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楽しい趣味はいつでも楽しい! 飛び込めサバゲ沼『サバゲっぱなし』の話

父の会社にコネで入社し、受付嬢として日々ぼんやりとすごしている木枯ニコは、刺激に飢えていた。毎日が退屈。毎日がつまらない。毎日同じことの繰り返し。何か面白いことはないかと夜の街をさまよい、ふと目について入ったのがBar FREIHEIT。壁一面に、酒瓶と一緒に銃が飾り付けられているその店は、サバイバルゲームの愛好家たちが集う場所だった。こうしてニコは、店長の輪や常連のナナらによって、サバゲ沼に落ちていくのだった……

ということで、坂崎ふれでぃ先生の新作『サバゲっぱなし』のレビューです。退屈と金を持て余していたうら若い女性がサバゲにで出会い、あれよあれよという間に沼に落ち、全身全霊で楽しみまくる、そんなある意味とてもシンプルなお話です。
本作の掲載誌であるサンデーGXには、同じく趣味に没頭する女の子たちを描いている『放課後さいころ倶楽部』』(こちらはボードゲームがその対象)がありますが、舞台が高校で思春期の心情なんかも描写しているあちらと違って、各々の所属が異なる中で趣味だけでつながっている社会人が登場人物である本作は、だいぶ趣を異にします。1巻時点で断言できるものではありませんが、趣味以外の部分での心の動きも細やかに描こうとする前者と、「そんなのいいからサバゲしようぜ!!」と言わんばかりにカラッと明るい楽しさを強烈な熱量で溢れさせる後者。両者とも、趣味が登場人物の紐帯となっているのは同じでも、「●●は楽しい!」を描きたいのは同じでも、その過程がずいぶん違います。
楽しさの熱量を端的に表しているのが、第1話の直前、目次の隣のページに書かれているこの言葉でしょう。

楽しいことは、準備するときも
妄想するときも、
休憩するときも、
帰るときも、全部楽しい。そんな漫画です。

楽しいことは全部楽しい。何か楽しみがあれば、それが生きる糧になる。退屈の中に刺激を。平凡な毎日に興奮を。楽しいことはいいことだ。
その楽しいことを知ってしまった主人公のニコ。ハイテンションと財力を十二分に所有する彼女は、よっぽど刺激に飢えていたのかはたまた性にあったのか、勧めたナナたちが軽くひくくらいに猛烈な速さでサバゲ沼へと落ちいきます。そのスピードはもはや、はまるというより、沈むというより、落ちる。もがくどころか、自ら潜っていく。
店を訪れたその日にサバゲ参加を表明し、実際に参加したその帰り道には、持った銃の重量感、発砲したときの反動、少し隙を見せただけで敵に狙われるスリル……そのいちいちに感動し、滂沱の涙とともに実感しました。生きる喜びを。うん、言い過ぎた。
とまれ、一日でその魅力にとりつかれたニコは、my better halfとなる自分の銃を買いに行き、勝てないサバゲでカッコよく勝つための作戦を練り、初のインドアゲームに挑み、二本目の銃としてン十万円もするようなものを買い、当然のようにアクセサリーやパーツもセットで買い、サバゲ仲間も増やし……と、順調に沼を落ち続けています。
で、その沼での棲息が実に生き生きとしている。作中に登場するのは、ニコをはじめとしてほとんどが妙齢の女性なんですが、皆が皆、もうとても楽しそうにサバゲ沼に棲んでるわけですよ。ゲームに参加しているときはもちろんのこと、ゲームの打ち上げも、次回のゲームの計画も、新しい銃やアクセを買おうかどうか悩んでるときも、ゲームのための準備をしているときも、目がキラッキラしてる。まさに、「準備するときも、妄想するときも、休憩するときも、帰るときも、全部楽しい」んです。
自分がわっかるなーと感じたのは買い物のシーン。自分の場合はサバゲではなく服や楽器ですが、同好の友人の趣味の買い物につきあいで行くと、元々はその気がなくても、友人が楽しげにアレ買おうかなコレ買おうかなと悩んでいるところに、アレがいいんじゃないコレもいいんじゃないと口を出し、検討に検討を重ねた結果納得したものを買ってご満悦な様子を見ていると、ついつい自分の財布の紐も緩んでいる。「楽しい」の感情は伝染していくのです。おそろしい……(靴が溢れている玄関から目をそらしながら)。
お小遣いを必死にやりくりしていた子供時代から、自分で稼いだお金をある程度自分の好きに使えるようになった大人が趣味にはまると、いやあ沼ですよ沼。どこかで歯止めをきかせなければならない(眼鏡が溢れている棚から目をそらしながら)。
あ、漫画については別腹ですので,溢れかえるのを気にするとかはもうないです。
とにかく、この作品を読んでサバゲをやりたくなるかどうかはともかく、楽しいと心底思えることがあるのはいいなと思えること請け合いです。趣味はいいぞ。
サバゲっぱなし サンデーGX



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