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漫画の話です。

オタク愛は拳で語らえ!腐女子JK除霊師『限界煩悩活劇オサム』の話

 ギャルJK・春山カイカは悩んでいた。自分のアパートに出る怨霊があまりにも荒ぶるため、なみいる除霊師たちが軒並みしっぽを巻いて逃げているからだ。藁をもすがる思いで見つけたのは、同じ学校に通うJK除霊師・乾オサムだった。しかし、彼女いわく、自分が除霊できるのは一部の特殊な霊だけだという。それでもカイカから状況を聞くうちに、どうやら自分が対処できる類の怨霊だと判断し、カイカのアパートへ向かうが、怨霊と対峙した瞬間オサムは、それから発された呪いの言葉に、血反吐を吐くほど精神を削られた。果たしてオサムは怨霊を祓うことができるのか……

 ということで、ゲタバ子先生の『限界煩悩活劇オサム』のレビューです。
 上記の1話あらすじだけ読めばホラーバトル物と思えるかもしれませんが、ところがどっこい、ホラーの皮をかぶった、否、まったくかぶりきれていないオタク(腐女子)オカルトコメディです。
 なにしろオサムが除霊できる一部の特殊な霊とは、腐女子が怨霊になったもの。オタク心を拗らせて現世に執着している腐女子怨霊を、自身もズブズブの腐女子であるオサムが、時にオタク愛を語り合い、時にカプ観の相違で拳をぶつけあい、時に協力して非オタを沼に引きずり込むことで怨霊の負の感情を浄化するという、パワフルでソウルフルなスタイルなのです。

(1巻 p35)
 これは除霊中のパワフルでソウルフルな笑顔。逆カプをさげすむあたり、主人公とは思えないばっちさですね。
 このように、オタクを拗らせた熱いぶつかり合いの除霊が面白さの一つで、基本的にオサムも怨霊と同じオタクであり同じ穴の狢、オタクゆえの肩身の狭さに心通じ合うこともあり、オタクゆえの絶対に譲れない価値観(カプ観)でバチボコに殴り合うこともあり、ドタバタと除霊に励むのですが、オサムも怨霊もどちらも根底にあるのはオタク愛。
 怨霊はその愛ゆえに現世に残り、オサムはその愛ゆえに、現世に残ってしまっている怨霊の話を聞かずにはいられない。だって彼女は除霊師だから。オタクを拗らせている怨霊の気持ちをわかってしまうから。彼女が聞かなければ、怨霊の相はもうどこにも届かないから。
 あれ…そう考えると実はいい話なのか……?

(1巻 p26)
 いい話っぽさを感じさせる1コマ。なお3p後にカプ観の相違で血反吐を吐きます。

 とまあ、拗らせたばっちいオタク心と、その根底に流れる作品への愛が、奇跡のようなマリアージュを見せ、9割のコメディと1割のちょっとだけいい話として奇跡の成立を見せています。
 ドタバタコメディとして漫画の作り方とても巧みで、会話やコマのテンポが良く、ぐいぐい読めてしまうんですよね。
 キャラの関係性としても、たとえばバチクソオタクのオサムと、オタクに優しい非実在ギャルのカイカという関係による、オタク愛にあふれた熱さとそういうのがよくわからない困惑による凸凹の緩急あるキャッチボールもあれば、バチクソオタクのオサムとバチクソオタクの怨霊という関係という、オタク愛同士の凸凸の火の玉ストレート投げ合いもあり、そこらへんの塩梅がいいんです。
 対立も対比も、きっちり関係性を作ることで、会話やアクションにメリハリがつくんだなと感じ入る次第。
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 こいつはいいコメディ。

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