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『GIANT KILLING』思考し続けるプレイヤーによる濃密な試合描写の話

川崎へのリベンジに燃えるETU。思い切りのいい若手の攻撃に幅も出てきた川崎に、ETUも攻撃的な布陣で挑む23巻です。

GIANT KILLING(23) (モーニング KC)

GIANT KILLING(23) (モーニング KC)

序盤から点取り合戦になってきて白熱する試合展開。取られたら取り返すシーソーゲームの中で、ベテラン堺に新人のガブリエルと殿山が積極的に攻めに絡み、キャプテン代理の杉江の下、普段は攻撃の役を担う椿が全体のバランスを考え守備に回る。各人の魅力が出た面白い展開です。
既に何度となく読み返してる23巻(ついでに言えば、その度にまた昔の試合も読みたくなって、本棚から既刊を引っ張り出すのですが)、でも、読み返す度に目頭が熱くなってきます。いったい自分はこの試合展開、もっと広く『GIANT KILLING』のどんなところに魅力を感じているのかを考えてみたら、どうやらそれは、「いい大人たちが必死に何かを考えながら事に当たっている」、という状況のようなのですな。
まあ多分に私の嗜好なのでしょうが、状況に即応するためにはどうすればいいか、と必死に考えている大人たちの姿がカッコイイ。それが仲間と一緒に、つまり個人だけではどうしようもない状況のために「あいつがこう動くだろうから自分はこう動こう」とか「今自分がこう動いているからあいつはこう動くはず」ということを考え動いているのがなおカッコイイ。
フィジカルだけでは打開できない、だから頭を使わなければいけない。頭もただ使えばいいわけではない。自分は何ができるのか、相手はどんな奴なのか、仲間は今どうしてる。刻一刻と流動的に変化するサッカ―と言う団体競技の中で、何をすべきかを考え、状況に即応し、プレーに走る。そういう高度な頭の使い方が『GIANT KILLING』では前面に出されています。
そもそもこのようなスタイルは、ETUの監督である達海が常々言っていることです。

俺がこのキャンプでお前達に求めることは たったひとつだ
そして それが何かは教えない
いいか? 俺がお前たちにどうなって欲しいか どうやったらETUは強くなるのか そのことを常に考えながらプレーするんだ
(16巻 #153)

この言葉に象徴されるような達海のスタイルが、この川崎戦では積極的に表されています。
攻撃が噛み合うとみるや、ガブリエルを使った右からの仕掛けを増やす殿山。。達海の言った「お客を楽しませ」る試合にするためにボランチのバランスを調整する椿。日本代表GKである星野の守るゴールを割るために、速い展開の攻撃を指示する丹波。これらのプレイは達海の指示によるものではなく、みな選手たち自身が試合の流れや場の状況に応じて考えているものです。

この場面はフォローに行くべきか任せるべきか
仲間はどう思っているのかどうしたら上手くいくのか
仲間のことを理解してないとそういう判断はすぐには出来ない
(17巻 #158)

夏合宿での達海の真意を測る杉江はこう言いましたが、まさにそれを体現するシーンがこの試合にはよく表れています。


(23巻 #221)

(23巻 #225)

(23巻 #227)
試合の中でこのようなカットをはさむことで、状況を考えた上でのコミュニケーションが選手間にあることがわかるわけです。脳筋じゃスポーツはできないのですよ。
選手はただ場当たりに動いているのではなく、状況を考えた上で行動しているのがわかるから、試合が濃密に感じる。勝敗には理由があるのがわかる。同時に、運や流れと言ったものが勝敗を左右することもわかる。そしてなにより、試合の過程に、結果に、勝敗に読んでて納得ができる。「リアリティ」とは「説得力」、すなわち読み手を納得させる力であるとは以前書きましたが(「リアリティ」を描く漫画たちの話)、まさにその意味で『GIANT KILLING』は「リアリティ」のある作品です。


23巻で終わるかなと思った川崎戦ですが、熱い展開のまま決着は次巻に持越し。発売は7月か?待ち遠しすぎる!



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