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あらゆる生物がいなくなった世界で出会った少女とフラミンゴ 『オンノジ』の話

 ある日突然あらゆる生物がいなくなってしまった世界で、一人取り残された少女ミヤコ。たった一人の彼女はあてども無く街を歩き回り、意外とポジティブに状況を楽しみながらも、ふとした時に猛烈な孤独感に襲われていた。そんなある日、ミヤコは謎の動く影を見つけた。その正体は喋るフラミンゴ。オンノジと名付けたそれとの二人だけの生活が、新たに始まる……

 ということで、施川ユウキ先生の新刊『オンノジ』のレビューです。この度施川先生は新作三冊同時発売とあいなったわけですが、その内の一冊です。
 前述のとおり、何の前触れも無くひとりぼっちの世界に取り残されてしまった少女ミヤコ。どこまでいってもどこまでいっても一人。普通なら発狂ものの恐怖なのですが、ミヤコは妙にポジティブに世界をさまよいます。誰も無い道路で寝転がったり、誰もいない家でピンポンダッシュしたり、風邪を引いたので誰もいない病院で寝てみたり。普段できないことを非日常の中で味わって、一人おもしろがったり恥ずかしがったり、変にアクティブ。
 でもそのアクティブさがあるからこそ、ふとした時にやってくる孤独感が切ない。これみよがしにそういう描写はなされないんですが、ほんのりしたそれだからこそ、グッとくるのですよ。病室から見た夕陽があまりにも美しいので、誰も来ないことを知りながらナースコールを押してみたシーンなんか、めちゃくちゃ寂しいですやん。
 で、そんなミヤコが出会ったのがオンノジ。人語を解するフラミンゴである彼に出会ったことは、ミヤコの大きな心の支えになりました。一人より二人。それがフラミンゴでも。
 誰かと話せる楽しさはミヤコを虜にし、いつしか共同生活が始まります。少女とフラミンゴの共同生活。人語を解するどころか、ミヤコを背に乗せて走るわ、スクーターに乗るわ、ドラムを叩くわ、まるで人が如きのオンノジのおかげで、ミヤコの生活はより楽しいものになります。
 ですが、その裏側には空恐ろしいほどのもの悲しさが潜んでいて。
 延々と描かれる、文字通り二人だけの生活。作中のネタを、もしその設定なしに読んでいれば、今までの施川先生の作品同様クスクス笑っていたことでしょう。ですが、どんなに明るく楽しくくだらない生活を二人が送っていても、世界に二人だけしかいないという状況は、息苦しさを感じさせます。息苦しさというか、不穏さというか。見えないところからひたひたと忍び寄ってくるような、圧倒的な孤独感。もし相手がある日いなくなったら。二人しかいない世界というのは、そんな恐怖を常に隠し持っているのです。二人だからこそ寂しさに耐えられるけれど、相手がいて救われたその瞬間こそ、「もしいなくなったら」の仮定がもっとも恐ろしく思われる。そんなものを勝手にビンビン感じていました。
 ネタとしては、今まで施川先生の作品は「クスッ」の笑いが多かったのですが、本作は「ぶふっ」の比率が上がりました。吹き出す感じの笑い。その笑いと虚無的な世界のハイブリッドは、とてもよいものです。
 本作は1巻完結のため、このお話がどういう結末をちゃんと迎えるのかわかるのですが、私はこの終り方が好きです。ラスト2話の流れがマーベラス。是非読んでみてもらいたいです。
 施川先生のブログで、同時発売の他二冊と共に試し読みができるのでどうぞ。
真っ白な原稿の上で、俺は爪を切った。 「鬱ごはん」1巻、「オンノジ」、「バーナード嬢曰く。」単行本3冊同時発売!後、サイン会やります。


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