東南アジアはタイにある、悪党どもが蔓延る街・ロアナプラ。日本の商社員・岡島緑郎は、仕事で近辺を航海中に運び屋ラグーン商会の襲撃を受け荷物を強奪、さらには誘拐までされてしまった。なんとか本社と連絡が取れるも、強奪された荷物は倒産の危機に瀕していた会社が社運をかけて運んでいた違法な物。それが表沙汰になることを恐れた会社は、無情にも緑郎を切り捨てることを通告する。タイの街で孤立無援の身となった緑郎。荷物を取り返すために会社が派遣した傭兵隊が迫りくる中、彼は自分を攫ったラグーン商会の面々と共闘することに。これが、日本商社員岡島緑郎が、ロアナプラの運び屋・ラグーン商会のロックとなる始まりだった……
- 作者: 広江礼威
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2002/12/12
- メディア: コミック
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ロアナプラは、表向きは東南アジアの何処にでもありそうな猥雑な街。でも、通りを一本裏に入れば、挨拶代わりに銃をぶっ放し、仕事なら顔見知りだろうと平気で打ち倒し、警察だろうと教会だろうと法とも神とも無縁に好き勝手。神の恩寵なんか微塵も期待できない悪徳の巣窟。にもかかわらず、この街には一定の秩序がある。ロシアンマフィアやチャイニーズマフィアなど各国の組織が置かれ、それぞれの思惑が街に規律を作り、世間から隔絶された社会を生んだ。曰く「現代の
主人公ロックはもともと、国立大学を出ていい会社に就職した、何の変哲もない日本の商社員。それが突然、暴力沙汰に巻き込まれる。泣くし喚くし神にも祈る。ゲロだって吐く。でも、バイオレンスの渦中で博打を思いつき、ギリギリのところでそれが成功、見事事態を打開すれば、中指をおったてて「
腕利き女ガンマンのレヴィ、天才ハッカーのベニー、頭の切れるリーダー・ダッチと、人数は少ないながらも仕事をよくこなし、筋を通すラグーン商会はそれなりの顔で、難解な仕事も飛び込んできます。たいがいのことは銃弾で決着がつく街ですので、銃撃戦はお約束。使われるのは銃だけでなく、爆弾、柳葉刀、チェーンソー、火炎放射器などなど、危険なブツが満載。一度戦闘が始まれば、血煙と硝煙が吹き上がらずにはいられない、デーハーな絵面となります。
さて、この作品の他の魅力は、最初にもちょろっと書いたバタ臭いセリフ回しです。
「信じられねえ。首がもげてねえ。サングラスも無事だ。アーメン・ハレルヤ・ピーナッツバターだ」
「勝手にしやがれ自殺志願者共!! 先にオツムの医者にかかれ、順序は
「神は留守だよ、休暇取ってベガスに行ってる」
「どうしたダッチ? ロアナプラが核攻撃にでもあってたか?」「そっちのほうがまだマシだ、クソったれ。そういうことなら損をするのは俺だけじゃないからな」
「この街はラリった野郎と飲んだくれと
こんなっすわ。もう大好き。
派手な紙面とバタ臭いセリフ回しがあいまって、アメリカのB級映画(褒め言葉)を見ているようなワクワク感。硬軟取り混ぜたコメディとシリアスのハイブリッド。悪徳が滾る街ゆえに生まれる法外な社会性と、それと対照されることで焙り出される一般社会の臭さ。お腹いっぱいになる満足感です。
小学館のホームページで、第ゼロ話を途中まで読めます。
第ゼロ話 試し読み(50pまで)
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