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漫画の話です。

今から追いつけ!5巻以内のおすすめ漫画5作品 in 2022の話

 年の瀬。今年もちょぼちょぼ漫画を読んできました。面白い漫画もあんまりピンとこない漫画もいろいろありましたが、今年読んだ漫画の内、2022年12月現在でまだ5巻以内で連載中のおすすめ漫画を5タイトル、紹介して今年のブログの書き納めにしようと思います。すでにブログで取り上げている作品もありますが、まあそこはあまり気にせず。

『正反対な君と僕』(阿賀沢紅茶)

 陽キャでウェーイなパリピ女子・鈴木と、寡黙で周囲と我関せずなメガネ男子・谷。正反対に見える二人が、その正反対さゆえに惹かれ合う青春ラブストーリー。
 傍から見れば陽キャでウェーイなパリピ女子だろうと、自分の性格や立ち位置や他からどう見えているかその他もろもろウダウダと考えている。
 傍から見れば寡黙で周囲と我関せずなメガネ男子だろうと、そんなパリピ女子から妙に積極的に話しかければ内心ドギマギするしひょっとしたら自分に気があるのかもなんて考えちゃうしでもそんなわけないかと自ら打ち消して自己嫌悪しちゃう。
 人は見かけによらないなんてありきたりな言葉じゃないけど、その人が何考えているかなんて見てるだけじゃわからないし、自分の気持ちは言葉にしなきゃ伝わらない。わかり合うには、通じ合うには気持ちを言葉にしなければいけない。そんなメッセージが伝わってきます。
 主人公の二人だけでなく、彼や彼女の周囲の人間もいろいろ考えているし、その考えが袋小路に陥ったとき、他の誰かに向けて言葉にすることで、意外な糸口をもらったりしている。そこらへんの感情の機微が、高校生らしい稚拙さと誠実な丁寧さの絶妙なブレンド言語化されていて、とても好きです。
 現在2巻まで発売中。
shonenjumpplus.com



『ルリドラゴン』(眞藤雅興)

 ある朝起きたら角が生えていた女子高生のルリ。あまりの現実感のなさに寝ぼけ眼で母親に角を見せるも、「まああんた半分人間じゃないしな」と衝撃の事実をあっさり伝えられる。人間とドラゴンのハーフとしてついに覚醒したルリの人生はどうなるのか……!?
 と思いきや、彼女が世界征服に乗り出すわけでなく、勇者が討伐に現れるわけでなく、なんだか困ったなあと思いながら高校生活を続けていく、ゆるりとした日常コメディです。
 角が生えただけならまだしも、くしゃみのついでに炎を吐き出し前の席の男子の頭を焦がすなんてのはそれなりに大事なんですが、クラスメートも先生も、意外にもそれを受け容れてくれたり、当然というべきか受け容れてくれない人もいたり。誰でもあるような高校生活の悩みが、誰にも起こらないような形で発露してしまったルリを、どこにでもいるような高校生のように描く。その塩梅が、かわいくて、ユーモラスで、つい何度となく手に取ってしまいます。
 現在1巻まで発売中。作者は体調不良で休載中とのことですので、一日も早い回復をお祈りします。
shonenjumpplus.com


女の園の星』(和山やま)

 とある女子高で教師をする星と、その同僚、生徒たちが繰り広げる、女の園のくだらないお話。というテイの、今一番キレッキレのギャグ漫画。コメディとかでなく、ギャグ。
 ギャグは照れや逃げを作らず本気でやらないと面白くないと常々思っているのですが、本作はそれを見事に体現しています。
 基本的に皆まじめ。まじめというか、本気。本気というか、作為がない。少なくともそう感じられる。
 誰かをあえて笑わせてやろうとわざとらしい何かをするのでなく、普通に授業をして、授業を受けて、普通にくだらないことをして、普通に驚いたり悲しんだりして、彼や彼女自身はなんてことない日常を送っているようにしか見えません。
 でも、学校という閉鎖的な空間で繰り広げられるそのなんてことない日常を、まったくの部外者が外から覗き見るとこんなに狂気に満ち満ちているものかと、おそれおののき爆笑してしまう、そんな漫画。
 真顔の狂気。真面目な顔した混沌。普通だからこそ恐ろしい。そしておかしい。
 その白眉の話は2巻の第10話。ある生徒による7ページにわたる狂人がごとき独白をどんな顔して受け止めていいやら戸惑いつつ読み、その狂気の意味がわかった瞬間になんだそりゃ!と膝から崩れ落ちて腹を抱えて笑う。作中のセリフを借りれば、マジで時空が歪んだような感覚。すげえよ。
 現在3巻まで発売中。
shodensha.tameshiyo.me


『隣のお姉さんが好き』

 中学2年生の佑と、彼が恋心を抱くお隣さんで高校2年生の心愛。映画が好きな彼女に近づくために、自分も映画が好きと偽って、毎週一緒に映画を観るようになった佑。でも、恋に恋する佑の視野は狭くて、自分に自信のない心愛の情緒は不安定で、二人のコミュニケーションはどうにもちぐはぐで。
 当初は二人のいびつさが、表面上では取り繕われつつも薄氷の下で不穏げに存在していたのが、2巻になって、佑が自分の視野の狭さに気づき、心愛が自分の不安定さに気づき、初めていびつさを自覚して、お互いがお互いをちゃんと見ることができたように思えます。
 薄氷を薄氷と知らずに歩くのは、主観的には安全安心なものですが、そこを薄氷と知っている者からすればとても不安になるもの。でも、そこが薄氷であると知り、その下にある危険さを知ることで、その上にいた者は初めてどうするべきか悩み、慎重に歩もうとできます。
 2巻の今がそういう状況。佑が、「好き」という一言で覆っていた自分の感情を少しずつより細かい言葉で腑分けしだし、それにあてられた心愛も彼の気持ちをまじめに考えようとしだす。いい……
 私もきれいなお隣のお姉さんに稚拙な恋愛感情を燃やしたい人生だった……
 現在2巻まで発売中。
mangacross.jp



『となりのフィギュア原型師』(丸井まお)

 フリーのフィギュア原型師である半藤は、担当からお遣いを頼まれたが、なんとその先は憧れの原型師である滝館おこめの工房だった。なしくずしにそこで一緒に働くことになった半藤。代表であるおこめを筆頭に、一癖も二癖もある同業の原型師たちとの労働は、楽しくもハチャメチャで……
 年末になって、kindle unlimitedに入っていたという理由で偶然読んだ1巻でたいそう気に入り、unlimitedになかった3,4巻を早々に紙で買った本作品。フィギュア原型師たちが登場するストーリー4コマなのですが、会話のテンポといい、キャラクターのかわいらしさといい、普段目にすることのない原型師の世界をのぞき見できる感じといい、とても楽しくかつ気楽に読める作品です。
 どう見ても子供の容姿と性格ながら一線級の原型師である工房代表のおこめ。コミュ障気味でおっぱい星人で筋トレマニアの半藤。恰幅の良い体型(婉曲表現)と幼女趣味(Yesロリータ、Noタッチ)と高度な社会性を持つ斉藤。気が小さいけどおしゃれでマッチョ趣味でグロ趣味の羽喰。
 なによりこの危険な奴らの会話のキレがよい。文脈に対しあさってのことを口にし、それに対して正論で返す、コンパクトにまとまったボケとツッコミ。その応答がキュートにデフォルメされてるキャラでやられているのが楽しいんです。
 あと、回を重ねるごとに性格が悪くなっていく羽喰のキャラがよい。髪型や体型の変更、見た目によらない振る舞いや人脈、他人の色恋に積極にくちばしを突っ込むおせっかいさ、悪辣な発言。作者もだいぶ便利にこのキャラクターで話を回してるなと感じますね。
 疲れた時に一話読んでけらけら笑って気持ちが少し落ち着く、そんな作品。
 現在4巻まで発売中。
manga-time.com


 ということで、今年一年お疲れさまでした。また来年も面白い作品に出会えますように。

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