ポンコツ山田.com

漫画の話です。

2013年の総括の話

新年恒例、去年の総括です。

まずは去年一番ぐっときた作品。ヤマシタトモコ先生の『ひばりの朝』。

ひばりの朝 2 (Feelコミックス)

ひばりの朝 2 (Feelコミックス)

1巻の発売は去年でしたが、完結巻である2巻が今年の7月に出ました。ぐるぐるととぐろを巻いたまま深みへ沈んでいくような人間の心の描き方に感情をぶん回され、思わず4部作からなる考察記事を書いてしまいました。
『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる人々の話 富子編
『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる人々の話 成年男子編
『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる人々の話 学校編
『ひばりの朝』ひばりを通して浮かび上がる人々の話 ひばり編
この一連の記事を書けたことで、今年のブログの役割は半分くらい果たせてる気がする。
本当におすすめの作品なので、未読の方で、新年早々うすどんよりとした気持ちでもやもやしたものを抱えたい人はぜひ読んでください。気が引けるなら松が明けたくらいにでも。
レビューはこちら。
心の暗部を焙り出される人間たちの中心には一人の少女 『ひばりの朝』の話
あわせて、ヤマシタ先生の作品から匂い立つ「ままならぬもの」についての記事も。
ヤマシタトモコの描く「ままならぬもの」の話




続いては、今井哲也先生の新作。超能力ロリ少女が出会ったThe 頑固爺『アリスと蔵六』の話
レビューのほかに、今井先生の過去作品を絡めてこんな話も書いてます。
今井哲也の描く生々しい汚濁の話
アリスと蔵六』2巻の幼女束縛シーンは、失禁よりも、涙涎鼻水といった体液でぐしゃぐしゃに濡れた顔の方が、肉体的な生々しさを感じました。あと業も。
『アリスと蔵六』から考える、枠線を超えるフキダシの効能の話
フキダシによる種々の漫画表現はいくつも書いていますが、これもその一つ。養老孟司氏は「絵画と言葉の中間にあるのがマンガ」と言っていますが(『記憶がウソをつく!』(養老孟司×古館伊知郎)p204)、視覚と聴覚という本来別の感覚器官から受け取る情報を同時に表現し、また、無時間的な情報(視覚)と有時間的な情報(聴覚)を一つにまとめて表現しているのが、漫画という形態ですが、両者をつなぐ象徴とも言えるのがフキダシなわけです。それを用いた漫画表現というのは、掘れば掘るほど面白い。
参考までに、過去に書いたフキダシやセリフに関する記事をいくつか。
ヤマシタトモコに見る、越境・連結するフキダシによる読みやすさの話
三点リーダしかないフキダシにはどんな意味があるのかという話
木村紺のちょっと面白いフキダシの使い方の話
「WORKING!!」に見る、フキダシのない手書き台詞のニュアンス




漫画表現に関する記事としては、12巻が発売された『よつばと!』に絡めて2つほど。
よつばと! 12 (電撃コミックス)

よつばと! 12 (電撃コミックス)

『よつばと!』から考える一コマ内の会話のルールの話
『よつばと!』「第四の壁」を越え読み手を見つめる(気がする)よつばの話
以前、とある漫画家の方から「『よつばと!』は三点透視で描かれているシーンが多く、その労力を考えると、すごいを通り越して気持ち悪い」という話を伺ったことがあります。『よつばと!』をじっくり読むとそのカメラアングルにたしかにビビりますし、その集大成が12巻のあのラストシーンだと思えます。あのシーンの心臓のわしづかみっぷりは異常。
また『よつばと!』には、カメラアングルだけでなく、コマ割りにも独特なものがあります。コマ送りのように動作を細かくコマで割ることで、動作に濃密さを持たせているのです。
「よつばと!」に見るコマ送り技法のニュアンスの話
「よつばと!」コマ送り技法による読み手の時間操作の話
「よつばと!」63話に見る、贅沢にコマを使った濃密な時間の話
今年はちゃんと13巻出るかなあ。




また、今年は4月に施川ユウキ祭りが開催されましたね。ダラダラ不真面目文学談義『バーナード嬢曰く。』の話

あらゆる生物がいなくなった世界で出会った少女とフラミンゴ 『オンノジ』の話 無職男子のおいしくない日々のご飯 『鬱ごはん』の話
『オンノジ』を僅差で押さえて『ド嬢』が一番好きです。連載再開を心の底から寿ぎたい。




最後に、レビューした作品の中でも特にお薦めのものをダダッと。
ハクメイとミコチ 1巻 (ビームコミックス)

ハクメイとミコチ 1巻 (ビームコミックス)

人と動物たちの、森の中の日常『ハクメイとミコチ』の話
まかない君 (ジェッツコミックス)

まかない君 (ジェッツコミックス)

料理男子によるほっこり食卓『まかない君』の話 女子高生たちの、平凡で、だからこそ楽しい群像劇『シンプルノットローファー』の話
虹の娘 (Feelコミックス)

虹の娘 (Feelコミックス)

ギャグの中にもしっとりが 短編集『虹の娘』の話
ワカコ酒 1 (ゼノンコミックス)

ワカコ酒 1 (ゼノンコミックス)


女一人酒のおいしい幸せ『ワカコ酒』の話
さよならタマちゃん (イブニングKC)

さよならタマちゃん (イブニングKC)

闘病の中で見つめる自分と、他人と、人生と 『さよならタマちゃん』の話
甘々と稲妻(1) (アフタヌーンKC)

甘々と稲妻(1) (アフタヌーンKC)

できたての料理に幼女は満面の笑みを浮かべる 『甘々と稲妻』の話
こうして見ると、意外とほのぼのした感じの作品が多いなと思います。アクション活劇ちっくな作品も読んでいないわけではないのですが、その手の作品はなぜかレビューを書いていないようです。

去年は上半期最後から少々私事で忙しくなってしまい、更新がすっかり減ってしまいました。今年はそれにも慣れていくぶん落ち着くかなと思いますので、更新頻度を上げられたらと思ってます。目標は10記事/月。書く。たぶん書くと思う。書くんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。
では、今年もよろしくお願いいたします。



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