まあそんな大上段に構える話でもないですけど。
私がブログを書く理由は、ざっくり言って二つ。
一つは本を読むなり何なりした時に感じたもやもやを、はっきりと形にするため。
面白い作品は色々ありますけど、「面白い」と一口に言ってもその中身は実に多種多様なわけで。適当に例を挙げれば、『ハックス!』も『HUNTER×HUNTER』も『惑星のさみだれ』も『苺ましまろ』も『宇宙兄弟』も、どれも面白いですが、全部を同じただの「面白い」で括ってしまうにはなんか抵抗がある。
自分はどこに「面白さ」を感じたのか。なんでそれを「面白く」感じたのか。他のものとの類似は?比較は?
そんなこんなを文章に起こして、考えて、形にして、自覚できるようにしてみようということです。
それをわざわざブログにして世界に発信しているのは、自分以外の誰かも見ている(かも)と思った方が、文章に緊張感が出るからですわな。いや、ダラダラしてるように見えてもあるんですよ、緊張感。今パン一ですけど。嘘ですけど。
まあそういう感じで、本という偏光フィルターを通して自分の中身を覗いているようなもんです。他のフィルターを使えば、また別の見方もできるんでしょうけどね。とりあえずこうしてブログに書き起こすには、本が特に性に合ってるみたいです、私には。
で、もう一つの理由。それは、なんかひっかかることがあって、それをはっきりさせるためにまた本を開くと、以前より明らかに作品の中へ深く踏み込んで読めるからです。
「とめはねっ!」3巻で、主人公の縁に書道の大家である三浦清風が臨書の効果についてこんなことを言ってます。
それでも臨書には大きな意味がある。
それは、“書く”ほうが、より“見られる”からじゃ。
ただ漫然と見るより、横に並べて実際に真似て書くほうが、はるかにたくさんの発見があるからじゃ。
“書くために見る”のではなく、“見るために書く”と言ってもいい。そちらのほうが大事なことなのじゃ。
(とめはねっ! 3巻 p88)とめはねっ! 3―鈴里高校書道部 (ヤングサンデーコミックス)
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これに倣って言えば、“読むために書く”ってな具合です。
ここ一ヶ月くらい、『ハンタ』と『ハックス!』について集中的に書いてますが、その度に、全部ではなくとも「なんかあそこらへんでこういうこと描いてあった気がするな」とページを繰り、考えをまとめるために何度となく読み返す。すると、キャラクターの表情の一々やちょっとした言葉遣い、何気なく読んでいたコマの間、他のシーンとの呼応がピンと来るのです。「ああ、なるほど。だから今このキャラクターはこんな顔をしていて、こんな心境になっているのだな」と。
実際、『ハンタ』26巻の「関係ないから」のシーン。台詞の引用をするために書き写していたら、知らず涙が出てましたよ。今まで何度も読んでいたはずなのに、そのとき初めてゴンとキルアの心理のより深いところまで想像できたようで。
感想でもレビューでも批評めいた記事でも何でもいいですけど、自分の感じたことを極力作品に即して表そうとすれば、何度も作品の中に踏み込まなければいけません。そういう読書は、ただ“読む”だけのいわば受動的な読書ではなく、作品の中に隠れている自分の感覚を渉猟するような、能動的な読書と言えるのかなと。
『ハチワンダイバー』の菅田の「ダイブ」も、違うようで意外と似てるかも。菅田は盤面に潜って投了図を読んできて、読者は作品に潜って自分の感覚にさざなみを立てたものを読んでくる。「ダイブ」し終わった菅田は「たまんないな この感じ」(3巻 p17)と言いましたが、ただ漫然と眺めるだけでは届かないところまで深く潜るのは、慥かに息が続かなければ非常に苦しいものですが、その分強烈な快楽を伴っています。え?脳に酸素が足りないんじゃないかって?ノンノン、これぞ読書の楽しみです。
てな話ですが、なにはともあれ、作品について何か書くのはお薦めです。普段のそれよりずっと深い読書ができる気がします。
ただ注意しなければいけないのは、自分の感覚にギリギリまで忠実になること。自分の感覚に誠実になることと言ってもいい。
何をどう感じたであるとか、なぜそう感じたであるとか、読んだ後でどういうことへ考えが繋がっていったとか、そういうことにできる限り真面目に向き合ってみる。そうすることで、作品のどこからそういうものが生まれてきたのかが読めると思うのです。
また、(本なら)ただ読むだけだと、意外に細かいところまで眼が行かなかったりしますし。漫画なんて、絵があって台詞があってストーリーがあって、気にするべきところが相当多いですから、普通に読んでればそれぞれをそれなりに読むくらいしかできませんものよ。
かといって、細部を根詰めて読もうと思ったって、細部も色々ある。キャラクターの造形なのか、動作なのか、背景なのか、小物なのか、漫符なのか。絵に関するものだけでもこれだけあります。台詞関係だって、文体、言い回し、語彙の系統、フォント、オノマトペ、フキダシなどなど。漫然とは、読めない。
なもんですからね、なんかテーマ(軸)を決めて読むってのはいいと思いますよ。
しかし、繰り返し鑑賞するのに漫画は非常にいい媒体だと思います。手軽で、自分の好きなペースで読めて、しかも安価。素晴らしすぎる。
ということで、今日買ったばかりの『少女素数』と『青空にとおく酒浸り』、『7人のシェイクスピア』を読む私なのです。
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