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漫画の話です。

ラブロマ/とよ田みのる/講談社

ラブロマ(5) <完> (アフタヌーンKC)

ラブロマ(5) <完> (アフタヌーンKC)

「根岸さん好きです。俺とつきあってください」
ちょっと変わった男の子・星野に突然告白された裏表のない女の子・根岸。戸惑う根岸と意に介さない星野。そんな二人の付き合いと、クラスメートたちの三年間は……


とにかく直球勝負の漫画。各話ごとに主に星野、ときたま根岸がストレートに「男女の付き合い」に関する問いを立て、それを二人で、たまにはクラスメートたちの協力を借りつつ、正答ではなくとも解答は出そうと頭を悩ませ、悪戦苦闘の四苦八苦、七転八倒の東奔西走を繰り返す、極めて主題性の強い作品になっています。

メッセージ性の強い作品というのは、とかく押し付けがましくなってしまいがちですが、この漫画にはそのような臭いがあまりしません。
それはおそらくきっと、作者自身がその問いに真摯に向き合って出した解答を、どうすれば自分の心から毀損せずに読者に伝えられるか、悩みに悩んで、頭を捻りに捻って、紙面にぶつけているからでしょう。
もちろんその表現方法のセンスはある程度の水準で要求されますが、心の底から本気で搾り出したものは相手に伝わるものだというのが私の持論です。とよ田先生には、そのような、いい意味での汗臭さが感じられるんです。

とはいえその汗臭さは、表現的なものではなくメンタルなもので、漫画の表現としてはこの作品は、かなりのフットワークの軽さを獲得しています。
オーソドックスなボケとツッコミの会話運びと、太目のシンプルな線によるコミカルな絵、ぱっと見開いた時のページの構成がすっきりしているので、読んでて重たさがありません。
この軽さとメッセージのストレートさがあいまって、この漫画は極めて独自性の強い雰囲気が漂っています。

表現技法としてほかに特筆すべき点は、見開きゴマの多さでしょう。
ページまたぎの大ゴマを、各話のキメシーンでばしばしと使ってきます。

こんなとか

こんなとか。
背景も一緒に描くので、大ゴマのキメゴマにも関わらず、解放感があるのが特徴です。

キメるべきところ、キメたいと思っているところを、大上段から真正面からキメてくる。そんな、普通の漫画家なら思わず躊躇してしまいそうな王道の表現を、とよ田先生は臆することなく使うのです。
その点で、個人的にはとよ田先生は、日本橋ヨヲコ先生やうめ先生と共通していると思います(それについては過去記事も参照のこと)。


あとは、根岸のおでこと零姉さんがとてもかわいいということで。







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