普通の人達が普通に住んでいる日常。でも、一皮剥いたすぐそこに見知らぬ恐怖は転がっている。それはまるで、ラジオのチューニングが偶々あうかのように、唐突に現れる。そして、何か聞こえたと思った時にはもう遅く、ダイヤルの行き過ぎたラジオはノイズしか吐き出すだけ。垣間見えた不可思議なものに、あなたはただ茫然とするしかないのです……
- 作者: 中山昌亮
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/10/19
- メディア: コミック
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『不安の種』のレビューで私はその怖さ・面白さの理由に、一つのお話で起承転結の「承転」しか描かないことを挙げましたが、本作も同様に、一話あたり4pから22pというバラつきのある紙幅で話を構成しています。特に背景の説明されない登場人物たちが、特に背景の説明されない恐怖体験に晒され、そしてその後どうなったかの説明も無くふいと終わる。まるで、不意にチューニングのあったラジオから聞こえてきた脈絡のない話のように、唐突に読み手の目の前に現れては、そしてまた唐突に消えていく恐ろしい現象たち。
本作が『不安の種』と違うのは、各話に繋がりがあること。いや、あるルーツによって恐怖体験が連鎖していくと表現した方がいいでしょうか。もうちょっと正確に言えば、読み進めるうちに各話に繋がりがあるかのようなルーツが浮びあがってくる、ですかね。各話は時代や場所が一見ばらばら。けれど読んでいくにつれ、人や場所に通じているか細い糸が見えてくる。その糸とは「髪」もしくは「からみつく」。各話の登場人物たちは、それにまつわる怪現象に見舞われます。
そして、この糸は個別の現象が現れているのではなく、実は何か一貫したものに纏わる一連の現象ではないか。読んでいる内にそう勘付きます。初めは特に気にすることのなかった、サブタイトルになっている「○○.○○NHz」(○の中には数字)。これの順番を考えてみると……。
1巻では、糸の因縁が細かいところまで描かれないのですが、2巻以降でこの糸がどうなるかはわかりません。もっと遠くまで伸びていくのか、それともまた別の糸が絡み合ってくるのか、あるいはぶつっと切れるのか。それを読み通せないこの居心地の悪さこそ、中山先生のホラーの醍醐味であるなと思います。怪現象に理由なく見舞われるとか、見舞われた後に結局どうなったかわからないまま終わるとか、とにかく中山先生のホラーは読んでて居心地が悪い。そして、それがいい。一話あたりが短いからさくっと区切って読み止しできそうなのに、読む者の心を落ち着かせない居心地の悪さはむしろ本を置かせないのです。
試し読みがないのが実に残念で、講談社はいいかげんネットでの試し読みをもっと充実させるべきと常々思っているのですがまあそれはともかく、機会があれば書店ででも是非ご一読していただきたいものです。お気に召しましたらお願いいたします。励みになります。
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