漫画

『鬼滅の刃』あけすけな言葉と物語の推進力の話

今更ながらに手を出した『鬼滅の刃』。 今月から買いだしたのですが、アニメ化によるフィーバーのあおりを受けて、5巻まで買ったところで品切れ。10月後半の入荷で8巻まで買ったもののまたすぐに品切れ。11月の再々入荷まで待たなければいけません。人気すご…

『BLUE GIANT SUPREME』大の揺るがなさとその意味の話

新刊が出る度にドキドキさせられる『BLUE GIANT SUPREME』。 相変わらず演奏シーンはカッコよく、演奏にしびれるお客さんの表情も秀逸。それがあるから、演奏を終えた後に健闘を称えあうメンバーの抱擁も、カタルシス溢れるものになります。個人的には、キメ…

『ワンダンス』ダンスの自由と動かされる感覚の話

三度あることは四度ある。『ワンダンス』のお話です。 今回は、ワンダの言うダンスの「自由」と、カボの感じたダンスの「動かされてい」る感覚の話。 ワンダはカボからダンスが好きな理由を聞かれ、その一つとして「なんか「自由になれる感じがする」と答え…

『ワンダンス』吃音とリズムとダンスの話

まだまだ書くよ、『ワンダンス』の話。今日はカボの吃音にスポットをあてた話。 本作の主人公カボこと小谷花木には吃音の症状があり、それが彼のコンプレックスとなっています。 吃音とは、簡単に言えばどもること。症状のパターンとして、 ・連発型:一つの…

『ワンダンス』世界を分割して乗るダンスの話

5月にして今年の俺マンに食い込むことがほぼ決定の『ワンダンス』。 レビューはこちら。 踊る彼女は自由に踊る『ワンダンス』の話 - ポンコツ山田.com 高校のダンス部を舞台にした漫画である本作では、ダンスのコツもそこかしこに出てくるのですが、その中で…

踊る彼女は自由に踊る『ワンダンス』の話

東京の流行が5年遅れて入ってくるような田舎の高校生活。吃音に悩む高校一年生・小谷花木(こたにかぼく)は、目立たず、周りに逆らわず、普通であることを自分に強いて人生を送ってきた。でも、そんな彼が出会ったのは、同級生の湾田光莉(わんだひかり)。…

気になる相手は一つ屋根の下の26歳OL でも彼女は……『水は海に向かって流れる』の話

熊沢直達は、遠方にある高校への進学を機に実家を出た。下宿先はおじさんの住む家。しかし、春雨の中、降りた先の駅で待っていたのは、おじさんではなく、榊と名乗る妙齢の女性だった。彼女とおじさんの関係を邪推し、自分がおじさんの家に住んでいいのかと…

文学の世界と世界の中心の女の子『児玉まりあ文学集成』の話

校舎の隅っこ、地学部の部室を乗っ取った文学部。そこにいるのは唯一の部員、児玉まりあ。まるで詩のような話し方をする児玉さん。彼女が言葉を紡げば、そこには文学が生まれる。文学部に入部するため、僕こと笛田君は部室まで毎日通う。彼女の入部テストは…

めがねを忘れてあの子が近い『好きな子がめがねを忘れた』の話

クラス替えで隣の席になった三重さんは、いつもぼうっとしている、めがねの女の子。いつもぼうっとしていて、口を開けば少しずれたことを言って、でも、そんな彼女のことが気になってしかたがない。そんなある日、三重さんはめがねを忘れて登校してきたので…

俺マン2018の話

今年も開催されている俺マン2018. oreman.jp 例年通り乗っかって、今年読んだ漫画のお薦めを挙げたいと思います。 企画自体のレギュレーションは「その年自分が面白いと思った作品」と至極緩いものですが、俺ギュレーションとして、「今年発売された作品5つ…

『Dr.STONE』と『人間の土地』科学と人間と責任についての話

「次にくるマンガ大賞2018」第2位に輝き、2019年7月からのアニメ化も決定している『Dr.STONE』。 ある日、世界中の人間(とツバメ)が何らかの理由により石化し、およそ3700年の時を越えて復活した主人公の石神千空。人為は自然に還り、野生が蔓延っている…

『映画大好きポンポさん』視線が円を描くキメシーンの話

2巻も最高だった『ポンポさん』。 とはいえやっぱり1巻も最の高。綺麗に完結した一冊の中に起承転結をぎゅっととじこめており、作中のポンポさんの嗜好通り、「シーンとセリフをしっかり取捨選択して 出来る限り簡潔に 作品を通して伝えたいメッセージを表…

『銀河の死なない子供たちへ』マッキの問いと、星になったπの話

下巻の発売からしばらく経ってしまいましたが、『銀河の死なない子供たちへ』の話。 上巻発売時のレビューはこちら。 yamada10-07.hateblo.jp 不老不死の二人の姉弟とその母が暮らす、他に人間のいない地球。三人だけの世界。永遠の生を健やかに享受するπと…

『へうげもの』価値の相対化と「清然」の話

最終巻が発売されてしばらく経ってしまった『へうげもの』。 衝撃的な古田織部の最期(?)に拙者の固き丹田も緩み候えば、何を書いていいものやらと思案していたのですが、全巻再読して、ようやくいくつかポイントが見えてきたので、それをまとめていこうと…

『HUNTER×HUNTER』「道草」の楽しさと、「会いたい」と「見つける事」の違いの話

前回書いたハンタについての記事で、ネテロの遺志とそれを受け継ぐパリストン、二人の共通点と相違点を考えました。 yamada10-07.hateblo.jp 今回の記事では、前回の最後に触れた、二人と同じく「楽しさ」を行動理念に据えているジンについてと、それを考え…

『HUNTER×HUNTER』ネテロの遺志とゲームを楽しむための土俵の話

先日発売された、『HUNTER×HUNTER』35巻。 この密度の作品が年に2冊刊行なら何も文句はないのですがそれはともかく、濃い内容のせいで既刊を読み返さなきゃ継承戦がどんなもんだかすっかり思いだせないでいたので、会長選挙編あたりから再読していたのです…

『ショート・ピース』監督の「想像の域を出」る魅力と、「本音」の肯定の話

前回の記事でレビューした『ショート・ピース』。 世界よ、この素晴らしき人間たちに喝采を 『ショート・ピース』の話 - ポンコツ山田.com そこでの置き土産で、人が根っこのところで抱えている感情の肯定と、主人公キヨハルの「映画が俺の、想像の域を出な…

世界よ、この素晴らしき人間たちに喝采を 『ショート・ピース』の話

地方でそこそこの人気を博しながらも、上に行けないでいるバンドのボーカル・月子は、後ろ盾をしてもらっているライブハウスの社長からもっと売れ専の曲を作れと言われ、くさっていた。新曲のPVを作ろうとするも、予算も無いので、地元の高校の映研が賞を…

『甘々と稲妻』微かに現れた現実と遡及する実在感の話

10巻の大台に乗り、小鳥の受験も佳境を迎えた『甘々と稲妻』の最新刊。 その47では、ついに小鳥が専門学校の受験へと向かうのですが、「普通にやれば受かるから」「もっと普通にやればいいよ」と、普通が連呼されるアドバイスと応援に、むしろ大きなプレッシ…

『アウトレイジ最終章』『銀河の死なない子供たちへ』死ぬことの恐怖の話

つい先日、友人に誘われて、『アウトレイジ 最終章』を観てきました。実のところ、1も2も観ていないでいきなり最終章から観るという非常に罰当たりな観方をしたのですが、これが案外楽しめました。事前にウィキペディアで1と2のあらすじを読んでおいても…

死を思う死なない永遠の日々『銀河の死なない子供たちへ』の話

π(パイ)とマッキの姉弟,それにお母さん。彼女たちは,地球に残った唯一の人間たち。でも,本当にそうかはわからない。ひとつに,もしかしたら地球のどこかにはまだ生きている人間がいるかも知れないから。もうひとつに,永遠に死なない存在を人間と呼んで…

夜の学校 二人だけの約束 ぬけるような夜空の下で『月曜日の友達』の話

水谷茜は月曜日が嫌いだ。まだ慣れない中学校に行かなければならないから。中学校に上がって塾や部活に行き始めた友人たちと遊べないから。気の合わない姉が帰ってくるから。 一週間が始まる度に気が塞ぐ。学校が終わっても、家に帰っても、落ち着かない。月…

映画、それは夢と希望と狂気の大釜 『映画大好きポンポさん』の話

ポンポさんは映画プロデューサー。伝説の名監督である祖父から、幼少時より映画の見方について手ほどきを受けていた彼女は,まだ少女と言ってもいい年頃ながら,何本もの大ヒット作を排出している若きシネアストなのです。 映画製作に奔走するポンポさんのか…

好奇心の先には「すこしふしぎ」『好奇心は女子高生を殺す』の話

女子高生。それは世界で一番好奇心旺盛な生き物。話しかけたい人がいれば臆せず話しかけ、見知らぬ建物があれば面白そうだからと行ってみて、しゃべれる動物が捨てられていれば事情を聞いて元の飼い主に文句を言い、世界のためなら宇宙彼方の星でも何のその…

嬉し恥ずかしカウントダウン『初情事まであと1時間』の話

ある者達は幼なじみ同士、ある者達は魔王との決戦直前の勇者と魔法使い、ある者達はフラれたばかりの先輩と彼女を慕う後輩。そんな彼や彼女が、初めての情事に臨むまでの直前1時間を切り取った、嬉し恥ずかしドキドキのオムニバス……初情事まであと1時間 1 (…

楽しい趣味はいつでも楽しい! 飛び込めサバゲ沼『サバゲっぱなし』の話

父の会社にコネで入社し、受付嬢として日々ぼんやりとすごしている木枯ニコは、刺激に飢えていた。毎日が退屈。毎日がつまらない。毎日同じことの繰り返し。何か面白いことはないかと夜の街をさまよい、ふと目について入ったのがBar FREIHEIT。壁一面に、酒…

漫画の修羅たちは血で血を洗う『狭い世界のアイデンティティー』の話

漫画家のタマゴ・神藤マホ。大手出版社である件社(くだんしゃ)で、年間賞佳作を受賞した彼女にはある目的があった。それは、かつて同社に持ち込みをした際、そのビルの上階から突き落とされ、串刺しになって死んだ兄の敵を取ること。彼女は誓う。暴の力で…

ヘドロ生命体が生み出す善と疎外と寂しさ『黒き淀みのヘドロさん』の話

お嬢様ひかりに仕える執事のジローは、彼女の横暴に振り回されてばかりでため息の毎日。彼の高校のクラスメートであるレーンはそれを見て、得意の黒魔術で、ヘドロを材料にしてお助け新兵器を爆誕させる。その名も、黒き淀みのクラウネッサことヘドロさん。…

『ど根性ガエルの娘』作品の外に実在する登場人物とそこから生まれる奇妙な面白さの話

1月20日の夜、にわかに私のtwitterのTLが騒がしくなりました。多くの人がある作品について語り、また感想のリツイートをしだしたのです。 その作品とは『ど根性ガエルの娘』。同日に第15話がアップされると、その内容に衝撃を受けた人が非常に多かったよ…

家と女と独りと幸せとさびしさと 『プリンセスメゾン』の話

家。それは人の集まる場所であり、明日への活力を養う場であり、人の夢を投影する箱であり、資産でもあり簡単に変えられるものでもあり、そしてなにより人が暮らす場所。 居酒屋チェーンで正社員として働く沼越幸は、暇を見つけてはショールームや不動産を回…