者も飲みこまれるキャラクターと同じ地平の不条理の話

さて、『スペシャル』の最終巻が発売されたわけですが。スペシャル (4) (トーチコミックス)作者:平方イコルスンリイド社Amazon 3巻の途中くらいからきな臭さはたちこめだしていましたが、最終巻の4巻ではもうきな臭さで充満。噎せかえりそうなくらいきな臭…

おせっかいは心の壁を溶かす『氷の令嬢の溶かし方』の話

容姿端麗、文武両道、品行方正。でありながら、他の生徒と慣れ合わない孤高の高校生活。本名の字面も相まって、氷室冬華は「氷の令嬢」とあだ名されている。 マンションで一人暮らしの火神朝陽は、そんな彼女がお隣さんであることは知っていたけど、人付き合…

映画が好きな隣のお姉さんが好きな僕と映画とお姉さん『隣のお姉さんが好き』の話

毎週水曜日は映画の日。そう決めたのは先週のこと。映画が好きなわけじゃない。好きなのは隣のお姉さん。隣のお姉さんが映画が好きだから、彼女と一緒にいるために、映画を見たい。 好きって何だろう。本当に好きなのに。全部好きなのに。 隣のお姉さんはど…

『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』コミュニケーションが生むドラマと、私が求めた/求めていなかったものの話

昨日は勢いのままに『シン・ウルトラマン』の感想を書き殴りましたが、端的にまとめれば、「損をしたとは思わないけど、期待していたものではなかった」というものです。 じゃあその私が期待していたもの、『シン・ゴジラ』は百億万点だけど『シン・ウルトラ…

『シン・ウルトラマン』見てきたマンの感想 ドラマと特撮のちょっと残念な塩梅の話

『シン・ウルトラマン』見てきたマンによる感想です。 前提その1:ウルトラマンの谷間世代。リアタイで見てないし、そもそもまともにウルトラマンシリーズは見てない人間。 前提その2:『シン・ゴジラ』が百億点だった人間。 それを踏まえて以下感想。 「…

君は漫画のために死ねるか!?『これ描いて死ね』の話

君は漫画のために死ねるか!? 君は漫画のために殺せるか!? 面白い漫画は人を生かす。生かされた人は、自分のように誰かを生かすべく面白い漫画を描こうとする。 しかし、はたと気づく。 面白い漫画を描くのは、とてもとても難しいと。 そして必死で描いて…

言葉は剣よりも強いか モンゴルに仇なす奴隷の刃はマルチリンガル『ゾミア』の話

ゾミア(1) (ヤングマガジンコミックス)作者:浅村壮平,石田点講談社Amazon 13世紀。それはモンゴルの世紀とも称されるほど、モンゴル族がおおいに威を振るった時代です。 世にも有名なチンギス・ハンが初代モンゴル帝国の皇帝となったのが1206年。最…

『違国日記』やめる人/やめない人と、やめられない「才能」の話

「才能」に悩む朝と苦しむ槙生の『違国日記』9巻。違国日記(9)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing)作者:ヤマシタトモコ祥伝社Amazon この巻で印象に残ったのは、まさにこの「才能」の話でした。 部内で誰よりも音楽の才能に恵まれているように見えな…

『さよなら絵梨』単調なコマ割と期待を裏切られるカタルシスの話

『ルックバック』以来、再び長編読み切りを上梓した藤本タツキ先生。 200pオーバーという大ボリュームでありながらページを送る指が止められず、更新された日曜深夜にあっという間に読み切ってしまいました。 さて本作、二転三転するストーリーや、どこ…

『タコピーの原罪』あなたを一人にしない、ハッピーを生む「おはなし」の話

再び『タコピーの原罪』。今日は「おはなし」についてのお話。タコピーの原罪 上 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:タイザン5集英社Amazonタコピーの原罪 下 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:タイザン5集英社Amazon この物語のトリガーにして傍観者であると…

『タコピーの原罪』タコピーの「原罪」とはなんだったのか、あるいは善悪の意識の萌芽の話

原罪。それは、祖であるアダムが犯したために、その子孫である人間が生まれながらにして負っている罪。 キリスト教を元とするこの言葉をタイトルに関する問題作が、先ごろ完結巻を刊行しました。タコピーの原罪 上 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:タイザン…

『その着せ替え人形は恋をする』連写ポートレートと五条への同一化の話

アニメも評判のまま幕を閉じ、新刊も出た『その着せ替え人形は恋をする』。その着せ替え人形は恋をする 9巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)作者:福田晋一スクウェア・エニックスAmazon 9巻では、太った海夢、一眼レフを買った海夢、そのカメラでレイ…

『メダリスト』『3月のライオン』敗者と勝者のメンタリティの話

今一番アフタヌーンで推してる作品『メダリスト』。メダリスト(5) (アフタヌーンコミックス)作者:つるまいかだ講談社Amazon 最新刊では全日本選手権の予選にあたる、ノービスAの中部ブロック大会に出場します。 さてこの作品、しばらく前から羽海野チカ…

かわいいペットは地球を救う『カワイスギクライシス』の話

数多の星を支配下に置く帝国アザトス。かの国の矛先は今地球へ向けられ、先遣隊として降り立ったのは、帝国軍きっての俊英、リザ・ルーナ。低レベルな地球の文明に辟易していた彼女だったが、小休止しようと入った猫カフェで、恐ろしいものを目の当たりにす…

『2.5次元の誘惑』意識される/目を逸らされる過去の話

13巻現在で、8名ものヒロインが登場している『2.5次元の誘惑』。2.5次元の誘惑 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:橋本悠集英社Amazon リリサ。 みかり。 まゆら。 753。 ののぴ。 アリア。 まりな。 夜姫。 ヒロインというか、ちゃんと内面の描…

『2.5次元の誘惑』夜姫とののぴ 過去の受容と未来への一歩の話

最新13巻で、冬コミ編も一段落した『2.5次元の誘惑』。2.5次元の誘惑 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:橋本悠集英社Amazon 冬コミ編で本格的に登場したコスプレ四天王の一人である夜姫ですが、当初は炎上上等の承認欲求拗らせウーマンかと思われました…

新たな出会いと別れ ダイが世界に与える感動の予感『BLUE GIANT EXPLORER』5巻の感想の話

人懐こいピアニスト・アントニオとの出会いと、なんちゃってエージェント・ジェイソンとの別れ。孤独のドライブと、レッスンの生徒たち。 一人でアメリカに来たダイは、また新たに出会いと別れを得ました。そんな5巻。BLUE GIANT EXPLORER(5) (ビッグコ…

『アオアシ』思考の省エネ化と、アシトと北野の俯瞰の目の話

高校ユース決勝。青森星蘭戦がついに決着を迎えた『アオアシ』27巻。アオアシ(27) (ビッグコミックス)作者:小林有吾小学館Amazon 最新刊の発売日ですし、激戦の結末をここでは書きませんが、主人公アシトの今までが集約した結果だったとだけ言っておきま…

『よふかしのうた』人と吸血鬼 夜と昼 別物のようで地続きにある世界の話

最新刊で吸血鬼vs探偵の話も一区切りの『よふかしのうた』。よふかしのうた(10) (少年サンデーコミックス)作者:コトヤマ小学館Amazon 吸血鬼とはどんな存在なのか、その中でもナズナはどんな吸血鬼なのか、というところに踏み込んだエピソードでした。 …

戦乱渦巻く世界で始めたのは酒場経営!?『異剣戦記ヴェルンディオ』の話

異剣。 それは特別な力を秘めた武器。ある剣は巨大な城門を一撃で破壊し、ある剣は持ち主に雷光のごとき速さを与え、またある剣は竜巻を起こして一軍を薙ぎ払う。 そんな異剣が巷に溢れた、異剣戦争と称される戦乱の時代、傭兵稼業で暮らしていたクレオには…

『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』と『チ。』に見る、先人が積み重ねた知への敬意の話

マガポケで連載している『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』。転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます(6) (マガジンポケットコミックス)作者:石沢庸介,謙虚なサークル講談社Amazon 長いんで以下『第七王子』と略し…

香りの表現と、ボキャブラリーと、言葉と感覚の結び付け方の話

先日の記事で、味覚の言語化についての話をしました。 yamada10-07.hateblo.jp その中で 与える言葉は、特殊な語彙である必要はありません。凡百の言葉でいいのです。大事なのは、その言葉が自分の感じたものにフィットしているか、それだけでうまくフィット…

クラフトビールと、『琥珀の夢で酔いましょう』と、感覚の言語化による体験の区別の話

今年の年始の目標に、ダイエットもかねて「雑なカロリーをとらない」を掲げまして、手始めに晩酌の回数を、週に2,3回だったのを1回に減らしました。 私の晩酌は基本、TAKARAの100円の缶チューハイでつまみもスナック菓子と、いかにも雑なカロリ…

対立者を敵と呼ぶ現代世界と、『チ。』に見る相容れないものと歩む世界の話

最近知った思想家で倉本圭造という方がいまして。 finders.me 同氏を知ったのはこのネット記事でなんですが、『新聞記者』を見ていない私でも、その論旨には感じ入るところ多く、同サイト掲載の執筆記事も一通り読みました。 経営コンサルタントであり経済思…

何もなくても楽しいはあるよ『とくにある日々』の話

とくにある日々(1) (ヒーローズコミックス わいるど)作者:なか憲人ヒーローズAmazon 中学とか高校生の時って、意外と不自由だったと思うんですよ。 まず、基本的に勉強しなきゃだから一日の半分は教室の中に拘束される。机の前に向かわされる。 狭い教室…

『ワンダンス』『ブルーピリオド』『メダリスト』言葉を与えられた感覚とその影響力の強さの話

『ワンダンス』。『ブルーピリオド』。『メダリスト』。 ダンス、絵画、フィギュアスケートと、どれも芸術(表現)をテーマにした、私の好きな漫画ですが、これらの作品には共通点があります。それは、感覚の言語化に強く意識的である点です。ワンダンス(6…

主人公と自分の解釈違い、あるいは主人公の嫁と「俺の嫁」の話

友人と雑談していて考えた話その2。 友人が 「基本ネタバレ絶対許さないウーマンだけど、いい感じになりそうな相手が複数いる恋愛ものだけは、先に主人公がどの男とくっつくか知ってからじゃないと読めない。私は恋愛ものを読むとき、自分ならどの男を好き…

愛したいのか知りたいのか オタクの興味の二つの方向性の話

昔からオタクってなんやねんというのはずっと考えていて、自分はオタクなのかそうでないのか、友人なんかからはオタクと思われてるだろうけど自分では別にそうは思ってなくて、それって結局はオタクってなんやねんていう、定義が定まってないからなんですよ…

私たちの日々は強く楽しく軽やかに 『三拍子の娘』の話

母の四十九日が終わってすぐ、父は旅に出ると言った。ピアノを弾いて世界中を回るのだと。 私は言った。残された私たち姉妹はどうなるの、と。私は受験生だし、妹たちはまだ小学生なんだよ、と。 父は言った。大丈夫だよ、伯母さんにはもう話はつけてあるか…