ポンコツ山田.com

漫画の話です。

2010-01-01から1年間の記事一覧

「宇宙兄弟」に見る、言葉に重みを与えるシチュエーションの話

前巻ではクール・冷血の権化と思われていたビンスが、南波兄弟やJ兄弟同様、(義)兄弟の約束を胸に宇宙を目指している熱いGUYだということがわかった11巻。相変わらず面白い『宇宙兄弟』ですが、今日はその魅力の一つである、警句と実際の体験・行為の結び…

伊坂幸太郎作品の「悪」とトラブル解決と罪刑法定主義の話

※この記事には、『マリアビートル』その他伊坂幸太郎作品のネタバレがあります。未読の方は重々ご注意ください。マリアビートル作者: 伊坂幸太郎出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/09/23メディア: 単行本購入: 11人 クリッ…

シレッとした笑いが光る「オカルト学院」の話

たまにはアニメに関連した話を。 今期視聴しているアニメは「世紀末オカルト学院」のみなのですが、これが相当私好みなのですな。世紀末 オカルト学院 1 【完全生産限定版】 [Blu-ray]出版社/メーカー: アニプレックス発売日: 2010/09/22メディア: Blu-ray …

おしらせ 帰ってきたMと山田のポンコツラジオ

9/11(土)pm8:00より、友人と共にwebラジオを行う予定です。たぶん二時間くらい。webラジオは、実は五年ほど前に数回やったことがあるのですが、何の因果か復活することと相成りました。 漫画やアニメとかの話をしたりしなかったり、本や音楽の話をしたり…

「へうげもの」天下人秀吉の「非情」とは違う「努力」の話

へうげもの(11) (モーニング KC)作者: 山田芳裕出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/23メディア: コミック購入: 12人 クリック: 118回この商品を含むブログ (60件) を見る戦国時代を生きる数寄大名・古田織部を主役に据えた「へうげもの」。彼が目指すと…

20代のささやかな夢がここにある 大人のだべり場「煩悩寺」の話

長年付き合っていた彼氏に振られた小沢は、憂さを晴らすべく浴びるように酒を飲んでいたのだが、帰り道、湧きあがる尿意に抗しきることができず、マンションの自室に辿り着く前に、3F下にある見知らぬ他人の部屋のドアを叩きトイレを借りた。堤防決壊の危機…

「おお振り」かきたてられる食欲とキャラクターへの感情移入の話

しばらく前に友人の家で全巻一気読みした『おおきく振りかぶって』を、改めて自分で買いました。やっぱ面白いですね、この作品。 この作品の魅力については、「試合中の選手の緻密な心理描写」「ご都合主義のないリアルな展開」などが各所で言われますが、そ…

そもそも「オタク」と「ライトオタク」って質的に別物じゃねという話

ちょっと昨日の記事についての補足をば。 「真に個人的な言葉」を吐くオタクと交話的価値としてのライトオタクの話 - ポンコツ山田.com 一応記事中では元ネタの「痛いニュース」に則りオタク/ライトオタクと分けましたが、私はそもそもライトオタクって言葉…

「真に個人的な言葉」を吐くオタクと交話的価値としてのライトオタクの話

オタクは本当に「ライト化」しているのか?−痛いニュース そもそも「オタク」とはなにか、ってのは「萌え」とならんでずっと考えているんですが、記事の中でこんな話が。 856 : バイヤー(神奈川県):2010/08/21(土) 23:19:23.02 id:OIjHJXnX0 どのへんでニ…

数学できる子/できない子の違いの話 あるいは凡才のための義務教育の話

中学くらいまでの数学がデキる子っていうのはたいてい、理屈はわからなくてもやるべき作業が適切にできる子のことで、俺は別にそれでいいと思う。 逆にデキない子は、なんでこの作業をするとこういう答えが出てくるのか、ある答えを導き出すためになぜこの作…

拍手レス

はじめまして!クロロとゴンのシーンについての解釈、本当にその読み取り方の深さに感服しました……!そんなキャラ個人の掘り下げを表現したかったなんて微塵も思いませんでした。ぐうの音も出ないくらい、ご意見の全てに納得、感動しちゃって、とても清々し…

「嵐の伝説」と笑いのレシピの話

おわ。前回の更新から三週間近くあいてしまった。 まあそれはともかく。 今日は、別冊少年マガジンで連載中、今月第一巻が発売された『嵐の伝説』のレビューです。嵐の伝説(1) (講談社コミックス)作者: 佐藤将出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/08/17メデ…

男は30越えたら自転車 ロードに乗りたくなる「のりりん」の話

のりりん(1) (イブニングKC)作者: 鬼頭莫宏出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07/23メディア: コミック購入: 22人 クリック: 529回この商品を含むブログ (75件) を見る「チャリなんて死んでも乗らねーから」 「チャリ乗ってるヤツは死ねばいいんだ」 自転…

『少女ファイト』「お姫様」になれなかった「王子様」の話

今日(日付的には昨日か)は講談社の青年誌コミックスの発売日。戦利品を一通り読み終えて、今とってもいい気分です。 そんな気分で書くのは『少女ファイト』について。少女ファイト(7)特装版作者: 日本橋ヨヲコ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2010/07メデ…

拍手レス

こんばんはー。山田さんには珍しくちょっと毒吐いてますね。 その「サシ飲みで語ろう」女子を目の当たりにしてないので推測でモノを言いますが、その女子達、もしかしたら自分の敵と味方を振り分けてたんじゃないですかね。性向はもちろん、一対一で飲む時の…

「王様の仕立て屋」から考える「伝統」の話

王様の仕立て屋 27―サルト・フィニート (ジャンプコミックスデラックス)作者: 大河原遁出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/07/02メディア: コミック クリック: 24回この商品を含むブログ (16件) を見る今月頭に27巻が発売した『王様の仕立て屋』。遁先生の…

「語る」と「騙る」って同じことなんじゃねーのという話

大学のサークルでは、特に女子の間で「サシ飲みで語る」ことが流行っていた。仲良くなるための儀式みたいなもんだ。その行為そのものはともかく、その行為に「語る」という言葉をつけるのが大嫌いだった。「普段は隠している私の気持ち、あなたにだけ明かし…

恋愛漫画にしてミステリー『ラ・プティット・ファデット』と、原案『愛の妖精』の話

しかくの先生の『ラ・プティット・ファデット』が面白かったので、原案の小説『愛の妖精』(ジョルジュ・サンド)も読んでみました。漫画版のレビューをしつつ、両者の違いなんかを書いてみたいと思います。以下、漫画版を『ファデット』、小説版を『愛の妖…

「動的平衡」と「生命」と「国家」の話

「生物と無生物の間に」(福岡伸一)を読んで、人間の身体を構成する細胞は、その原子がわずか三日で全て入れ替わるということを知った。新陳代謝によって細胞は日々生まれ変わり、三日前の自分と今の自分では、それを構成する原子は別ものなのだそうだ。そ…

見えないから、隠されているから燃え上がる人間の欲望の話

前々回のコメント欄でもちょろっと書いたのだけど、ギャップ萌えというやつと知性の駆動というやつは、同根のもののように思える。 ギャップ萌えは、ヤンキーが降りしきる雨の下道端の子猫に傘を差し出しているところを見たり、おしとやかなおぜう様が空手の…

「高杉さん家のおべんとう」に見る、服の描き方による絵の「性的」さの話

高杉さん家のおべんとう 2 (MFコミックス)作者: 柳原望出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2010/06/23メディア: コミック購入: 21人 クリック: 310回この商品を含むブログ (86件) を見る人生そろそろ崖っぷちな、三十路のオーバードクター(≒フリ…

拍手レス

人間のキャラクターにまでは考えが及びませんでした。 確かに、あいつは〜だという印象がキャラクター化できれば最強ですね。 「あいつは〜だ」というようにキャラとして語った時って、その人自身について語っている気がまるでしませんからね。もう観念的な…

剃毛する女性に興奮する友人の心的理路を考えてみる話

※今日は性にまつわる話をするよ。別にエロくはないけど、露骨な表現があったりするので、嫌いな人は注意してね。

キャラという名の免罪符と、その成立過程の話

細かいところまで読んでくださる方ならお気づきかもしれないが、私は文章上では「キャラクター」と「キャラ」を使い分けている。 前者はある一人格(現実の人でも、物語内の存在でも、法人のような仮想的な人格でも)の総体、有人格的な存在の最小単位で、後…

拍手レス

がっつり読まれてますね。僕も楽しみにしてたマンガでした。ちゃんと評価を受けないともったいないというか、残念だなと思ってたので評価してるひとがいるんだ!と、嬉しくなりました。 とても大好きな作品でした。次の連載もとても楽しみで、より多くの人に…

「妖精」の少女は「自然」の世界でしか生きられない 『少女素数』の話

わりと今更ながら「少女素数」を読みました。発売当初からなんとなく気になっていたのですが、そのままなんとなく近寄らなかったのは、ただのキャッキャウフフ的な漫画なのかなと思っていたから。 で、偶々立ち寄った本屋で試し読みができたんですが、それを…

『HUNTER×HUNTER』空気を読まないシーンによる空気を読まないゴンと団長の表現の話

以前、こんな拍手コメントをいただきました。 (前略) ここから上とは関係ないのですが…… 12巻でゴンが団長に「なぜ 自分達と関わりのない人間を殺せるの?」と 質問する場面が妙に印象に残っています。 自分達が捕まってしまった、あの危機的状況でする質…

『ハックス!』「外」を知らない高校生と、知らなかろうと存在する「外」の話

スーパー『ハックス!』タイムはまだまだ続行中です。 今回は、高校というクローズドな社会の中の重層的・円環的な関係性と、それを取り囲んで存在する外部の話。 (アフタヌーンKC)" title="ハックス!(4) (アフタヌーンKC)">ハックス!(4) (アフタヌーンKC)作…

余は如何でブログを書きしかという話

まあそんな大上段に構える話でもないですけど。 私がブログを書く理由は、ざっくり言って二つ。 一つは本を読むなり何なりした時に感じたもやもやを、はっきりと形にするため。 面白い作品は色々ありますけど、「面白い」と一口に言ってもその中身は実に多種…

拍手レス

はじめまして。この漫画がすきすぎて読むとひたすらページをめくるだけになってしまいマトモにストーリーと人物同士の関係が把握できてませんでしたが、冷静なレビューをみてやっとわかりました。ハックス!に対する愛と敬意の記事を読まさせていただきあり…