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漫画の話です。

魔法少女はガチムチの35歳!? 『魔法少女プリティ☆ベル』の話

「神威の呼び鈴」リィン・ロッドを手に、神威を召喚する魔法少女プリティ☆ベル。五代目の使い手となる少女を探すために、天使であるミルクとココアは人間界を翔び回っていたが、邪魔する魔族の襲撃により二人は傷を負った。それでもリィン・ロッドの導きにより、遂に当代の使い手を見つけた。その者の名は……

魔法少女プリティ☆ベル(1) (BLADE COMICS)

魔法少女プリティ☆ベル(1) (BLADE COMICS)

ということで、KAKERU先生『魔法少女プリティ☆ベル』のレビューです。
そこかしこで言われていることですが、表紙詐欺です。どのくらい詐欺かと言えば、当代のリィン・ロッドの使い手、五代目魔法少女プリティ・ベルに選ばれたのが、高田厚志35歳職業ボディビル選手兼ジムコーチなくらい詐欺。心優しい角刈りガチムチがリィン・ロッドを握れば、ミニスカセーラーに身を包んだガチムチ魔法少女ができあがるって寸法です。上級魔族の動きさえ封じる魔法少女光線は、サイドチェストにダブルバイセップス、アドミナブル・アンド・サイ、サイド・トライセップス等、ボディビルのポージングに乗せて放たれる。もちろん魔法少女コスチュームで。朝の日課である筋トレの最中にアヘ顔してる角刈りが一話からアップになるとか、誰得なんですか? 結局厚志はリィン・ロッドのバグにより選ばれた人間で、本当の魔法少女はまた別にいるのですが、その少女が登場してもなお彼は魔法少女であり続けることを選ぶという…… おい、責任者を呼んでこい。
まあそんな出オチもいいとこな作品なのですが、これが出オチで終わらないのだから素晴らしい。設定としてあるのは魔族と天使による抗争。彼・彼女らには固有の能力があり、それを用いてハデグロな戦闘をする。基本的に一枚岩である天使に比べ、魔族は東西南北の四ヵ国に分かれているので団結力と言う点では及ばないのだが、それぞれのトップである魔王たちは規格外のぶっちぎりな存在。一人で戦略兵器級の強さがあるので、魔族の国同士、そして天使とも均衡を保っている。その余波を受けるのが人間なのだが、魔法少女プリティ☆ベルは人間の守り手。人間の中から選ばれるものでありながら、魔王に匹敵するレベルの能力を持っている。そんな三すくみの状況。
そして、プリティ☆ベルにはある噂がある。プリティ☆ベルが現れる時には世界規模の危機がある、という噂が。初代は「魔王ナイアルラトホテップ事件」、二代目は「海魔騒動」、三代目は何もなかったが、四代目は「イナゴ襲来」。どれも天界魔界人間界全てをひっくり返しかねない大事件でした。このことをよく知っている魔王たちは、今代のプリティ☆ベルは複数、それも男も選ばれているという異常事態にひどくピリピリしています。事実、自分らを返り討ちにした厚志らを逆恨みする魔族に近づく、怪しい存在もいて……と薄暗い展開も進行しています。その状況、そして最強の魔王を前にして一歩も引かない厚志さんは、清濁併せ持つ強さとかっこよさがありますね。魔法少女コスするくせに。
以前レビューした『天空の扉』もそうだったのですが、KAKERU先生はキャラクターの能力や強さの設定を練るのがかなりお好きなようです。練ると言っても、特異な能力を考えるのではなく、ファンタジーの世界ではありふれた能力でも、それが実際に戦術的・戦略的に使用された場合にどのような意味を持つのか、ということを掘り下げるのです。ドラクエでおなじみの魔法である瞬間移動呪文ルーラが最強技になりうる『天空の扉』なんかそれを前面に出していますが、本作でも索敵能力の有用性(これも『天空の扉』で触れられていますが)や「刀で切る」という何の変哲もない能力でも極めることで最強クラスの存在になれるなど、強さ、というか戦いというものについて、普通のファンタジー作品よりも高い視座から考えているように見受けられます。作中で何度か触れられる「平和」についての考えも、それを裏付けているような。
ギャグと、お色気と、緊迫感ある展開と、戦闘に対するスタンス。それぞれががっちり噛み合って、作品を出オチで終わらせません。出オチ以上の中身の濃さに、自分も1巻を買ってから2日で全巻揃えました。
まずはこちらで第一話を読んでみてくだされ。
マッグガーデン コミックオンライン 魔法少女プリティ☆ベル/KAKERU


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