29巻の後半では読んでてフラストレーションが溜まる一方だった『GIANT KILLING』。でも、毎回その後にカタルシスがやってきているので、それを信頼して読んだ30巻。
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で、そのミニゲーム終了後に達海が言った言葉。
そうさ 有難いことに 俺には次に挑むべきもんが見つかってる
今度の仕事は足のコンディションもボールテクニックも関係無い 使うのは頭だからね
相手より劣ると思われるチームでも 監督の手腕によっちゃ勝利に導けたりするんだ
クビになりやすい職業NO.1とか言われたりもするけど それでもやり甲斐は相当あるよね
けどね
今ボール蹴ってみて 改めて思った
やっぱ楽しいよ プレーすんのは
これに勝る喜び 俺は未だに知らない
(30巻 p188〜190)
プロ選手として、大好きなサッカーをしながらお金をもらえる。プロとしてやらねばならない大変なこともたくさんあるけど(一日署長とか理容室のカットモデルとか)、それでも、プレーする喜びは何物にも代えられない。それが、自分自身の惨めな姿を晒してでも現役選手たちに伝えたかった、達海の心の声でした。
プレーするのが一番楽しい。
そんな発言は、同じくモーニングで同じくプロスポーツを描いている『グラゼニ』でも登場しました。
「なんだかんだ言って…… おれは辛く苦しいキャンプをもう二度とすることはないんだ 気楽気楽…… 多少の大変さなんて屁でもねーのよ
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(中略)
おれはアレ もう一生しなくていい 大変なことなんて何もない…… 「夢みたいな2月」――よ
――ま 嬉しくもあり……
さみしくもあり!
あんなにコレ から解放されたかったのにねェ……」
「おれ… 仕事とはいえキャンプ…… 毎日辛くて仕方ねーっス」
「なんだかんだ言ってユニホームを着てる人――がイチバン!」
(6巻 p176,77)
現役を引退したばかりのスター選手・北王子と、現役真っ只中の凡田の会話です。
現役のときにいくら辛く苦しくても、今から思い返せばそれがどれだけ幸せなことだったのか、と。
怪我や解雇通知など、望まぬ引退が何度も登場した『グラゼニ』の中で、珍しくまっとうに引退した北王子。そんな人間の言葉には重みがあります。
また、達海は現役復帰というブラフを吹く中で、こんなことも言っています。
さーてさて 何とかして追いつかねえと
こんなミニゲームでしけたプレーしてたら 代表なんて入れっこねえからな
(中略)
草サッカーじゃあるまいし 生半可な気持ちでピッチに立てっかよ
やるんだったらトコトンまで上を目指すよ 俺は
お前らは違うの?
(30巻 p141〜143)
やる以上はトコトンまで上を目指す。それがプロ。
そう言い切る達海の姿は、『グラゼニ』13巻の丸金とも重なります。
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「裏方さんたちにまた頑張ってもらうことは… 廻り廻って僕の成績が上がることに繋がるかもしれない……
僕の給料は“10倍”どころか“100倍”にもなる可能性がある 裏方さんたちに僕の給料で食事をしてもらって喜んでもらうことは「僕の喜び」でもあるんです」
「ひゃ…“100倍”ってことは……… 「5億」とか「6億」とかの世界……?」
「そこ を狙わずして“ナンのためのプロ野球選手”ですか……?
僕はまだまだ“上”に行く! もっともっと「プロ野球」で稼いでみせますよ!」
(13巻 p78,79)
「代表選手」と「金」。基準は違えど、どちらも最高クラスを目指すことに変わりません。
『グラゼニ』はそれが根本のテーマですが、プロ選手とてそれはあくまで職業の一つ。生きるための糧を稼ぐ一手段に過ぎません。けれど、そういう側面があるのが事実なら、人が主体的に選んだものである以上、その中で上を目指したい、という思いが生まれるのも事実。ただでさえプロスポーツ選手とは、全国のアマ選手にとっての羨望の的であり目標。そしてなにより、選ばれたものだけが立てる世界で活躍している人間たち。達海の言葉で言えば「キッズの憧れだけじゃない そこまで辿り着けなかった者… 志半ばで散ってった者… 代わりに夢を託してる者… お前らは そんなみんな憧れの」人間なのです。
こういうエピソードを見ると、『GIANT KILLING』や『グラゼニ』は、プロスポーツを描く作品であるのと同時に、プロスポーツ選手としての人間を描いている作品なんだよなと思わずにはいられません。
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