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漫画の話です。

雑記

『銀の匙』内面を見てほしい八軒と御影の共通点の話

またぞろ『銀の匙』のお話。銀の匙 Silver Spoon 10 (少年サンデーコミックス)作者: 荒川弘出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/01/08メディア: コミックこの商品を含むブログ (54件) を見る最新刊の10巻で、豚肉ファンドで作ったウィンナーを学内の即売会…

『銀の匙』『G戦場ヘヴンズドア』に見る、夢を追う者と夢を失くした者の話

また『銀の匙』の話で恐縮ですが。銀の匙 Silver Spoon 10 (少年サンデーコミックス)作者: 荒川弘出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/01/08メディア: コミックこの商品を含むブログ (54件) を見る本作は、主人公の八軒が1巻から …なんだこの…… 「夢持って…

作品への感情移入についてのちょっとした話 その2

前の記事の続きというわけではないけれど、別の観点がいくつか出てきたので。 前回のまとめの一つに ・作品への感情移入とは,あるキャラクターの内心について,一定程度以上の描写がなされたときに,読み手がそれを内面化すること ということを書きましたが…

作品への感情移入についてのちょっとした話

先日のヤマシタトモコ先生のイベントレポートでもちょろっと書いたとおり、「作品を読むときの感情移入」ということについて考えたいと思います。 イベントでリブレの女性編集者の方が、「BLを読むときは、基本的にはメインとなる二人の男性の関係性に着眼…

『さんかく窓の外側は夜』先行読書会 ~今夜は生でヤマシタトモコ~ の話

ヤマシタトモコ先生の新作『さんかく窓の外側は夜』 が2月10日に発売されることを記念して、出版元のリブレ出版が、1月31日にこんなイベントを企画しました。 男子限定! 新作コミックス先行読書会 〜今夜は生でヤマシタトモコ〜 で、応募してみたら、…

『銀の匙』縦横につながる学問の話

銀の匙 Silver Spoon 10 (少年サンデーコミックス)作者: 荒川弘出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/01/08メディア: コミックこの商品を含むブログ (54件) を見る『銀の匙』については、以前こんなことを書きました。 『銀の匙』数学をわからせる複雑な日常…

『GIANT KILLING』『グラゼニ』に見る、プロ選手としての人間の姿の話

29巻の後半では読んでてフラストレーションが溜まる一方だった『GIANT KILLING』。でも、毎回その後にカタルシスがやってきているので、それを信頼して読んだ30巻。GIANT KILLING(30) (モーニング KC)作者: ツジトモ,綱本将也出版社/メーカー: 講談社発売日:…

市川春子の短編と、反復し変奏するミニマルミュージックの話

漫画や小説に合う音楽、ということを考えるのがわりと好きです。「言葉は音楽に恋している」とは、詩人・谷川俊太郎さんの言葉ですが、無時間的なメディアである漫画や小説が、時間的な芸術である音楽に強く惹きつけられるのは必然であるように私も思います…

『銀の匙』に見る、一歩向こうにある美味しさの表現の話

毎巻美味しそうな食事の描写で読者の胃袋を殺しにかかってくる『銀の匙』。銀の匙 Silver Spoon 10 (少年サンデーコミックス)作者: 荒川弘出版社/メーカー: 小学館発売日: 2014/01/08メディア: コミックこの商品を含むブログ (54件) を見る10巻ではウインナ…

『めめんと森』から考える、物語の過剰な解りやすさと読み手の楽しみの話

昨年発売された、ふみふみこ先生の『めめんと森』。めめんと森 (フィールコミックス) (Feelコミックス)作者: ふみふみこ出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/12/07メディア: コミックこの商品を含むブログ (9件) を見る決して嫌いではない、というか最近の…

『戦国妖狐』闇に「拝んで頼む」真介とその子孫の拝み屋の話

敵が敵らしくなり、懐かしのキャラクターも再登場してきた『戦国妖狐』12巻。戦国妖狐(12) (ブレイドコミックス) (BLADE COMICS)作者: 水上悟志出版社/メーカー: マッグガーデン発売日: 2013/12/10メディア: コミックこの商品を含むブログ (16件) を見るいよ…

『岸辺露伴は動かない』と理不尽なルールの話

『岸辺露伴は動かない』収録の『懺悔室』、本誌連載時に読んだ記憶があるので、十数年ぶりに読む短編というのは妙な感慨があります。岸辺露伴は動かない (ジャンプコミックス)作者: 荒木飛呂彦出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/11/19メディア: コミック…

今井哲也の描く生々しい汚濁の話

もう発売から一か月経ってしまいましたが、今井哲也先生の『アリスと蔵六』2巻。アリスと蔵六 (2) (リュウコミックス)作者: 今井哲也出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2013/09/13メディア: コミックこの商品を含むブログ (8件) を見る感動的な話はもとより…

『3月のライオン』「自分の大きさ」を知らない高城と知りつつある零の話

出ました『3月のライオン』9巻。3月のライオン 9 (ジェッツコミックス)作者: 羽海野チカ出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2013/09/27メディア: コミックこの商品を含むブログ (117件) を見る夏から翌春まで駆け足だったなーとか、ちゃんと高橋君の話にケリを…

ヤマシタトモコの描く「ままならぬもの」の話

先日『仮面の告白』を数年ぶりに再読しましてね。仮面の告白 (新潮文庫)作者: 三島由紀夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/06メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 190回この商品を含むブログ (208件) を見る同性愛者の苦悶と悲哀と喜愛と絶望とが端正な筆…

「泣ける」について再考すべき時はもうそこまで来ているのだという話

先日『アリスと蔵六』2巻を買ったんですよ。アリスと蔵六 (2) (リュウコミックス)作者: 今井哲也出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2013/09/13メディア: コミックこの商品を含むブログ (8件) を見るで、それについていた帯に「泣けるSFファンタジー最高傑作…

『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる人々の話 ひばり編

『ひばりの朝』の感想その4です。ひばりの朝 2 (Feelコミックス)作者: ヤマシタトモコ出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/07/08メディア: コミックこの商品を含むブログ (24件) を見るその1〜3はこちら。 『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる人々…

『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる人々の話 学校編

『ひばりの朝』の感想その3です。ひばりの朝 2 (Feelコミックス)作者: ヤマシタトモコ出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/07/08メディア: コミックこの商品を含むブログ (24件) を見るその1・その2はこちら。 『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる…

『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる人々の話 成年男子編

ヤマシタトモコ先生『ひばりの朝』についての感想文その2。ひばりの朝 2 (Feelコミックス)作者: ヤマシタトモコ出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/07/08メディア: コミックこの商品を含むブログ (24件) を見るちなみにその1はこちら。 『ひばりの朝』ひば…

『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる人々の話 富子編

帯に「怪作」の惹句がある、ヤマシタトモコ先生『ひばりの朝』の完結巻。ひばりの朝 2 (Feelコミックス)作者: ヤマシタトモコ出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2013/07/08メディア: コミックこの商品を含むブログ (24件) を見るなにをもって怪作と呼べばいい…

『暗殺教室』と『ネウロ』に見る、「成長」についての主人公とラスボスの違いの話

『暗殺教室』の5巻が発売しましたね。茅野さんと倉橋さんがかわいいですね。暗殺教室 5 (ジャンプコミックス)作者: 松井優征出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/07/04メディア: コミックこの商品を含むブログ (43件) を見る暗殺対象は軽く月を半分ばかし消…

『アリスと蔵六』から考える、枠線を超えるフキダシの効能の話

さて今日は、前回、といっても半月ほど前の話になってしまいましたが、レビューした『アリスと蔵六』から、フキダシの使い方についてちょいと考えてみたいと思います。アリスと蔵六 1 (リュウコミックス)作者: 今井哲也出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 201…

『よつばと!』から考える一コマ内の会話のルールの話

現在日本の漫画のほとんどは、フキダシ内に文字を書くことでキャラクターの発言とし、会話を表しています。そこにはいくつかのルールがありますが、その中の一つに、「一コマ内の会話は一往復以内」というものがあります。A・B二人のキャラクターがいるとし…

『よつばと!』「第四の壁」を越え読み手を見つめる(気がする)よつばの話

実に16か月ぶりの新刊で、月刊と週刊を比べるのはナンセンスだけどそれって下手すりゃ『HUNTER×HUNTER』より待たされたんじゃ、などとかすかに思いつつも、いざ読めば面白くてしょうがないわけで、もう好きになったもん負けですよね。そんな『よつばと!』。…

『宇宙兄弟』六太の感じた「責任」と「運命」と「絶対」の話

どうも、およそ一か月ぶりですがしれっとした顔で更新です。 ビンスことビンセント・ボールドのサブクルーになった六太。弟・日々人がNASAではもう宇宙に行けないという大事件もあり訓練に集中できず、あわやサブクルー降格かという事態にもなりかけましたが…

『宇宙兄弟』子供の成長が表す時間経過の話

今日は一日中友人の家で桃鉄をやってました。二歳四か月になろうとする友人の娘がちょこまか動くのをかまいながら、昼間からボンビーがキングボンビーになるかならないかで本気で一喜一憂したり土下座してでもボンビーのなすりつけ回避を懇願しようとしたり…

『バガボンド』『戦国妖狐』「笑う」者の強さの話

以前『バガボンド』と『戦国妖狐』を関連させて「自由」と「運命」について記事を書きましたが(『バガボンド』『戦国妖狐』決定された運命と自由の話の笑顔)、今日は同じく両作品から考える「笑顔」についてのお話。バガボンド(34) (モーニング KC)作者: …

『3月のライオン』言葉の呪と祝の話

現役最年長A級棋士と実年齢+10はありそうな胃痛持ちの棋匠戦。華はないけどそんなことは勝負の熱量と何も関係ないぜと言わんばかりの『3月のライオン』8巻でした。 言いたいこと考えたいことはいろいろあるけど、今日はその現役最年長A級棋士であるところの…

『HUNTER×HUNTER』キルアとイルミに見る、ゾルディック家の絆の(異常な)強さの話

!CAUTION! 『HUNTER×HUNTER』31巻のネタバレがあります。 『HUNTER×HUNTER』の新刊である31巻。30巻からたった8ヶ月で刊行されるなんてずいぶん早いんだなと思うあたりすっかり飼いならされてる感もありますが、まあそれはともかく。HUNTER X HUNTER31 (…

『バガボンド』『戦国妖狐』決定された運命と自由の話

去年くらいに「今年中に連載完結」というような言葉を目にしたような気がする『バガボンド』の最新刊が発売されてはや1か月。バガボンド(34) (モーニング KC)作者: 井上雄彦,吉川英治出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/10/23メディア: コミック購入: 1人 …