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漫画の話です。

2011-01-01から1年間の記事一覧

羽海野チカの心理造形と初期短編集『スピカ』の話

スピカ 〜羽海野チカ初期短編集〜 (花とゆめCOMICSスペシャル)作者: 羽海野チカ出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2011/07/20メディア: コミック購入: 20人 クリック: 730回この商品を含むブログ (111件) を見る羽海野チカ先生の初期短編集『スピカ』のレビュ…

『鉄風』夏央の感じる劣等感と嫉妬と充実の話

「私は充実している人間を―許さない」の刺激的フレーズでおなじみの『鉄風』。そのフレーズを発した張本人である主人公・石堂夏央が何度となく口にする言葉。劣等感、嫉妬、そして充実。複雑そうでシンプルそうで、なにはともあれ根が深そうな彼女の心理を、…

夢の無い少年が流れ着いたのは、未知の世界の農業高校 『銀の匙』の話

中高一貫の進学校の中等部から、突然農業高校に進学した八軒勇吾。中学の担任に勧められるままに進学した農業高校は、その学習内容、学校生活、生徒や教師の面々、規格外の広さ等々、進学校にいた八軒の想像を遥かに超えるものだった。この三年間で、彼は一…

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考察は勿論、文体が美しく読みやすいです。これからも楽しみにしてます! ありがとうございます!とても嬉しいお言葉です! 今後ともどうぞよろしくお願いします。

「私は充実している人間を―許さない!」燃える昏い情熱『鉄風』の話

高校生になったばかりのの石堂夏央は、努力しなくてもたいていの運動はできる。ためしに高校から始めてみたバレーボールも、スポーツ名門校にもかかわらず、入部して早々先輩を押しのけてレギュラーに。傍から見れば羨ましがられるようなその才能も、当人に…

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はじめまして。 最近theピーズやTOMOVSKYを知り、ライヴDVDに「実験4号」という曲があり、歌詞が気になったので検索したら、ここに辿り着きました。 伊坂さんの小説を読んでみたくなりました。ブルーハーツの頃からヒロトとマーシーのファンです。 はじめま…

『王様の仕立て屋』主人公不在でも回る、確立した作品世界とキャラクターの話

30巻の大台から更にもう一巻。『王様の仕立て屋』もここまで来ました。王様の仕立て屋 31 〜サルト・フィニート〜 (ジャンプコミックスデラックス)作者: 大河原遁出版社/メーカー: 集英社発売日: 2011/07/04メディア: コミック クリック: 48回この商品を含む…

『HUNTER×HUNTER』目のハイライトに見る、ゴンのゆるがぬ意志と他のキャラの迷いの話

待ってたぜ! ということで『HUNTER×HUNTER』の最新巻である28巻。単行本派の自分にとっては、あまりにも長い時だった。「感謝するぜ お前と出会えたこれまでの全てに!!」とかゴンさんとか、聞きたくなくても漏れ聞こえてしまうネタバレに耳を塞いできたが、…

『ぼくらのよあけ』奥行きのある空間と、子ども達の知った広い世界の話

先ごろ1巻の発売された『ぼくらのよあけ』。ちょっと先の未来、小学生達が自分たちの住んでいる団地を通じて宇宙と、そして人と繋がっていくSFジュブナイル。子ども的な近視眼さと、それの裏返しになる「楽しいこと」へとひた走る熱情を通して、自分のほんの…

言葉以外で与えられる、強さや「天才」の説得力の話

もう将棋漫画なんだかなんだかわからないところに行き着きそうなくせにどうにも面白い『ハチワンダイバー』。ハチワンダイバー 20 (ヤングジャンプコミックス)作者: 柴田ヨクサル出版社/メーカー: 集英社発売日: 2011/06/17メディア: コミック購入: 2人 クリ…

小学生は団地から宇宙を目指す 『ぼくらのよあけ』の話

2028年。携帯やネット、A.Iがぐっと身近になった時代。小学四年の沢渡悠真は、最近親が買ったオートボット*1のナナコがちょっと気に入らないものの、日々を活発に暮らす宇宙大好きの少年。今日も今日とて同じ団地に住んでいる幼馴染の岸真悟、田所銀之介の二…

漫画表現の中の、顔の見えない背中が語る内心の話

村田雄介先生の『ヘタッピマンガ研究所R』に、こんな言葉が出てきます。 一にも二にも目ですね 上辺の感情がどうあれ キャラの本心は目に反映させる様にしてます 絵で人物の内面を見せる方法は目の表現以外にない! と ここでは言い切っちゃいましょう 昔か…

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天才の師ということなら、やはり「シュガー」「RIN」に出てくる中尾重光が挙げられますね。 天才キャラとしての立ち具合が主人公の石川凛以上という傑物です。 「天才」に関しては『シュガー』を読めとよく言われていますので、なるべく早く、目を通したいで…

『昴』に見る、「天才」の人間関係の話 後編

後編です。前編はこちら。昴 (1) (ビッグコミックス)作者: 曽田正人出版社/メーカー: 小学館発売日: 2000/06メディア: コミック購入: 2人 クリック: 43回この商品を含むブログ (87件) を見る前編では、「天才」である主人公・すばるの《師》と呼べる人間をピ…

『昴』に見る、「天才」の人間関係の話 前編

ちょっと前にtwitter上で、三等兵(@santohei)さんと「天才」についての話をした時に、三等兵さんが「「天才を孤立から防ぐのは《友達》と《仲間》」」ということを仰っていて、その言葉からふと考えたのが、バレエ漫画『昴』の主人公・宮本すばるの人間関…

「苺ましまろ」に見るコマ送り技法によるシュールな笑いの話

以前、『よつばと!』についての記事で、漫画におけるコマ送り技法について書きました。 「よつばと!」に見るコマ送り技法のニュアンスの話 そこでは、「「地」を動かさずに特定のキャラだけを大きく動かす、いわゆる「コマ送り」の方法は、子どもであるよ…

「ヘタッピマンガ研究所R」から考えた「分析的知性」の話

ヘタッピマンガ研究所R (ジャンプコミックス)作者: 村田雄介出版社/メーカー: 集英社発売日: 2011/06/03メディア: コミック購入: 19人 クリック: 468回この商品を含むブログ (26件) を見る村田雄介先生の『ヘタッピマンガ研究所R』を買いました。あと、書店…

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化物語に興味があったころ小説から読むかアニメから見るか迷ったのですが、小説から読んで正解だったと思いました。アニメから見たら途中でやめてたかも・・・。やはりあれをアニメにするのは限界があるのですかね。感想は僕も同じです。短すぎる。薄く感じ…

「とめはねっ!」と「よつばと!」から考える読み手が感じる季節感の話

先日新刊が発売された『とめはねっ!』。とめはねっ! 鈴里高校書道部 8 (ヤングサンデーコミックス)作者: 河合克敏出版社/メーカー: 小学館発売日: 2011/05/30メディア: コミック購入: 5人 クリック: 182回この商品を含むブログ (59件) を見る縁が覚醒した「…

上達に必要な理想のイメージ/バイアス、あるいは主観の客体化の話

今日サックスの練習をしているときに、先日発見した携帯のICレコーダー機能を使ってみました。自分が吹いている音を録って聴いてみるのですが、もうこれがびっくりするくらい残酷に自分の下手さを知らしめてくれて、ひどく落ち込んだのですが、同時に自分の…

プロも所詮はカネ!凡庸なプロ野球選手の悲哀「グラゼニ」の話

高卒でプロ野球入りした凡田夏之介は今年で八年目。左腕のサイドスローというちょっと変わった投げ方が武器の中継ぎ投手。年俸は1800万。26歳の年収1800万は立派なものだけれど、プロ野球選手の寿命は短い。30を越えて成績が振るわなければ、引退もちらつき…

「NIGHTMARE MAKER」から考える、あいまいな記憶と現実の私の話

天才高校生・内田は、好きな子の夢を見るため、そして好きな子にいい夢を見せるため、望み通りの夢が見られる機械の発明に勤しんでいた。しかし、他のことについての夢ならいいのだが、どう改良を加えても、淫夢だけは途中で悪夢に変わってしまう。自分一人…

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「天才論」って、日本の物語のテーマの一つですよね。私も興味あります。・・・でも、海外のドラマには実は少ないかも。アマデウスくらい? 実はこれは日本人または日本のクリエイタに特有の願望なんでしょうかねえ? あまり海外の作品は知らないのですが、…

「謎の彼女X」と「ラブロマ」、謎の彼女にとっての謎の彼氏の話

最近コミックスを集め始めた、植芝理一先生の『謎の彼女X』。謎の彼女X(7) (アフタヌーンKC)作者: 植芝理一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/02/23メディア: コミック購入: 3人 クリック: 96回この商品を含むブログ (33件) を見るよだれを介して感情や肉…

「駆り立てるもの」が繋ぐ「天才」と「狂気」の話

当ブログでは天才に関する記事をいくつか書いていますが、そこにいただいたコメントでこんなものが。 (前略) 山田様は、しばしば結びつけて考察される、「天才」と「狂気」についてどうお考えになりますか。 以前の、「神様との約束」羽海野チカの天才観の…

「神戸在住」震災の中、一人一人が編み上げる「物語」と、それを編み上げた人間の話

東日本大震災より一ヶ月が経ちました。被災者の方に、心よりお見舞い申し上げます。 現在アフタヌーンで『からん』を連載している木村紺先生が、被災地応援漫画を寄稿しています。 講談社コミックプラス(pdf) 寄稿された漫画にも描かれている通り、木村先…

「へうげもの」に見る「箔」と「愛」の話 後編

前編はこちら 「へうげもの」に見る「箔」と「愛」の話 前編 さて、後編では改めて秀吉にスポットを当てていきます。 秀吉の立身出世を振り返れば、「百姓から渡りのもの」、「足軽から大名」「天下人」と、身分のピラミッドのほぼ最下層から頂まで一代で駆…

「へうげもの」に見る「箔」と「愛」の話 前編

※12巻のネタバレがあるよ。未読の人は注意してね。

充実した日常のための家事と、恋多きバイと 「放浪の家政婦さん」シリーズの話

放浪の家政婦さん (Feelコミックス)作者: 小池田マヤ出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2009/07/08メディア: コミック購入: 26人 クリック: 939回この商品を含むブログ (42件) を見るピリ辛の家政婦さん (Feelコミックス)作者: 小池田マヤ出版社/メーカー: 祥…

37歳無職と22歳フリーターのほっこり凸凹夫婦「そう言やのカナ」の話

そう言やのカナ(1) (Nichibun comics) [ 野村宗弘 ]ジャンル: 本・雑誌・コミック > コミック > その他ショップ: 楽天ブックス価格: 596円不況の最中にライン工をクビになった倉橋惣一(37)とフリーターの倉橋カナ(22)。なにをどうしたのか結婚した二…