数日前に書いたこの記事。
平野耕太の笑う主人公の話 - ポンコツ山田.com
コメントで、こんなのをいただきました。
HELLSINGで笑顔に触れるなら
血を吸って正真正銘の吸血鬼になってインテグラに再開した
セラスの天真爛漫な笑顔に触れて欲しいです
セラスは化物でありながらあんな笑顔で笑える
化物の範疇外の存在になったのだから
- 作者: 平野耕太
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2009/03/27
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(HELLSING 10巻 p171)
こんな爛漫な笑顔を浮かべたりもする。化物でありながら、このように笑える彼女はどのような存在であるのかといえば、主であるアーカードが何度か言っています。
だが それもいいのかもしれない
おまえみたく おっかなびっくり夕方を歩く奴がいても
(2巻 p13)
行くぞセラス
せいぜい薄暗がりをおっかなびっくりついてこい
(3巻 p80)
「夕方」「薄暗がり」。この言葉で思い出したのは、広江礼威先生『BLACK LAGOON』の主人公ロックです。
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「BLACK LAGOON」 「面白さ」を求めたロックは「夕闇」にいられたのかという話 - ポンコツ山田.com
日本編で故郷の日本に舞い戻ったロックは、敵対する羽目になった鷲峰組組長である雪緒からなじられました。
貴方はそうやって…ずっと夕闇に留まっているから!
だからッ、言えるんです!!
(BLACK LAGOON 5巻 p69)
自分では意識できていなかった自身の立ち位置を的確に抉りだしたこの言葉にショックを受けたロックも、日本編の最後には覚悟を持って受け入れられるようになります。
「――一つだけお聞きします。貴方はこれからも―― 宵闇の中に?」
「君のお陰だ。俺はそこで 、すべてを 見届ける。」
(同上 p173)
夕闇にいることを自覚したロックはどうなったか。
(BLACK LAGOON 9巻 p44)
(同上 p256)
以前には見られなかった、こんな笑顔を浮かべるようになりました。いやあ悪い笑顔だ。
けれどロックは、こういう笑顔しかできなくなったわけじゃない。ロベルタ復讐編でのロックは確かにあくどい笑顔でしたが、それは上のリンクの記事でも書いたように、光の側にいたガルシアらからは次第にロックが忌むべき側の者として映り、読み手はそれに同調させられたから。同調の度合いが少ない(あるいはロックの享楽的な側面が少ない)ロベルタ復讐編での序盤では、きちんと(?)人畜無害な、悪徳の街・ロアナプラには不似合いな笑顔を浮かべています。
(7巻 p90)
ロックが留まることを決意した「そこ」=「夕闇」。その決意は、日本刀を喉に突き刺して自死する雪緒を見ることでできた「傷」によって刻み込まれましたが、ロックが決意したことはそれだけではありません。彼は同時に、自分が享楽のために生きることも決意していました。バラライカに余計なことを言ったために銃を突き付けられ、死線の縁に足をかけたままの彼は言います。
貴女 は一つ勘違いをしてる。
義理じゃない。正義でもない。理由なんてたった一つだ。そいつは――俺の趣味 だ。
(5巻 p100)
ロアナプラの人間は、趣味では動きません。この街が繁栄を続けられたのは「過去から現在まで、この街に集う全ての者たちの思惑が……
では、ロックとは違う形ではありますが、セラスが己の行く道を決意をしたのは、吸血行為によってです。「血を飲んでしまったら
けれど、化物になったはずの彼女は、敵に回ったウォルターに対して場違いな別れの挨拶をする。主である化物・
あくどい笑顔と人畜無害な笑顔、キてる笑顔と爛漫な笑顔の両方を浮かべられることこそが、ロックとセラスが夕闇、薄暗がりにいる存在である証左だと思うのですな。
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