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漫画の話です。

『宇宙兄弟』子供の成長が表す時間経過の話

今日は一日中友人の家で桃鉄をやってました。二歳四か月になろうとする友人の娘がちょこまか動くのをかまいながら、昼間からボンビーがキングボンビーになるかならないかで本気で一喜一憂したり土下座してでもボンビーのなすりつけ回避を懇願しようとしたりさいころの出目の悪さに「グラサイ使ってんじゃねえよ!」とゲームに向かって悪態ついている大人たちを身近に見ていたらさぞ立派に育つだろうなと頭の片隅で思いつつ、それはそれとして彼女に会う度に実感するのは子供というものの成長の速さです。1か月も会わなければ、顔つきは変わるし、語彙は増えるし、動きは活発になるしで、時間の流れを否応なく意識するですよ。
で、そこからさらに連想がつながるのが、『宇宙兄弟』ですわ。

宇宙兄弟(19) (モーニング KC)

宇宙兄弟(19) (モーニング KC)

主人公の六太が会社を馘首になり、それを奇貨として子供の頃の夢を思い出し宇宙飛行士を目指したのが32歳の時。壮年期と言うべきか、中年一歩手前と言うべきか、そんな頃合いの男性が主人公なものですから、見た目や設定の面で時間経過の表現がけっこう難しいと思うんですよ、この作品。
たとえば主人公が若ければ、年単位の時間経過も見た目が変化(成長)することで読み手に伝わりやすいですし、学生であれば、見た目が変わらなくとも進級や進学で環境や人間関係が変わりますから、設定の面で時間経過を表せます。でも、いい大人が主人公だとそれがなかなか厄介なのです。ファンタジーでない現実的な社会を舞台にした作品であれば主人公はたいがい社会人でしょうが、社会人の環境や人間関係の変化は学生ほどに画然としていない。いや、もちろん新入社員や途中入社、定年や退職などで変化は起こるのですが、それが年を基準としないことがしばしばありますし、なにより見た目の変化の少なさは問題で、実際『宇宙兄弟』の主要キャラクターは、絵柄の変化による顔の違いはあっても、経年的な容姿の変化は見られません。19巻の最終話の時点で2029年、すなわち物語開始時点から4年後ですが、六太は六太のまま。試験やなんやで時間は経っているのですが、あまりそれを感じさせない。
でも、そんな『宇宙兄弟』の中で経年変化を一身に背負っているのが、ケンジの娘の風佳。初登場時はまだ二歳で、満足に指で「2」を表すこともできず言葉も覚束なかった彼女も、19巻では妹もできてすっかりお姉さん。親であるケンジも、

確かに…… 「かぺ」がきけないのはさみしいけど それよりさ
前よりずっと言葉を覚えて 話が通じるようになってきたんだ
「話し合える」――ってことの方が… 実はもっとうれしい
(15巻 #149)

と言っており、娘の成長を実感しています。
そう、4年という歳月は、一人の人間が「話し合える」ようになるに足るほどのもので、六太が自分の夢を再度追い出して、それだけの時間がたっているのです。
掲載誌がモーニングですから読者層もやや高めかと思います。それこそ、六太やケンジと同年代の人間も多いでしょう。自身に子供はいなくとも、友人や兄弟姉妹にはいるケースがままありますから(自分もそうですし)、身近なところで小さい子供を見ていると、漫画の中での子供の成長は設定面での変化以上に時間の経過をまざまざと感じるでしょう。というか自分は感じました。
歳をとると、こういう面でも作品の感じ方が変わるものですね。新年早々発見でした。



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