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漫画の話です。

『2.5次元の誘惑』意識される/目を逸らされる過去の話

 13巻現在で、8名ものヒロインが登場している『2.5次元の誘惑』。

 リリサ。
 みかり。
 まゆら
 753。
 ののぴ。
 アリア。
 まりな。
 夜姫。
 ヒロインというか、ちゃんと内面の描かれた女性キャラクターというかですが、さてこの彼女らをとある基準でカテゴライズしてみると、ざっくり二つに分けられるんじゃないかと思ったので、ちょっと検討してみます。

 グループ1は、アリア、まりな。
 グループ2は、まゆら、753,ののぴ、夜姫。
 このカテゴライズだと例外になるのがリリサとみかり。

 さて、このカテゴライズが何を基準にされているかというと、彼女らの過去です。より具体的には、過去を拒否あるいは過去から目を逸らしているか、過去を後悔しているか、です。

 一人ひとり見ていきましょう。
 アリアは、両親が離婚した時、それを知らないままに父親にひどい言葉を投げつけてしまい、それが最後の言葉となっていたことを悔いていました。
 まりなは、母親の言葉に従い品行方正に生きてきたけれど、オタク趣味を誰にも言えないでいることに、これでいいのだろうかと悩むようになっていました。
 二人とも、自分の過去になした(なしてきた)行為について、ずっと引きずっているのです。

 もう一つのグループも見てみましょう。
 まずまゆらは、好きでやっていたはずの過激なコスプレを「恥ずかしくて世間に言えないようなこと」と思い、大学卒業と同時に辞め、以降封印してきました。
 753は、ただコスプレをすること自体が楽しかったはずなのに、有名になってそれでプロとしてそれで食べていくようになると、「幸せな時間をずっと続けるために」「夥しい苦労と葛藤と悪意と戦わなきゃいけな」くなって、「自分を守るために心を殺」し、かつてそうだった自分も含めて、コスプレをしている人間を憎むようになっていました。
 ののぴは、自分の話したい事しか話さない身勝手なトークを友人に否定されて以来、そんな失敗をした自分を直視できず目を逸らしたまま、やみくもに同じ趣味の友人を欲しがっていました。
 夜姫は、自分が否定された事実を受け止められず、自ら悪役としてふるまうことで、それ以上の傷を負うことを防ごうとしましたが、同時にコスプレが好きだと言う自分の心を遠ざけてきました。
 彼女らはみな、自分の過去を拒否した、あるいは目を逸らしてきました。

 過去の後悔と拒否。
 この違いは、過去の問題を解消したいと自覚的であるか否かです。前者の二人は、問題に自覚的であり、それをどうにかしようと自ら行動に移しました。アリアは父のかつての作品のコスプレをし、まりなは皆の前でコスプレを披露しましたね。
 後者の四人は、問題に無自覚、あるいは目を逸らしていたため、主体的にそれを解消しようとはしていませんでした。リリサや奥村との出会いによって問題をあぶりだされ、ある意味で偶発的に解消されたのです。
 
 まだ過去の問題らしい問題(後悔)が出てきていないリリサや、登場時点で奥村好き好きが行動の軸として存在していたみかりんは、このカテゴライズにはそぐわなくなります。例外の人数と片方のグループの人数が同じってのもダサい感じですが、まあまあ。

 あるキャラクターの過去について、そのキャラクター自身がどういう態度であるかという点で、作劇上の違いが考えられそうですが、ひとまず今日のところは備忘録的にこの辺で。



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