ポンコツ山田.com

漫画の話です。

good!アフタヌーン全連載ざっくりレビュー

good (グッド) ! アフタヌーン 2008年 12月号 [雑誌]

good (グッド) ! アフタヌーン 2008年 12月号 [雑誌]

本日創刊のgood!アフタヌーンを買ってみたので、掲載順に書いてみたいと思います。基本は梗概と感想、ネタバレになりそうなところは白字反転してありますが、一応全体も収納しておきますね。



もやしもん」でおなじみ、石川雅之先生による、中世フランス(おそらく15世紀半ば前後)の魔女っ子物語。とにかく主人公がかわいい。主人公マリアは、フランスの森の中に住む力ある魔女。争いを嫌い、依頼があれば戦陣にサキュバスを遣わして、将官たちの士気を喪失させている。で、少女。で、処女。で、興味のあるお年頃。かわいい。
もやしもん」以外に、「週刊石川雅之」(短編集)、「カタリベ」、「人斬り竜馬」を描いている石川先生ですが、なんかスタンスとして、凝り性だけど手は抜きたい、という印象を受けます。詰めるべきところはしっかり詰めるけど、まあそうじゃないところはそのときが来たらでいいかな、みたいな。あるいは、へんなところが凝り性と言うほうが近いかもですけど。
とりあえず第一話は、主人公のスタンスを説明する感じで終了。コメディ路線なのか、実はシリアス路線に進むのか、まだ断定はできなそう。私見としては前者かなあ。出発点は「カタリベ」とそう遠くないようだけど、それの連載が短命に終わってしまったから、もうちょっとエンターテイメント色を強く打ち出そうといった感じ。宗教色を多少なりとも入れているあたり、単なるコメディでは終わらないんじゃなかろうか。
ちなみに作中にでる名前「ラ・ピュセル」は、ジャンヌ・ダルクの異称。

アフタヌーン(以下、本誌)で連載していた「地雷震」の続編、ということでいいんでしょうか。前作を読んでいないので、そこら辺の詳細はわかりません。前作を読んでおけば、もっと続きに期待できたかな、という感じ。なもので、あまりたいしたことは言えないです。

小学生女子が寮母を務める、学園女子寮のコメディ。たぶん。わずか8ページじゃ説明のしようもないです。なんだろ、この雑誌の女の子率を高めるための作品なのだろうか。いや、たしかにかわいいんですけど。

  • くりーくん/ハグキ

勢い重視のブラック系ギャグ漫画。間違いなく好みは分かれる。主に絵柄のために。本誌で連載中の「ハトよめ」よりは、シュール臭が少なかったと思います。ギャグのわかりやすさ自体はこちらの方が上なんじゃないでしょうか。ネタがわりかしストレートですから。

高校一年生・石堂夏央は、長身の上運動神経抜群で、何のスポーツをやらせてもすぐに誰よりも上手くなってしまう。幼い頃は、「なぜ皆は私みたいにできないのだろう」と考えていたが、長じるにつれそれは自分の才能のためだと気づく。以降、彼女の人生には「退屈」に良く似た「寂しさ」がつきまとうようになっていた。そんな彼女は、学校で「格闘技部」の部員募集を呼びかけている少女に出会う。少女の無邪気な笑顔に苛立ちを覚える彼女は、「格闘技部」の見学に行って……
ということで、ようやく新規のストーリーものです。作者は四季賞出身の連載デビュー組の一人。新人さんです。スポーツ(格闘技)もの&成長ものでしょうか。主人公が自分の才能に退屈している人間で、決して善人ではありません。ネガティブな印象を持つ主人公がどう変わっていくのが、今後の肝でしょう。

京都の長屋でオーダー製本業を営んでいる女性・小春は、主に老人を相手に今日も商売に精を出す。そんなある日やってきたお客は、珍しく若い男性。サングラスをかけてイケメン風の彼は、楽譜を渡して一言、「全部任す」と丸投げの注文を出す……
絵柄は線の細めの、女性漫画家らしいもの。作品内容も、線の細そうないかにも系の人間ドラマ。でも好き。オーダー製本を生計とするような、職人的な女性っていいなと思う。あと京都弁。主人公の女性が地方出身(よそさん)なので、ベタに京都らしいことをするとことか(嫌な客が来た時に、箒を逆さに立てかけたり)。そういう地方独特のニュアンスがある作品て好きです。
まあ言っちゃえば、今回登場したお客の男性とおそらく恋仲にはなるんですが、その二人を中心に話を進めるんじゃなくて、「オーダー製本」という商売を軸に人間模様を進めるんでしょう。たぶん「王様の仕立て屋」の製本業版みたいな。そういうウンチク系も好きです。ノリも好きな感じなので、これは期待したい。

セレブな女性・桜子が行ったパーティーには、今日もろくな男がいない。いつもの風景に退屈を感じていた彼女だが、友人の話では、今日はイケメンで才ある孤高のアーティスト・西園寺悠輝が来るという。その彼は、喪った女性を芸術という形で蘇らせるために、世間的な名声に一切目をくれず、芸術活動に打ち込んでいるという。話半分に聞いていた彼女だが、現れた彼に手を引かれ、彼のマンションへ。そこで目の当たりにした彼の芸術への傾倒に、彼女は心奪われてしまう……
恋愛ものっぽいですが、まあコメディです。本当はかなり破天荒な内容です。なにせ「ルサンチマン・セレブ・コメディ」を謳ってますから。いちおう大雑把に説明すれば、西園寺悠輝の本当の姿は、童貞キモオタプログラマー・山田甚太郎。そんな彼に目をつけたのが、綾小路財閥の一人娘・花恋。彼女の夢は、「日本とか世界を支配」すること。金と美貌を持つ彼女は、男なら支配する自信はあるけど、女にはやっかまれて支配できるとは思えない。そこで世界の残り半分を支配するために、イケメン、それも「ブサイク男のすさまじい怨念を持った超絶イケメン」という本来ありえない存在を得ようと思い、キモオタ人生をひた走ってきた山田を色々と改造して、ブサイクのルサンチマンをもつイケメンを生み出したということなのです(ネタバレにつき反転)。うん、破天荒。
感触としては、「百舌谷さん逆上する」を換骨奪胎すれば、こういう感じになる気がします。面白くなりそうな予感あり。どこまで突き抜けられるかですね。
あ、この人も、連載デビュー組の一人です。

大に通う青木は、油絵とバンドとバイトをかけもつ学生。情熱はあるのだが人あたりが悪く、他人との過剰な関わりを避けて、いつもぶっきらぼう。そんな彼のバイト先の画材屋に、ある日和服の女性が訪れて……
なんとなくドロドロな展開になりそうな恋愛もの。いや、あくまで予感なんですが。

中先生のシュール系ギャグ。ショート三本立て。読者の眼を決して見ない野中先生のギャグ絵は結構面白い、っていうか今回初めてまともに読みました。基本、読者の眼を見ないのね。

イブニングで連載中の同作品の出張版。とりあえず久保先生は、昔日本橋ヨヲコ先生のとこでアシをしていたということで知っています。作品は、まあ、それはそれということで。

  • 地獄堂霊界通信/原作:香月日輪 漫画:みもり

「イタズラ大王三人悪」として名を馳せる小学生三人組・金森てつし、新島良次、椎名裕介。町の外れにある雑貨屋「極楽堂」、通称「地獄堂」の店主から、「公園の池の周りにある木の下には、死体が埋まっている」と聞かされて……
民俗学臭が強い作品かと期待したら、普通のファンタジーでした。ターゲットの年齢層が低めな感じの作品。原作が児童文学の分類ですし、そらそうか。

  • 3センチメンタル/板羽皆

両親が離婚した。コウ・ナン・スズの三兄妹(スズだけ♀)は、母親について田舎に引っ越すことに。一家の大黒柱になろうと密かに心に決める、ヤンキーのコウ。そんなコウの心中を推し量る、チャラ男のナン。もう一度家族全員でいられたらと口には出せないでいる、末娘スズ。三人のセンチメンタルを乗せて、特急は田舎へ……
ハートフル家族ものコメディ。ベタベタな関西弁は、子どもの人情ものに良く合う気がします。三者三様の仲のいい兄妹が、素朴でかわいらしい絵柄で描かれるのはいい感じ。

  • いまドキッ/うみたまこ

チカンに間違えられたせいで、仕事と家(寮)を失う羽目になった須藤順平。女性に間違えられるほどの女顔で華奢な彼が、部屋探しの最中に偶然見つけた物件は、同人漫画家だらけの女性専用アパートで……
性別ごまかしコメディプラスするところのヤオイ。まさに「いまどき」。このヤオイ潮流に乗るだけでない何かを出さないことには、ちょっと厳しそう。

以前本誌で連載していた作品が復活。詳しくはこちらで。巨娘/木村紺/講談社 - ポンコツ山田.com
連載が再開されたことを、なによりも言祝ぎたい。

2036年、北アイルランドのアルスター六州は、英国から独立する。記念式典の警護に立つ警察官レーチェル・ブラックは、過激派の暴走に気を配りながらも、趣味の考古学のことをぼんやりと考えたりもしていた。しかし、荒事は起こる。要人を襲おうとした暴漢を取り押えたはいいが、そんな人間がもぐりこむのを許してしまったことから、犯人たちの背後関係を洗い出すことに。泊り込みのデスクワークに辟易する最中、一人の女性が彼女をたずねてくる……
プチ近未来のサスペンス。あんまり必要もなさそうなのに近未来的軍艦を登場させたり、考古学が趣味の主人公を出したり、ただのサスペンスでは終わらなそう。考古学分野がどう関わってくれるかが気になるところ。

まだ大和朝廷も生まれていない古代日本。あるムラの巫女・「みを」は日々をカミに感謝を捧げながら生きるが、ムラでは誰が厄を祓うタマヒメに選ばれるかでもちきりだ。ヤマトでは毒されたものに憑かれていると考えるみをは、タマヒメになりたいと願うが……
古代を舞台にした、たぶんトランスカルチャー的なお話。「文化」的な生活をするヤマトの民と、彼らが「土蜘蛛」と呼ぶ化外の民。みをは純真にカミを敬うけど、他の巫女たちは、あくまで我欲のためにタマヒメになろうとする。その純真さは、同じヤマトの民より、むしろ土蜘蛛の方が近い。とかなんとかそういう感じ。展開がとてもベタそう。

  • 蹴球少女

中学時代から名フットボールプレイヤーとして名を馳せていた榊原優希。Jリーグユースからの誘いもあった彼だが、親友との約束のために、高校サッカーで国立を目指す。かつて憧れた高校に見事入学し、喜び勇んでサッカー部に行くが、なぜか部員は誰も居らず、代わりに女子が一人だけ。しかも彼女が部長を名乗っている。早とちりから入部届けを書いてしまった彼だが、いまやサッカー部には彼女ともう一人の女子しかいないことを知り、愕然。高校サッカーを半ば諦めるが、彼女の方がやたらと彼につきまとう。そんな彼女を振り切るために、彼は一対一を申し込むが……
お色気ありのスポーツもの。うん、すっげえ少年マガジンっぽい。ルール上、高校男子サッカーに女子がいてもいいものなのだろうか。たぶんだめだよな。そのへんコメディなのかスポーツものなのかがまだ判断しきれない。後者だったらちょっと厳しそうだな。

  • このねこばなし/原作:平井清 漫画:篠崎司

想像好きの少女・小野このねの、空想に溢れた日常のお話。
なんだろ、説明の難しい作品。ほんわか系短編小説を素直に漫画化したっていうのが、たぶん適切。キュートな絵柄と小説っぽい話の展開が、雑誌全体のいい感じのスパイス、かな?だから、もうちょっと真ん中あたりに掲載順をもっていく方が、バランスがいいと思う。デビュー三人組の最後の一人。

会社を潰してしまい、川で釣りをして飢えをしのごうとしている男・化野元(あだしのげん)。そこに唐突に現れた少女。一秒前まで確実にそこにはいなかったその少女はこう言った。「お腹へった」……
ギャグ漫画。真顔なシュールさが素敵。この少女は実は文字通り、どんなものでも食べてしまう子で、そのデタラメさは「ハレグウ」のグウレベル。手に持った箸を何かにかざせば、人間だろうとリアカーだろうと「水あめのように」からめとられ、質量などと言うものを一切考慮されず彼女のお腹の中に消えていく。グウと違うのは、グウは食べたものがお腹の中で現存しうる(食べられた人間も生活できる)し、元の姿のまま吐き出せるが、彼女の場合、吐き出すときに食べたものが混じってしまい、どんなものがでてくるか予想がつかない。今まで食べたあらゆるものもキメラが出てくるのだ。しかも吐く姿は極めて普通。普通の嘔吐。だけどでてくるものは、悠に人間の大きさを越える巨大生物ばかり。どうしようもないくらい謎の少女です。
夢に出てきそうな破天荒さがたまらない。沙村先生ってこういう作品も描けたのね。面白い。

カラスヤサトシ先生と社会学者千田先生の対談式講義+カラスヤ4コマ。ターゲットはどこなのだろう。まあ個人的には興味がなくはないけど。ただ、かなりオーソドックスな社会学の話なので、逆に大学レベルの既習者にはちょっと退屈かも。


以上、全作品ざっくりレビューでした。全体的には、読者層の狙いが低めだと思います。週マガ作家の週マガらしい漫画とか、児童文学原作とか、お色気とか、コメディ色の強さとか、スポーツものの多さとか。「社会学入門」も、むしろ高校生くらいをターゲットにしてるんじゃないでしょうか。かと思えば高橋先生の「地雷震」の続編ですからね。隔月誌ということで、なるべく門戸を広げたのかな?
期待したいのは

です。「巨娘」は期待とかそういうんじゃないので除外です。むしろ埒外。隔月誌なので、単行本発売まで相当先ですが、気長に待ちたいと思います。








お気に召しましたらお願いいたします。励みになります。
一言コメントがある方も、こちらからお気軽にどうぞ。