ポンコツ山田.com

漫画の話です。

2012-01-01から1年間の記事一覧

淫魔が向かった先はオカマさん『イヴ愛してる』の話

女悪魔のイヴは、上司の命令で人間界へ子づくりしに行くことに。でも、指定された男性・アキラはあろうことかオカマさん。女性を抱く気などつゆほどなし。無理矢理同居を始めたイヴは、あの手この手でアキラの性欲をかきたてようとするけど失敗ばかり。アキ…

服にまつわる苦悩と妄想と黒歴史と 『裸で外には出られない』の話

①住環境と仕事場の境目が無く②服装規定が一切なく③どうせ人にも会わないし疲れてるしもうええやん……となりがち、と服装堕落化三重苦に苦しむ漫画家・ヤマシタトモコ。著者の服に関する怠惰と欲望と妄想と苦悩が渦巻くのを目の当たりにすると、「ああ…女性っ…

それぞれの孤独を抱える男の娘たちが交錯する『ぼくらのへんたい』の話

まりかにパロウにユイ。とあるSNSで出会った三人の少女は、オフ会で初めて顔を合わせることに。入った喫茶店で、ぎこちないながらも徐々に会話が弾み始めたところで、不機嫌そうなユイの一言で場は凍る。 「お前らさあ なんで女装なんかしてんだよ」 そう、…

衰退した人類の寂しくも楽しい生活 『人類は衰退しました のんびりした報告』の話

人類がゆるやかに衰退しだしてはや数世紀。種としての役目を終えた人類に代わって地球の主役になったのが“妖精さん”たち。そんな世界で、“妖精さん”との信頼関係を築くことを職務とする調停官(閑職)の女性と彼らとののんびりした交遊録……人類は衰退しまし…

心の暗部を焙り出される人間たちの中心には一人の少女 『ひばりの朝』の話

手島日波里は14歳。歳の割に肉感的な身体とどこか浮世めいた雰囲気のせいで、異性からは性的な目で、同性からはうっすらとした悪意の目で、しばしば見られている。彼女は何か特別なことをするわけでもない。でも、彼女の周囲の人間は、何もしない彼女を見て…

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みかこさんのファンです。Google検索でみかこさんをキーワードにして辿り着きました。非常に的確なレビューですね。コミックナタリーなんかの記事とは比較になりません。このレビュー自体が作品のように思えます。 いい文を読ませていただきありがとうござい…

『へうげもの』歴史は繰り返す。同じ轍を踏む織部と利休の話

関ヶ原の戦いが終わった『へうげもの』15巻。へうげもの(15) (モーニング KC)作者: 山田芳裕出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/07/23メディア: コミック購入: 7人 クリック: 106回この商品を含むブログ (32件) を見る投石器で飛ばされる織部、ヤンキー小…

『GIANT KILLING』スタンドからのメッセージと俯瞰の視点の話

試合以外のシーンだと面白度が下がるんだけど試合以外の描写で選手やサポーターやチームスタッフなどが掘り下げられてるからそのおかげで試合が面白くなってるように思う『GIANT KILLING』のお話です。最新刊では、ETUのサポーターグループであるスカルズの…

『グラゼニ』テレビ中継のキーマン・解説者の難しさの話

始まりましたね、ロンドン五輪。基本的にテレビを見ない人間なんですけど、さすがに何もすることが無いとちょっと見てみようかな、という気になります。 スポーツのテレビ中継に必須のものと言えば、実況放送。上で書いたように、普段テレビを見ないもんです…

『銀の匙』数学をわからせる複雑な日常の経験の話

家畜の命について考え続けた夏編から、御影と駒場のブライべートな問題へ踏み込みそうな秋編へとバトンタッチの『銀の匙』4巻です。銀の匙 4―Silver Spoon (少年サンデーコミックス)作者: 荒川弘出版社/メーカー: 小学館発売日: 2012/07/18メディア: コミッ…

続・『空が灰色だから』心がざわつく理由の話

前々回の記事で、『空が灰色だから』の女の子たちに心がざわつく理由を書きましたが、そこからさらに思いつくことがあったので、それを膨らませて一席。空が灰色だから 2 (少年チャンピオン・コミックス)作者: 阿部共実出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 201…

いつか出会うかもしれない不安定な女たち 『女たちよ』の話

好きになった人を殺さずにはいられない女。空を飛べる女。何か我慢する事があると寝ている間にガラクタを生み出す女。あるいは、兼業主婦として充実した毎日を送っている女。義理の娘と毎年一回は旅行をすることにしている女。歌手として精力的に活動してい…

『空が灰色だから』心がざわつく理由の話

空が灰色だから 2 (少年チャンピオン・コミックス)作者: 阿部共実出版社/メーカー: 秋田書店発売日: 2012/07/06メディア: コミック購入: 12人 クリック: 232回この商品を含むブログ (41件) を見る2巻も好調にざわざわさせてくれる『空が灰色だから』(1巻の…

声に出すから届くものがある 『花もて語れ』の話

無口で引っ込み思案、人前でしゃべるのなんて大の苦手の佐倉ハナは、就職のために上京するも、出社初日から失敗ばかりで同期の輪にも入れず、一人公園のベンチでホームシックを噛み締めていた。するとどこからともかく聞こえてきた朗読の声。それは声だけで…

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「執拗さから生まれる無二の物語 『羣青』の話」 素晴らしいエントリでした。 『とにかく執拗な漫画でした』 本当にその通りだと思います。 レビューしづらい作品だったでしょうが これからも色々な漫画を取り上げて下さい。 私も、下巻の550円のくだりには…

『ウツボラ』の核心についての解釈の話

『ウツボラ』という名の作品を発表したある小説家と、一人の女性の顔のない自殺死体。そして、生前の彼女とうり二つの、彼女の双子の妹を名乗る女性。二人の生者と一人の死者が交わる時、此岸と彼岸の境目がうねりだす…… てな具合の、中村明日美子先生のサイ…

執拗さから生まれる『羣青』の息苦しさの話

昨日の続きで、『羣青』についてまた少々。読了前提の話なので、未読の方は回れ右が吉。買って読んでもう一度回れ右 が大吉。羣青 上 (IKKI COMIX)作者: 中村珍出版社/メーカー: 小学館発売日: 2010/02/25メディア: コミック購入: 8人 クリック: 94回この商…

執拗さから生まれる無二の物語 『羣青』の話

絶え間ない夫からの暴力に体中青痣だらけの「私」と、その「私」に一晩のセックスと引き換えに夫殺しを頼まれた「レズのバカ女」の「あーし」。 高校の頃から「私」をずっと想い続けていた「あーし」は、「私」に大好きと言われれば、ニコッと笑われれば、今…

ヤマシタトモコの描く、大人の心地よい友達づきあいの話

気がついたら既刊が全部そろってるヤマシタトモコ先生の作品群。サタニック・スイート (アフタヌーンKC)作者: ヤマシタトモコ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/03/23メディア: コミック購入: 4人 クリック: 26回この商品を含むブログ (25件) を見る多く…

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こちらのサイトを拝読してHUNTER×HUNTERを読み返すのを楽しみにさせていただいています。 このあたりのシーンはゴンもキルアも切なかったですね。 バトル漫画が主流のジャンプでは当たり前みたいな感じですが、十代やそこらの少年が命懸けで戦う事のむごさを…

新境地へ挑戦!でも根っこは変わらない水上先生の『宇宙大帝ギンガサンダーの冒険』の話

超ド級の怪物宇宙大帝ギンガサンダーにまつわる話3本と、「百鬼町」シリーズ1本、スペースコロニーの中でのSF1本、『惑星のさみだれ』の外伝。あとは『TRIGUN』のアンソロジーと、ブラコンアンソロジー『liquer』に収録された作品で構成された短編集。宇宙大…

『HUNTER×HUNTER』「それはどっちの?」の問いをめぐる、キルアの価値観と葛藤の話

『HUNTER×HUNTER』の蟻編で、初めて読んで以来ずっと意味が解らないでいたシーンがありました。それは26巻No.271「分断」で、ゴンとキルアがピトーのいる左塔に乗り込もうとする直前のものです。 「キルア ピトーは左塔あそこにいる 行こう」 <「行こう」 …

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私もこの作品「宇宙兄弟」を見て、感動しました。私の中でも「宇宙兄弟」が大賞です。感動は人それぞれ様々なものだと思いますが、本作は兄弟の心境がよく描かれており、実際に兄弟の居る私は共感できる部分が多く、それだけ感動できる要素があったように思…

『魔法少女プリティ☆ベル』から考える、正論から時折漂うアレなにおいの消し方の話

『王様の仕立て屋 サルトリア・ナポレターナ』1巻を買いに本屋へ行ったら、『魔法少女プリティ☆ベル』の7巻も売ってた。発売していたとは。王様の仕立て屋~サルトリア・ナポレターナ~ 1 (ヤングジャンプコミックス)作者: 大河原遁出版社/メーカー: 集英社発…

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ハンターハンターのキルアとゴンの記事読みました^^ キルアの成長とゴンとの関係が非常に分かりやすく、かつ深く書かれていたので「なるほど〜」となりました。 また書いてください^^ 『ハンタ』の記事はまた考えたいネタがあるので、近日中に書きたいと…

『ヨルムンガンド』「世界が好き」なヨナが拒絶し、選んだ「世界平和」の話

以前書いた『ヨルムンガンド』の記事でこんなコメントをいただきました。 初めまして。原作ヨルムンガルドについて触れていたので拝見させていただきました。 最終巻についてなのですがヨナのヨルムンガルド計画への反発と部隊離脱、そこから最終回での計画…

幸福を知らない少女が人間臭い妖怪達と出会ったら 『タケヲちゃん物怪録』の話

晴れてピカピカの女子高生になったタケヲちゃんこと稲生武夫は、高校生活と一緒に親元の広島を離れて東京で一人暮らし。でもそれは、親に迷惑をかけないように逃げたというもの。ある事情・・・・から世界で一番「不運」な女の子になってしまったタケヲちゃ…

『ヨルムンガンド』スケールの大きな物語を語る小さな視点の話

アニメ化と時を同じくして最終巻の発売された『ヨルムンガンド』。ヨルムンガンド 11 (サンデーGXコミックス)作者: 高橋慶太郎出版社/メーカー: 小学館発売日: 2012/04/19メディア: コミック購入: 5人 クリック: 312回この商品を含むブログ (47件) を見る最…

『GIANT KILLING』思考し続けるプレイヤーによる濃密な試合描写の話

川崎へのリベンジに燃えるETU。思い切りのいい若手の攻撃に幅も出てきた川崎に、ETUも攻撃的な布陣で挑む23巻です。GIANT KILLING(23) (モーニング KC)作者: ツジトモ,綱本将也出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/04/23メディア: コミック購入: 3人 クリッ…

『HUNTER×HUNTER』「王」と「母」と「唯一無二」の話

先日の『HUNTER×HUNTER』の記事(『HUNTER×HUNTER』メルエムとコムギと「母」の話)の中で、メルエムとコムギの関係においてお互いがお互いの「母」になる、ということを書きました。 つまりこの時、コムギはメルエムにとって愛溢れる母であり、同時にメルエ…