ポンコツ山田.com

漫画の話です。

推しへの愛はグッズに変えろ グッズ制作コメディ『推しをカタチにする仕事』の話

 推し。
 いつの頃からか私たちの生活に入り込んできたこの言葉。アニメ、漫画、ゲームといった二次元のキャラクター。アイドルやスポーツ選手といった三次元だけど遠くにいる人。果てはお店のスタッフや友人でといった身近な人まで、人は誰しも一人は「推し」を持っているのではないでしょうか。
 推しがいるだけで人生が豊かになる。推しがいれば嫌なことがあっても忘れられる。推しはまだガンには効かないがそのうち効くようになる。
 そう、人は無条件で愛するものがいると、それだけでQOLを爆上がりさせられるます。
 本作『推しをカタチにする仕事』は、アニメや漫画などのキャラグッズを企画する会社で、推しを愛しすぎるあまり理性のブレーキを取り払ってしまった奇人たちが、人類を愛で救うべく大暴走したあげくになんとかギリ常識の範疇に収まるグッズを作り上げる推し活応援コメディなのです。

 主人公は企画営業部で新入社員の津家若葉(つけわかば)と、その指導社員の度越大好(どこしだいき)。

(1巻 7p)
 この2コマを見れば先輩社員の度越がクレイジーな後輩の津家に苦労しているだろうなというのがわかりますが、もちろんグッズ製作会社に勤めている度越もまともであろうはずもありません。

(1巻 12p)
 お、やべえやつだな?

 まあ指導相手である津家がこの調子なんですから、やばい人間でないと相手もできないでしょう。

(1巻 10p)
 輪をかけてやべえやつだな。

 試し読みできる第1話はこの津家発案「鉄アクスタ」をいかにグッズ化するのかという話。正気か? もちろん正気じゃないんですが、津家にしろ度越にしろ万事この調子で推しへの愛がほとばしり、濁流となって理性を飲み込み、やべえアイデアをやべえと気づけず、気づけてもその代案がまた別方向でやべえことにまた気づけず、あらぬ方向へ突っ走ります。
 愛は盲目とは言いますが、向こう見ずに暴走したあげくのアイデアが内輪の外に受け入れられることはそうそうなく、社内のデザイン部や企画生産部などの他部署、キャラグッズの許可をくれる版権元、実際にそれを作る制作会社たちに正論という名の冷や水をぶっかけられるまでがワンセット。ああ、人は何かを愛しすぎるとここまで周りが見えなくなるのだなと、過剰なまでに教えてくれるのです。

 とはいっても、たまにその暴走アイデアが外で認められることがあるから始末に負えない。万に一つの成功体験が悲しきラブモンスターたちの心をむしばみ、今度はいけるか?と見え見えの崖に向かって今日もフルスロットルで突っ込んでいくのです。

 美少女チャンバラ用高速回転フィギュア。
 子供が泣き叫ぶレベルのキャラなりきりパーカー。
 15mアクスタ。
 サッカー漫画のキャラ生首ボール等々。

 これが......愛…………?
 彼らはアイデアの屍でできた山がいつか天に届くと信じているのでしょうか。
 と言いながらも実は、意外に作中でカタチになっているアイデアも多いのです。やべえのは会社もだったようだな。まあこんなやつらが勤めている会社だしな。
 
 こんな具合で、特級呪物レベルの推しキャラグッズを軸に、1ページの中にボケとツッコミがこれでもかとつめこまれて、ツッコミ自体にもまた別のツッコミがかぶせられてくるのものだから満足感がひどい、いやすごい。

(1巻 7p)

(1巻 10p)

(1巻 14p)
 ほらひどい。

 もちろんひどくてやべえのはこの二人だけじゃなく、強く言われるとすぐに流されるデザイン部の押切康(おしきりやすし)、どんなアイデアでもGOサインを出すけど巧みに責任から逃れる課長の花鳥取次(かちょうとりつぐ)、好きなお嬢様キャラになりきることで激務を乗り切る企画生産部の桐花絵令(きりかえれい)と、ほかにもやべえやつが目白押し。昭和の少年漫画レベルのネーミングセンス、ほっとしますよね。これぞ少年少女向けギャグ漫画。親御さんも安心してみせられますね。そうか?

 溢れねじ曲がった推しへの愛と、ボケとツッコミの怒濤の応酬が万人に開かれているかは正直自信がないですか、上のコマでクスリときてしまった方は是非下の第1話の試し読みを、そして単行本を。今なら2巻が出たばかりなのですぐに追いつけるぞ!
jumpsq.shueisha.co.jp

お気に召しましたらお願いいたします。励みになります。
一言コメントがある方も、こちらからお気軽にどうぞ。