ポンコツ山田.com

漫画の話です。

漫画

『2.5次元の誘惑』『モルモットの神絵師』作者と鑑賞者の間にある動的な営みの話

新刊にてまゆら復活編に一区切りがついた『2.5次元の誘惑』。2.5次元の誘惑 21 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:橋本悠集英社Amazon 区切りをつけつつ、新キャラを出しつつ、さらにガチホラー話も入れつつ。ガチでホラーにふっててとてもいいですね。もっと…

『アオアシ』セリフ内のカッコ書きによる、没入感の消失の話

新刊が出てやっぱり面白い『アオアシ』。ゲームの中で挫折と成長を重ねていく姿は見ていてワクワクしますね。昨日もつい既刊を読み返してしまい、寝不足気味です。アオアシ(37) (ビッグコミックス)作者:小林有吾小学館Amazon さて、面白い作品とはいえ、…

『きのう何食べた?』ケンジみたいになれたシロさんの17年の変化の話

最新刊の23巻で、まさかのシロさんとケンジの結婚式を挙行した『きのう何食べた?』。きのう何食べた?(23) (モーニングコミックス)作者:よしながふみ講談社Amazon 雑誌連載時に読んだときは、シロさんがぶちぎれるんじゃないかと本気で心配したのは以…

錦久家の日常はコミカルでカラフルでリズミカルで 『ザ・キンクス』の話

ザ・キンクス(2) (コミックDAYSコミックス)作者:榎本俊二講談社Amazon というわけで、榎本俊二先生の新作『ザ・キンクス』のレビューです。 小説家の隅夫、専業主婦の栗子、女子中学生の茂千(モチ)に、男子小学生の寸助。錦久家の四人家族が織りな…

『モルモットの神絵師』コミュニケーションの本質と、漫画を描くことと漫画の感想を書くことの意味の話

引き続き『モルモットの神絵師』を読んでのお話。 shonenjumpplus.com 本作の主人公・岡太朗は、インフルエンサーのチハルに監禁され、「人のため」の絵と「自分のため」の絵の2枚を描きあげた後、チハルが「『自分のため』に描いた絵の方が美しい」、「『…

『モルモットの神絵師』モルモット/人間を見る目と、「絵を描くこと」がつないだものの話

本日(令和6年9月12日)付でジャンプ+に掲載された、中山敦支先生の読み切り『モルモットの神絵師』。 shonenjumpplus.com これがたいそう面白かったのです。 物語は、世間で人気のあるものを徹底的にリサーチして、「いいね」を稼ぎ、フォロワーを稼ぎ…

好きなものを描け! そして食え! 芸術はパクパクだ!『馬刺しが食べたい』の話

テーマが「自分の好きなもの」だっただから他意なくそれを描いた。それだけのはずだった。なのになぜこんなことに。 梅野かえでが描いた馬刺しの絵は、見事最優秀賞に輝いた。その絵が校内に飾られたことで、彼女の馬刺し好きは学校中に広まってしまった。華…

『ヤンキー君と科学ごはん』「当たり前」に隠された理屈の面白さの話

現在「となりのヤングジャンプ」で連載中の『ヤンキー君と科学ごはん』。今まで特に触れてきてませんが、現在連載中で既刊5巻以内のおすすめ作品を問われたら、五指に入るくらいには好きなんですよね。ヤンキー君と科学ごはん 1 (ヤングジャンプコミックスD…

アニメ『ワンダンス』に期待する「見てて気持ちのいい」ダンスの話

アフタヌーンで連載中の『ワンダンス』がアニメ化という報が飛び込んできた今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。 wandance.asmik-ace.co.jp 本作は、自身の吃音もあってコミュニケーションに自信のなかったカボこと小谷花木が、高校に入学し、ストリート…

漫画のコマとアニメのカット 時間のブランクとそれを削ぎ落した『THE FIRST SLAM DUNK』の話

先日『THE FIRST SLAM DUNK』の記事(時間軸とシームレス 時間を操られた私たちが呑み込まれる『THE FIRST SLAM DUNK』の世界の話 - ポンコツ山田.com)を書いたときに、アニメのカットの時間の流れ方について色々考えましたが、それを漫画のコマと比してみ…

時間軸とシームレス 時間を操られた私たちが呑み込まれる『THE FIRST SLAM DUNK』の世界の話

2022年の公開から今になってようやくNetflixで視聴した『THE FIRST SLAM DUNK』。 なぜ今になって観たかと言えば、先月ブログで『逃げ上手の若君』のアニメと漫画での情報量と時間の話を書いたとき、その観点に絡めて2008年に私が書いた『SLAM DUNK…

●●●●●にある何か それを追って彼は 私は 『近畿地方のある場所について』の話

●●●●●。それは近畿地方のとある山を中心とした一体を指す地名です。そこにはいくつかの心霊スポットが存在しているが、どうやら調べてみると、未解決の行方不明事件や学生の集団ヒステリー事件、YouTuberの奇妙な放送事故、異常な子供の遊びなど、不可解な出…

『逃げ上手の若君』アニメでわかる、漫画にこめられた濃密な情報量の話

『逃げ上手の若君』のアニメが始まり、連載デビュー作から3作全てがアニメ化という偉業をあっさり成し遂げている松井優征先生、やっばいすね。逃げ上手の若君 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:松井優征集英社Amazon そのアニメを視聴したのですが、1話…

『だんドーン』「呪術師」吉田松陰と受け継がれる呪いの話

先週発売された2024年32号のモーニングに掲載された、泰三子先生の『だんドーン』の番外編、「番外長州編 松の下の若人たち」。長州にて松下村塾を開き、志士たちの師として明治維新に大きな影響を与えた吉田松陰と、その弟子の桂小五郎を主人公に描い…

『富めるひと』『遠い日の陽』ひとの抱えるやましさとそれを薄れさせる別の価値の話

以前も別の読み切りについて感想を書いた横谷加奈子先生の新作読み切り『富めるひと』。 comic-days.com 9歳のときに余命一週間と突如宣告された自分のため、3億円かかる手術の費用をどうにかして賄おうと貧しい両親が宝くじを買ったらまさかの10億円当…

『好きな子がめがねを忘れた』二人が贈り合った「祝福」の意味とそれが込められた大切なものの話

ついに最終巻が発売された『好きな子がめがねを忘れた』。好きな子がめがねを忘れた 12巻特装版 小冊子付き (デジタル版ガンガンコミックスJOKER)作者:藤近小梅スクウェア・エニックスAmazon 最後まで口から砂糖を詰め込まれるような甘さに、用法用量を守り…

愛を何度も書き直せ! 心情を読解した先にあるもの『超客観的基礎ラブロマンス概論』の話

ラブレターの書き方教えて。 高校で現代文を教える教師・通称タナセンのもとに、教え子の女子高生・海堀がやってきて、そう頼み込んだ。突飛な頼みごとに面食らい、面倒ごとはゴメンと即座に断るタナセンだが、若さゆえの粘り腰ですがる彼女に根負けして添削…

元神様で今は弁当売り 『邪神の弁当屋さん』の話

彼女の名はレイニー。元神の現弁当屋さん。30年前に彼女が原因で戦争が起きたことの罰にと、彼女は人間になってお弁当を売ることにしたのだ。今日も彼女はお弁当を作り、売る。愚かな人の営みを面白いと思いながら… https://yanmaga.jp/comics/%E9%82%AA%E7%…

『その着せ替え人形は恋をする』五条の二つの後悔と、現実になってしまった「手の届かないもの」の話

13巻での初コミケ、海夢のハニエルコスプレが大いに会場を沸かせた中、その衣装の制作者である五条は、一人浮かない顔をしていました。その着せ替え人形は恋をする 13巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)作者:福田晋一スクウェア・エニックスAmazon …

『その着せ替え人形は恋をする』一目惚れへの五条の挑戦と、今更気付いたものの話

13巻でコミケでのコスプレデビューを果たした海夢と五条。 いつもどおり、五条の作ってくれた最高の衣装を着て最高の気分をまとい、囲み撮影の終わらせ時もわからなくなるほどの驚異的な盛り上がりを見せた海夢とは裏腹に、その衣装を作り、第三者からも大…

人間よ、モテたければ生物学を学べ! 『あくまでクジャクの話です。』の話

男らしくないことがコンプレックスの高校教師・久慈は、まさに「男らしくないから」と恋人に振られたばかり。もののはずみでそれが生徒に広まってしまい、デブ・ガリ・オタの三拍子そろった男子生徒らから「恋愛弱者男子を救う会」の顧問になってくれないか…

『きのう何食べた?』シロさんの変化と幸せなサプライズの話

みなさん、今週号のモーニングの『きのう何食べた?』は読みましたか? 読みましたね?※CATION※ 『きのう何食べた?』の単行本未収録話のネタバレがあります。ご注意ください。きのう何食べた?(22) (モーニングコミックス)作者:よしながふみ講談…

『正反対の君と僕』身体感覚の言語化による強い共感の話

先日6巻の発売された『正反対の君と僕』。正反対な君と僕 6 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:阿賀沢紅茶集英社Amazon 1巻の帯に「真逆な2人の共感ラブコメディ」の惹句があるように、登場人物たちの心理描写、というよりは心理の言語化が巧みで、それが…

『葬送のフリーレン』雪山手ぶら一人旅で気づいた、アニメと漫画で違う想像の余地の話

面白いぞ『葬送のフリーレン』アニメ。「葬送のフリーレン」Blu-ray(Vol.1 初回生産限定版)種﨑敦美Amazon ケルティックなBGMがマッチしているのが意外で、20~30年前にちょっとケルトミュージックブームが起こったのを思い出しました。エンヤとか。 そ…

楽しさに満ち溢れたラクガキの時間 九井諒子『デイドリーム・アワー』の話

原作漫画が完結し、アニメもスタートした『ダンジョン飯』。 そして本日発売されたのが、九井諒子ラクガキ本『ディドリームアワー』。九井諒子ラクガキ本 デイドリーム・アワー (HARTA COMIX)作者:九井 諒子KADOKAWAAmazon 『ダンジョン飯』の筆慣らしや、キ…

『葬送のフリーレン』「ヒンメルはもういないじゃない」人類と魔族を分かつ死者への思いの話

正月の暇に飽かして『葬送のフリーレン』第1期を一気視しました。葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)作者:山田鐘人,アベツカサ小学館Amazon 特に日常パートは、原作のシンとした雰囲気を活かしている、いいアニメ化ですね。 ところで、放送以…

『2.5次元の誘惑』コスプレ衣装を作る動機の言語化とその意味の話

今年のアニメ化も決定している『2.5次元の誘惑』の最新刊。2.5次元の誘惑 19 (ジャンプコミックスDIGITAL)作者:橋本悠集英社Amazon 19巻で一番好きなコマはこれでした。 (p26) ひとり脚が上がりきってないマリ姉ェ…… アリアの脚だけ筋肉質なのもいい…

俺の俺マン2023の話

あけましておめでとうございます。毎年恒例、年の初めの去年の総括です。 すでに本家の俺マンは企画を休止しているようですが、毎年恒例ですのでそのまま続けていきます。 勝手に決めた俺ギュレーションは1,2023年中に発表された、もしくは単行本が出…

『BLACK LAGOON』「信用」と「信頼」の違いと、「頼」るロックの信念の話

メリークリスマス!! 閑話休題、先日発売された『BLACK LAGOON』13巻。前巻から2年以上空いていますが、それ以前がよっぽど空いていたので、むしろ早いと思ってしまいますね。不思議不思議。ブラック・ラグーン(13) (サンデーGXコミックス)作者:広江…

男児の写真から始まる「夢のような」読後感の物語 『遠い日の陽』の話

11月の頭と終わりで気温が10度も違いますね。あっという間に冬。 どうも、御無沙汰してました。 それはそれとして、今日はモーニングの読み切りで掲載されたこちらの作品の感想です。 comic-days.com 人生に空虚を感じている高校生が、フリマサイトでたまた…