俺マン2020の話

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
昨年はコロナ禍で引きこもるしかなく、本好きには絶好の積読崩しイヤーだったかもしれませんが、もともと引きこもり傾向のある私にはあまり関係なく、例年と大差ない読書量でした。今年もぼちぼち読んでいきたいと思います。
さて、なぜか恒例となっている新年早々に去年の総括。俺マンを軸に振り返ってみます。
俺ギュレーションとして、2020年に発表された作品から、もっともグッときた作品5本(順不同)。ただし、殿堂入りを+1本と、次点の作品群も挙げてみます。また、今年は(というか例年そうなのですが)、それ以前の年と被る作品がちらほらあるので、タイトル以外に言及するのは、俺マンに初エントリーの作品のみとします。
では、まずは俺マン2020に輝いた5作品。

・ワンダンス/珈琲

・水は海に向かって流れる/田島列島

・違国日記/ヤマシタトモコ

以上三作品は常連ですね。『水は海に向かって流れる』は完結ましたが、『ワンダンス』と『違国日記』は2021年も作品発表が想定されるので、おそらく次回は殿堂入りになるかと思います。

以下は新規の作品。
・葬送のフリーレン/山田鐘人・アベツカサ

こちらは既にブログで紹介していますが
魔王を倒しても世界は続く 自分と仲間を知りなおす旅『葬送のフリーレン』の話 - ポンコツ山田.com
『葬送のフリーレン』旅でフリーレンが知るもの、気づくものの話 - ポンコツ山田.com
その独特な空気は3巻になっても健在です。魔王を倒したパーティの一人である、主人公の長命なエルフ・フリーレンが、その冒険の中で見過ごしていたことを、かつての仲間の係累や、かつての冒険の足跡をたどりなおすことで、再発見していく、物語の後日談の物語。『このマンガがすごい!2021』オトコ編第2位にランクインしたのもうなずける、非常に完成度の高い作品です。
生物としての性質が異なる知的種族が混在する世界。その性質の違いとは、端的に言えば寿命であり、時の流れは誰にも平等で流れながら、その流れを受け止めるキャパは種族ことに違う。1000年の時すら生きるエルフと、100年で死ねば大往生の人間では、見えるものも感じるものも変わるのです。その性質の差ゆえに、すれ違ったり食い違ったり理解できなかったりする思い。エルフのフリーレンが他の種族の思いを理解するときには、その当人は既に死んでいることがほとんど。でも、フリーレン自身は生きているし、死んだ彼や彼女の係累も生きているかもしれない。気持ちの受け渡しは、必ずしもその当人の間だけで行われるものではなく、人を変えて世界に広がっていくものなのでしょう。
葬送のフリーレン 1. 第1話 冒険の終わり/第2話 僧侶の嘘


・ハコヅメ~交番女子の逆襲~/泰三子

こちらはブログでも未言及の作品。すでに15巻まで出ている作品なのに、恥ずかしながらちゃんと読んだのは今年の秋口という体たらく。これがめっぽう面白くて、なぜ今まで読んでいなかったのかと後悔することしきりでした。タイトルだけ見て、「被害者が折りたたんで箱の中に詰められている猟奇殺人事件を追う交番の女性警官のお話」というミステリーものと思い込んでいたせいで、食指が伸びなかったんですよね……よもや、元警察官の作者が描くコメディだったとは。
で、そのコメディのノリが非常に私好みでした。ボケに対してしれっとした感じのテンションでキャッチーな言い回しのツッコミを当て、さらにツッコミにもツッコミを重ねていくスタイルで、まずその切れ味が抜群。一歩間違えればくどい言い回しになってしまいそうなところを、会話劇を軽妙にさばいていきます。
また、そもそものシチュエーションが警察なので、非警察官である多くの人間にとってそのシチュエーション自体が異次元。まだ警察の常識に染まりきっていない主人公の新人女子警察官が、いわば読み手の目となり、すでにズブズブになっている先輩警察官たちが当たり前のものとしてふるまう常識に対して、(読み手からすると)まっとうな拒否反応を示し、いやその拒否反応こそおかしいのだ何を言っているんだお前はと先輩たちは主人公の常識を塗り替えようとする。そして、その一連の流れを、時に主人公の目を通して、時に物語の外にいる非警察官の目として見せることで、えらい破壊力の高いコメディが出来上がっているのです。
ずるいのは、コメディだけでなく、警察官としての職業倫理がキラリと光るような話もささっと挟んだり、伏線や布石をうまくつなげた長編も作り上げる、ストーリーテラーとしての手腕。コメディで終わる話かと思ったらそのコメディ部分を伏線としていい話のオチにしたり、いい話で落とすと思ったらもうひとひねりコメディで着地したり。いやホント、なんでもっと早く読んでこなかったのか。
ハコヅメ~交番女子の逆襲~ - 泰三子 / その1 アンボックス(ハコから逃げろ) | コミックDAYS


さて、以下は惜しくも次点組。
・よふかしのうた/コトヤマ

異世界おじさん/殆ど死んでる

異世界おじさん 5 (MFC)

異世界おじさん 5 (MFC)

こちらは以前にも登場済みですね。

・味噌汁でカンパイ!/笹乃さい

幼いころに母を亡くした中学二年生の善一郎と、そのお隣に住む幼馴染の八重。ある日、善一郎が毎朝簡単な朝食しかとっていないことを知った八重は、突如彼の家に押しかけ、朝食を作ってあげることに。そこには、善一郎の母が死んだときに八重が彼とした約束があって……という、ハートフルなラブコメディ。中学生の幼馴染というもだもだする甘酸っぱさや、着物の描写にやたらと力を入れている作者や、味噌汁のうんちくなど、要所要所で私の心にフックした作品です。
この作品も、10巻が発売された段階で初めてまともに読んだのですが、そのきっかけは漫画アプリでの試し読みで、実はそれは『ハコヅメ』も同様。1巻か、せめて3話くらいまで読めると、販促に大きく寄与しますね。
味噌汁でカンパイ! 1. 1杯目 君の味噌汁が、食べたい?


・忍者と極道/近藤信輔

世の中の裏側で長年にわたり対立してきた忍者と極道が、異能とクスリでバッキンバキンのメッタメタでド派手な戦いを繰り広げていくバイオレンス漫画。そして、忍者方の主人公である忍者(しのは)と、極道方の主人公である極道(きわみ)は、裏では相手方の組織を壊滅させようと血道をあげているけれど、表の世界では、偶然知り合った同好の士(アニメ「プリンセス」シリーズのガチオタ)として、相手の正体も知らず親交を深めている。
よくあるといえばよくあるシチュエーションではあるのですが、荒唐無稽なバトル(殺戮)シーンと、謎のルビが乱舞するセリフ回しには、「よくある」などとは決して言わせぬ力があります。「そんな…お前が敵だったなんて……」というラストは見せつけられているかのように見通せるのですが、そこまでどういうルートをたどってたどり着くのか、まるで予想がつきません。いや、予想はできるけど想像はできない、という方が正しいかも。地図で道を見てもその道がどんな様子で実際通った時に何がいるかまではわからないのです。
忍者と極道 - 近藤信輔 / 第1話 忍者と極道 | コミックDAYS


鬼滅の刃/吾峠呼世晴

いまさら何を付け加えることがあろうかという超有名作。2020年は間違いなく本作が席捲した年でしたね。
最後まで、一息はいるところはあっても中だるむことはなく、全23巻を最後まで駆け抜けたという印象。最終戦で、キャラクターの生き死ににシビアなのがしびれます。

栄えある殿堂入りは『BLUE GIANT』シリーズです。

『SUPREME』が終わり、『EXPLORER』が始まりましたが、まさに大の言うように、まだまだ上に行きたいから新しいステージに移るための新章突入でした。『SUPREME』で燃え尽きてそこで終わりじゃなくて、また先の世界を切り拓く『EXPLORER』の物語。こんなん殿堂入りにするしかないです。
『BLUE GIANT SUPREME』辿り着いた極点とゼロからの探求の話 - ポンコツ山田.com
ということで、2020年の総括でした。
今年もまた面白い漫画に出会えますように。


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