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漫画の話です。

何もなくても楽しいはあるよ『とくにある日々』の話

 中学とか高校生の時って、意外と不自由だったと思うんですよ。
 まず、基本的に勉強しなきゃだから一日の半分は教室の中に拘束される。机の前に向かわされる。
 狭い教室に何十人と人がいて、入れ替わりが少ない。人間関係がどうしても濃密になる。友人ができるとも限らないし、その友人が本当に友人として付き合い続けられるかもわからない。
 部活や行事があるから、授業以外でもなにがしかやらなければいけない。自分の興味のない分野の行事でも、原則強制参加。
 楽しいことならいいですけど、そうじゃないことの方が多いと思うんですよね、やっぱり。朝起きて「やった今日も学校だ!」って人はあんまいないんじゃないでしょうか。
 
 そんな日々があったからなのか、楽しげな学生生活を描いた作品には心惹かれます。リアリティに濃淡あれど、学生だからできる、学生だから許されるような振る舞いで騒いでいる姿、いいですよね。
 『とくにある日々』もそんな姿を描いたコメディです。高校1年の高島黄緑・通称きみと、椎木しい・通称しい、そしてその他のクラスメートや先輩、先生たちが、学校という枠組みの中でなおフリーダムに日々を楽しんでいるのです。

 若さには過剰があります。過剰な体力。過剰な想像力。少しの空き時間でも楽しめる過剰な濃密さ。
 とかく持て余しがちな過剰さですが、なにかの拍子にそれが爆発して、面白いことを見つけ出す。面白いことを考え出す。面白いことをし始める。
 自由を求めてフリーダムな靴下をはいたり、大人のマジ土下座を見てドキドキが止まらなかったり、団地くらい大きくなった自分に数字が刻印されているのを想像したり、新しい10回クイズを考案したり、目的のない部活で目的なく面白いことを探したり。
 特に何もない日々でも、持て余したものがちょいとどこかへ向けば、なにかが楽しいとくにある日々に様変わり。毎日が楽しいですね。

 きみとしいの二人は、基本的に思ったことは口に出していて、内心が書かれることはほとんどないんですが、そのためかすごくあっけらかんとした関係に映ります。
 これやったらいいんじゃないって思ったらすぐに行動するし、これ言った方がいいんじゃないって思ったことはすぐ口に出す。それが楽しい。楽しいから一緒にいる。とっても気楽。まるで子犬同士のような純粋さ。くどくどしくない空気がよいのです。

 くすっと笑ってにやっと笑ってほっと一息ついて。そんなゆるくてなんだか風通しのいい作品なのです。
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