高校生の初交際話の漫画だって面白く読めちゃうんだから、読む人間と作品の距離なんて大して関係ないってのが分かりますね(挨拶)。
ということで、現在ジャンプ+で連載中の、『正反対な君と僕』の話です。
(1巻 p8)
「正直、大好きです。」
そう。実は谷L♡VEの鈴木。
無理にでも話しかけちゃうのは、なんとか会話をしたいから。
ムチャぶりしかできないのは、自分が谷を好きだと気づかれるのが怖いから。ムチャぶりに谷が塩対応してくれている間は、自分が本気で谷を好きだと思われずに済むから。
他のクラスメートは谷のことをただの「「物静かな眼鏡の子」ぐらいにしか思ってない」けれど、鈴木から見える谷は、「自分の意見しっかり言うし 人によって態度変えたりしないし 無駄に人にあわせたりしない」人。そんな彼は、周りの目が気になっていつも空気を読んでしまう鈴木にとって、憧れの人なのです。
「谷くんに憧れているのに 私は 谷くんとは真逆の人間なのだ」
自分にないものを持っている人に憧れるのは世の常。同じく、自分にないものを持っている人に劣等感を抱くのは人の常。
憧憬と劣等はどちらもその対象から己を遠ざけてしまうものですが、じゃあその対象に恋心も抱いてしまったらどうしましょ、ということなわけです。
憧憬と劣等による斥力にプラスするところの、空気読みによる現状維持指向。恋心による引力でそこを突破するのは相当に大変ですが、偶然とふとした拍子とその場の勢いで突っ切るのは若さゆえの強さでしょうか。
(1巻 p40)
強いですね。
でも、勢い余っての告白は裏付けのない脆さの裏返し。ここから二人がしっかりした関係を深めていくには、勢いでは詰められない歩み寄り、手探りでの凸凹の埋め合いが必要になってきます。
第3話での、初デートで映画を観に行った鈴木と谷が、同じ映画について同じ「おもしろい」という感想を持ってもその実、二人が着眼していたところがまるで違った、というのはいいエピソードでした。かたや地名や人名などの言語野の記憶を軸にストーリーを記憶している谷と、かたやちょっとしたしぐさや振る舞いを軸にエピソードを印象付けている鈴木。二人の違いを端的に示しているし、そこでお互いがお互いの感じ方に感心しているのが、小さくて大事な歩み寄りって感じです。
告白して付き合いだすところからスタートする第1話。そこからお互いの良いところに気づいたり、嫌なところに気づいたり、同じ好きなものを知ったり、まったく違う嫌いなものを知ったり、いろいろあることでしょう。山あり谷あり、プラスもありマイナスもあり、そんな曲道をくねくね二人で進みながら
徐々にお互いのこと知っていって
「これが好き」て話した時に 「あ~好きそ~!」って言えるような…
わかってる人になりたいなって
(1巻 p155)
ってなれるような。
二人にはそんな未来をきちんと夢見ていてほしいなと思う作品です。
shonenjumpplus.com
一言コメントがある方も、こちらからお気軽にどうぞ。