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北の大地に隠された黄金を追う、伝説の兵士とアイヌの少女『ゴールデンカムイ』の話

ということで、野田サトル先生『ゴールデンカムイ』のレビューです。明治末期の北海道を舞台に、隠された金塊を追う男たちと、父を殺した犯人を追うアイヌの少女。追う者逃げる者横から攫おうとする者と、それぞれの思惑が絡み合い、ハイスピードで物語が展開していく血なまぐさいバトルロイヤルが描かれています。
主人公は杉元佐一。日露戦争では「不死身の杉元」と仇名され、獅子奮迅の活躍を見せた男で、本来なら勲章を授与され十分な恩賞をもらっているはずですが、気に入らない上官を半殺しにしたせいでそれもかなわず、北海道の片隅で砂金採りに精を出しています。わざわざ砂金採りなどという一攫千金に手を出したのは、戦死した旧友の妻で、自身の幼なじみでもある梅子のため。思い眼病を患っている彼女をアメリカの名医に見せるため、そしてその息子を何不自由なく育てるためには、莫大なお金が必要でした。ですが、素人が手を出して簡単に大金をつかめるわけがありません。杉元は来る日も徒労に明け暮れていました。
そんなある日、酒に酔った老人から不穏な話を杉元は聞きました。それは大金の話。金を持っていたアイヌたちを殺して金塊を奪った男の話でした。男は捕えられ死刑囚として網走監獄に投獄されるも、拷問されようとも金のありかを決して喋らず、なんとか金を横取りしたい看守らも彼を殺すことは出来ません。そうこうしているうちに男は、同房の死刑囚らの背中に金塊のありかのヒントを入れ墨で彫りこみ、彼らを唆して脱獄させたというのです。そして、脱獄囚たちの入れ墨を集めれば、金のありかがわかるのだと。
もちろん初めは、酔っぱらいのたわごとだと相手にしていなかった杉元ですが、酔いが醒め我に返った老人から殺されかけたことで、俄かに与太話が真実味を帯びだしました。逃げた老人を追う杉元ですが、その最中にヒグマの親子に出くわす羽目に。いくら銃を持っているとはいえ、猟の経験のない杉元に対抗する術はあるはずもなく、あわや殺されるというところで窮地を救ってくれたのが、アイヌの少女・アシリパでした。話を聞けば彼女、金を奪った男が殺したアイヌらの一人の娘だというのです。
こうして、大金を狙う杉元と、父の敵をとりたいと願うアシリパは手を組んで、逃げた脱獄囚たちを追うこととなりました。ですが、杉元ら以外にも、大金を欲しがる監獄の役人に、噂を聞きつけた屯田兵、秘密を知って逃げる脱獄囚、そして金を奪ってアシリパの父らを殺した張本人たる男と、様々な思惑が絡み合っています。現代の価値にして8億という大金は人を狂奔させるに十分な額。軍人も、死刑囚も、戦時の英雄も、時には命をゴミのようにすら扱ってそれを追い求めるのです。
とはいえ主人公の杉元は、誰でも彼でも殺す殺人狂ではありません。「不死身の杉元」の仇名は、日露戦争の最中に多くの傷を受け、首元を銃弾が貫通してもなお戦うことをやめずなかった彼を、畏怖と称賛を込めて呼んだものですが、あくまで彼は殺されないために、生きるためにやむを得ず殺すのです。ただそれは、殺されそうであれば殺すことを厭わないということ。
「俺は殺人狂じゃない ……でも 殺されるくらいなら躊躇なく殺す」
これは彼自身が語った言葉です。
そして杉元と行動を共にすることとなったアイヌの少女・アシリパ。彼女は、内地で育った杉元とは異なる価値観を持ち、小は自然や動植物への知識から、大は殺すことへの道徳まで、彼女と杉元はしばしばいさかいを起こします。1巻の段階ではまだそれは微々たるものですが、これから先、それがどうなるかはわかりません。歳の頃だけでいえばまだ少女に過ぎない彼女ですが、生まれも育ちも異なる人間同士の間で決定的な衝突がいつ起こるのか、それが何をきっかけとするのか、どちらもわからないのです。もとより二人が身を置いた状況は、命を懸けて脱獄囚を追う過酷なバトルロイヤル。生死の境に直面したときに果たしてどう振る舞うのか。
で、そんな血なまぐさい空気の中に時折吹き込むのが、アシリパのアイヌクッキング。リスやウサギを獲るところからのハイレベルなものですが、小動物を捕えようとして生き生きとしているアシリパの顔は年相応のもの。ま、リスを前に舌なめずりをしたのには、さすがの不死身の杉元もドン引きしてますが。美味しいのかな、野生のリスのつみれ汁。

ちょっとしてコメディ描写を挟みつつも物語はスピーディ。脱獄した囚人が何人いるのか明確にはされていませんが、既に3人が登場し、杉元と関わっています。脱獄囚らと接触し、断片的に情報が得られるにつれ、金を奪った黒幕が少しずつ明かされる。スリリングなサスペンスと、血なまぐさい追跡劇と、今後の展開に目が離せません。
試し読みはこちらから。
ゴールデンカムイ/週刊ヤングジャンプ



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