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女子大生がひた走る電子工作色の青春『ハルロック』の話

小さい頃は、できるものならなんでもドライバーで分解して周りを困らせていた少女・向坂晴。分解魔だった彼女も、長じるにつれその性格は鳴りを潜めていたのだが、高校生になってふとしたきっかけで出会った電子工作のおかげで(せいで)、また違った方向に趣味が目覚める。花の青春をハンダ臭い電子工作で孤独に費やしているけれど、本人は楽しいので無問題。さあ今日は何を作ろうか……

ハルロック(1) (モーニング KC)

ハルロック(1) (モーニング KC)

ということで、西餅先生の新作『ハルロック』のレビューです。
電子工作にどっぷりはまり、かわりにいわゆる普通の女の子の楽しみを彼方へぶん投げ去った女子大生・向坂晴の、おかしくも楽しい日々。晴が電子工作に勤しんでは、周囲の人間に驚かれたり引かれたりまれに喜ばれたりしています。
人生の残り時間計測付き3分タイマー。
入院しているおばあちゃんの話し相手として作った音声センサーを組み込んだぬいぐるみ(ただし不良品)。
ツイッターでぼっち発言している人を探し出して各都市におけるその人口比を視覚化するLEDつき地図。
ネガティブなことを考えると自動的に口座から慈善団体へ寄付をする脳波測定装置。
・・・・・・おい、こいつらいったいなんの役に立つんだ。
という疑問は電子工作において禁句。つくって楽しければいいんじゃい!が電子工作の肝なのです。
ネットで探せばたいていのものは見つかり手に入る時代、あえて手作りするのは自己満足でしかありません。が、だからこそ楽しいんです。自己満足最高。
晴ちゃんも作ったそれを使ってどうこうというよりも

電化製品は安く手に入る時代だし 作る必要は別にない
ただ アイデアがほんとうに形になるあの瞬間・・・
ぼんやり過ごしていた日常の中で
それは突然輝き色づいて私の目に飛び込んできた
(1巻 p20)

なのです。目的のための行為ではなく、行為自体が目的。趣味っぽくてすごくいい。
趣味に走りすぎるばかりに母親の怒りを買ったり、同年代の友人がほとんどできなかったりということもあるのですが、それはそれ。大学で授業が終われば1人で秋葉原まで行きパーツ屋巡りかジャンク屋巡り。さもなければ家に直帰して電子工作。キャッキャウフフなキャンパスライフは陰さえない。
けれど、友達がいなくてもいいというのと必要ないというのは別物。パーツ屋でたまたまあった小学生と本気で友達になろうとするわ、電子工作へ社交辞令的に興味を見せたクラスメートに猛烈な勢いで解説を始めるわ。同好の士はやはりほしいのです。
晴ちゃん空回りかわいい。
また最近は、このテのあまり一般的ではない分野を題材に扱う作品だと、うんちく的なものがもりもり盛り込まれることが多い気がするのですが、本作については基本的にコメディ。使われている電子部品や、今どんな作業をしているかなどの説明はかなりざっくりで、門外漢に詳しく教えるつもりは特段ないようです。というより,そういう姿勢が一つのネタとして機能しているとも言えます。専門用語をまくしたてられて「あ、はい」ってなるちょっと間の抜けた感じ。あのおいてけぼり感はまさに空回りする晴ちゃんですわ。
電子工作をしてみたいと思いはしないけど、それとは無関係に面白い作品。いや褒め言葉としてね?


第一話がこちらから試し読みできます。
ハルロック/西餅-モアイ



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