ポンコツ山田.com

漫画の話です。

雑記

『フィットネス住職』説法とダイエットとなりたい自分になるための話

2025年1月3日付ののジャンプ+で掲載された、ネズクマ先生の読み切り『フィットネス住職』。 shonenjumpplus.com 霊障と思しき体の不調に悩む女子高生がお寺の住職に相談すると、説法という名のダイエットにいざなわれ、心身の復調と共に悩みも解決する…

『2.5次元の誘惑』『モルモットの神絵師』作者と鑑賞者の間にある動的な営みの話

新刊にてまゆら復活編に一区切りがついた『2.5次元の誘惑』。2.5次元の誘惑 21 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:橋本悠集英社Amazon 区切りをつけつつ、新キャラを出しつつ、さらにガチホラー話も入れつつ。ガチでホラーにふっててとてもいいですね。もっと…

『アオアシ』セリフ内のカッコ書きによる、没入感の消失の話

新刊が出てやっぱり面白い『アオアシ』。ゲームの中で挫折と成長を重ねていく姿は見ていてワクワクしますね。昨日もつい既刊を読み返してしまい、寝不足気味です。アオアシ(37) (ビッグコミックス)作者:小林有吾小学館Amazon さて、面白い作品とはいえ、…

『きのう何食べた?』ケンジみたいになれたシロさんの17年の変化の話

最新刊の23巻で、まさかのシロさんとケンジの結婚式を挙行した『きのう何食べた?』。きのう何食べた?(23) (モーニングコミックス)作者:よしながふみ講談社Amazon 雑誌連載時に読んだときは、シロさんがぶちぎれるんじゃないかと本気で心配したのは以…

『モルモットの神絵師』コミュニケーションの本質と、漫画を描くことと漫画の感想を書くことの意味の話

引き続き『モルモットの神絵師』を読んでのお話。 shonenjumpplus.com 本作の主人公・岡太朗は、インフルエンサーのチハルに監禁され、「人のため」の絵と「自分のため」の絵の2枚を描きあげた後、チハルが「『自分のため』に描いた絵の方が美しい」、「『…

『モルモットの神絵師』モルモット/人間を見る目と、「絵を描くこと」がつないだものの話

本日(令和6年9月12日)付でジャンプ+に掲載された、中山敦支先生の読み切り『モルモットの神絵師』。 shonenjumpplus.com これがたいそう面白かったのです。 物語は、世間で人気のあるものを徹底的にリサーチして、「いいね」を稼ぎ、フォロワーを稼ぎ…

『ヤンキー君と科学ごはん』「当たり前」に隠された理屈の面白さの話

現在「となりのヤングジャンプ」で連載中の『ヤンキー君と科学ごはん』。今まで特に触れてきてませんが、現在連載中で既刊5巻以内のおすすめ作品を問われたら、五指に入るくらいには好きなんですよね。ヤンキー君と科学ごはん 1 (ヤングジャンプコミックスD…

アニメ『ワンダンス』に期待する「見てて気持ちのいい」ダンスの話

アフタヌーンで連載中の『ワンダンス』がアニメ化という報が飛び込んできた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。 wandance.asmik-ace.co.jp 本作は、自身の吃音もあってコミュニケーションに自信のなかったカボこと小谷花木が、高校に入学し、ストリート…

漫画のコマとアニメのカット 時間のブランクとそれを削ぎ落した『THE FIRST SLAM DUNK』の話

先日『THE FIRST SLAM DUNK』の記事(時間軸とシームレス 時間を操られた私たちが呑み込まれる『THE FIRST SLAM DUNK』の世界の話 - ポンコツ山田.com)を書いたときに、アニメのカットの時間の流れ方について色々考えましたが、それを漫画のコマと比してみ…

『逃げ上手の若君』アニメでわかる、漫画にこめられた濃密な情報量の話

『逃げ上手の若君』のアニメが始まり、連載デビュー作から3作全てがアニメ化という偉業をあっさり成し遂げている松井優征先生、やっばいすね。逃げ上手の若君 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:松井優征集英社Amazon そのアニメを視聴したのですが、1話…

『だんドーン』「呪術師」吉田松陰と受け継がれる呪いの話

先週発売された2024年32号のモーニングに掲載された、泰三子先生の『だんドーン』の番外編、「番外長州編 松の下の若人たち」。長州にて松下村塾を開き、志士たちの師として明治維新に大きな影響を与えた吉田松陰と、その弟子の桂小五郎を主人公に描い…

『富めるひと』『遠い日の陽』ひとの抱えるやましさとそれを薄れさせる別の価値の話

以前も別の読み切りについて感想を書いた横谷加奈子先生の新作読み切り『富めるひと』。 comic-days.com 9歳のときに余命一週間と突如宣告された自分のため、3億円かかる手術の費用をどうにかして賄おうと貧しい両親が宝くじを買ったらまさかの10億円当…

『好きな子がめがねを忘れた』二人が贈り合った「祝福」の意味とそれが込められた大切なものの話

ついに最終巻が発売された『好きな子がめがねを忘れた』。好きな子がめがねを忘れた 12巻特装版 小冊子付き (デジタル版ガンガンコミックスJOKER)作者:藤近小梅スクウェア・エニックスAmazon 最後まで口から砂糖を詰め込まれるような甘さに、用法用量を守り…

『その着せ替え人形は恋をする』五条の二つの後悔と、現実になってしまった「手の届かないもの」の話

13巻での初コミケ、海夢のハニエルコスプレが大いに会場を沸かせた中、その衣装の制作者である五条は、一人浮かない顔をしていました。その着せ替え人形は恋をする 13巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)作者:福田晋一スクウェア・エニックスAmazon …

『その着せ替え人形は恋をする』一目惚れへの五条の挑戦と、今更気付いたものの話

13巻でコミケでのコスプレデビューを果たした海夢と五条。 いつもどおり、五条の作ってくれた最高の衣装を着て最高の気分をまとい、囲み撮影の終わらせ時もわからなくなるほどの驚異的な盛り上がりを見せた海夢とは裏腹に、その衣装を作り、第三者からも大…

『正反対の君と僕』身体感覚の言語化による強い共感の話

先日6巻の発売された『正反対の君と僕』。正反対な君と僕 6 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:阿賀沢紅茶集英社Amazon 1巻の帯に「真逆な2人の共感ラブコメディ」の惹句があるように、登場人物たちの心理描写、というよりは心理の言語化が巧みで、それが…

『葬送のフリーレン』雪山手ぶら一人旅で気づいた、アニメと漫画で違う想像の余地の話

面白いぞ『葬送のフリーレン』アニメ。「葬送のフリーレン」Blu-ray(Vol.1 初回生産限定版)種﨑敦美Amazon ケルティックなBGMがマッチしているのが意外で、20~30年前にちょっとケルトミュージックブームが起こったのを思い出しました。エンヤとか。 そ…

『葬送のフリーレン』「ヒンメルはもういないじゃない」人類と魔族を分かつ死者への思いの話

正月の暇に飽かして『葬送のフリーレン』第1期を一気視しました。葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)作者:山田鐘人,アベツカサ小学館Amazon 特に日常パートは、原作のシンとした雰囲気を活かしている、いいアニメ化ですね。 ところで、放送以…

『2.5次元の誘惑』コスプレ衣装を作る動機の言語化とその意味の話

今年のアニメ化も決定している『2.5次元の誘惑』の最新刊。2.5次元の誘惑 19 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:橋本悠集英社Amazon 19巻で一番好きなコマはこれでした。 (p26) ひとり脚が上がりきってないマリ姉ェ…… アリアの脚だけ筋肉質なのもいい…

『BLACK LAGOON』「信用」と「信頼」の違いと、「頼」るロックの信念の話

メリークリスマス!! 閑話休題、先日発売された『BLACK LAGOON』13巻。前巻から2年以上空いていますが、それ以前がよっぽど空いていたので、むしろ早いと思ってしまいますね。不思議不思議。ブラック・ラグーン(13) (サンデーGXコミックス)作者:広江…

『好きな子がめがねを忘れた』自信がなくて変化が怖い二人と、「そのままのあなたでいい」と祝福する二人の話

アニメが始まり、最新刊である11巻も発売された『好きな子がめがねを忘れた』。好きな子がめがねを忘れた 11巻特装版 アンソロジー小冊子付き (デジタル版SEコミックスプレミアム)作者:藤近小梅スクウェア・エニックスAmazon 前巻にて晴れて両想いになった…

『正しくない先輩』の正しくない物語で描かれる平熱の正しくなさの話

ジャンプ+にて7/17付で配信された読み切り作品、『正しくない先輩』。攻めた読み切りを数多く配信しているジャンプ+ですが、本作の攻めっぷりはかなりのもの。なにが攻めてるって、まさにその「正しくなさ」。 shonenjumpplus.com 「先輩」が大学を卒業して…

『君と宇宙を歩くために』違くて同じ人間の、違うけど同じ感情の話

今回も、『君と宇宙を歩くために』のお話。 comic-days.com 主人公の一人である宇野は、作中で明言はされていないものの、自閉スペクトラムと思われる、「ちょっと人と違うところ」のある高校生男子。「記憶することが得意」だけど、「沢山のことを同時に行…

『君と宇宙を歩くために』『税金で買った本』宇宙の中で自分を繋ぎとめる、言葉という命綱の話

2023年8月号のアフタヌーンで掲載された、泥ノ田犬彦先生の『君と宇宙を歩くために』。 comic-days.com 高校生が宇宙を目指す的な『宇宙兄弟』みたいな作品かなと思ったらあにはからんや、「”普通”ができない正反対な2人の友情物語」という惹句にあるよ…

『さよならミュージアム』描かれる眼と描かれない目の意味の話

となりのヤングジャンプに掲載された読み切り作品、岩井トーキ先生の『さよならミュージアム』。 tonarinoyj.jp 美術部員の主人公・空木(うつぎ)は人付き合いが悪い。親とも部員とも顧問とも最低限の口しかきかず、ただ、自分がもっとも美しいと信じるもの…

『まどろみと生活以外のぜんぶ』rcaの描く、境界が融け合う安らぎと寂しさとエモさの話

今日は珍しく、というかこのブログで初めてだと思いますが、成年向け作品についてのお話ですので、あんまり生々しい話はしませんが、18歳未満のお子様は回れ右してね。

『違国日記』47.5話 無音の世界の秘密の話

先日新刊の発売されたヤマシタトモコ先生の『違国日記』。違国日記(10)【電子限定特典付】 (FEEL COMICS swing)作者:ヤマシタトモコ祥伝社Amazon 新刊を読んで一番印象に残ったのが、ストーリーではなく、47.5話冒頭の表現。えみりが喫茶店でノイズキ…

『ハクメイとミコチ』好きなモノを好きと言い、身にまとうことの嬉しさ楽しさの話

年に一度、毎年1月のお楽しみといえば、そう、『ハクメイとミコチ』の新刊発売。ハクメイとミコチ 11巻 (HARTA COMIX)作者:樫木 祐人KADOKAWAAmazon 巻を重ねるごとに、登場人物やエピソードも重なっていって、面白さも重層的になっていく本作。たとえば最…

『ぼっち・ざ・ろっく』下手な演奏を下手に演奏できるアニメの説得力の話

今更ながら、ABEMAで『ぼっち・ざ・ろっく』のアニメを見てます。 bocchi.rocks 現時点で9話まで鑑賞。原作を2巻まで読んでからのことなので、ストーリーはすべて承知なんですが、漫画とアニメの表現の違いから生じる印象を色々感じてます。 その中でも一…

『メダリスト』言葉を与えることによる動作の意識化と、世界の細分化の話

いまアフタヌーンで一番楽しみな作品こと『メダリスト』。メダリスト(7) (アフタヌーンコミックス)作者:つるまいかだ講談社Amazon 7巻では、司をケガさせてしまったことからくるイップスを乗り越え、4回転サルコウという唯一無二ともいえる武器を手に入…