面白さにいよいよ磨きがかかってきた、水上悟志先生の「惑星のさみだれ」。そこかしこで言われていることですが、この作品では登場人物たちの名前に各種の符合が見られますので、今日はちょっとそこらへんをまとめてみようと思います。 |
まずは主な登場人物の名前を。
名前 | 従者 | 従者の名前の意味 |
---|---|---|
朝比奈さみだれ | 精霊アニマ | (ラテン語)魂 心理学用語で、男性の人格の無意識の女性的な側面 |
雨宮夕日 | トカゲの騎士 ノイ=クレザント | crescent(英語)三日月 |
東雲半月(死亡) | 犬の騎士 ルド=シュバリエ | Un chevalier(仏語)騎士 |
東雲三日月 | カラスの騎士 ムー | 不明 |
南雲宗一郎 | 馬の騎士 ダンス=ダーク | dark(英語)闇 |
風巻豹 | 黒猫の騎士 クー=リッター | 不明(追記 コメント欄より:Ritter(独語)騎士) |
白道八宵 | ヘビの騎士 シア=ムーン | moon(英語)月 |
星川昴 | 鶏の騎士 リー=ソレイユ | Le soleil(仏語)太陽 |
月代雪待 | 亀の騎士 ロン=ユエ | ユエ(中語)月 |
日下部太朗(死亡) | ネズミの騎士 ランス=リュミエール | Lumière(仏語)光 |
宙野花子 | カマキリの騎士 キル=ゾンネ | Die Sonne(独語)太陽 |
茜太陽 | フクロウの騎士 ロキ=ヘリオス | Helios(希語)太陽 |
秋谷稲近(偽名・死亡) | カジキマグロの騎士 ザン=アマル | 不明(追記 コメント欄よりشهر(アラビア語)月) |
− | 魔法使いアニマ | 心理学用語で、女性の人格の無意識の男性面 |
まず括れるのは、アニマとアニムスです。これは心理学用語で対になる概念ですので、他の単語とも明らかに毛色が違うものであり、独立させてしまっていいでしょう。
次は従者の名前の意味で。
陽サイド | 陰サイド | その他 |
---|---|---|
リー=ソレイユ | ノイ=クレザント | ルド=シュバリエ |
ランス=リュミエール | ダンス=ダーク | ムー |
キル=ゾンネ | シア=ムーン | クー=リッター |
ロキ=ヘリオス | ロン=ユエ | |
ザン=アマル(コメント欄より訂正) |
「太陽」や「光」を意味するものが4つ。「月」や「闇」を意味するものが5つ。「騎士」を意味するものが2つ。不明が1つ。
こうして整理してみると、ずいぶん綺麗に分かれたものです。不明の三人も気になりますし、一人まるで違う意味を所有する犬も浮いています。また、唯一一単語で済まされている、カラスも謎です。
次は人間の名前で。
陽サイド | 陰サイド |
---|---|
朝比奈(朝日) | 雨宮 |
東雲*1 | 夕日 |
南雲*2 | 半月 |
日下部 | 三日月 |
宙野*3 | 風巻*4 |
太陽 | 白道*5 |
八宵 | |
星川 | |
昴*6 | |
月代 | |
雪待*7 | |
茜 |
「夕日」や「茜」は太陽でもあるので、どちらに区分するか迷いましたが、朝/昼/夕/夜の四分割のうちで夕に当たり、陰中の陽ということで「夜サイド 陰サイド」としました。「宙野」も中立的な意味合いですが、偏見により「昼サイド 陽サイド」で。
その他上の括りとは関係ない対応関係として
太郎-花子 東雲-南雲
が挙げられそうです。
なお、「秋谷稲近」は偽名なので上記の対応関係内にはいれていませんが、「AKITANI INATIKA」と、ローマ字にしたときに回文になる名前というギミックがあります。
名前の関係性の中で完全に浮いているのが「宗一郎」と「豹」です。この二つに関しては、屁理屈ですら対応関係を見出せませんでした。
わりとぶれのある名前の意味を無視して、騎士団の苗字だけで括ってみましょう。
陽サイド | 陰サイド |
---|---|
東雲 | 雨宮 |
東雲 | 風巻 |
南雲 | 白道 |
日下部 | 星川 |
宙野 | 月代 |
茜 |
偽名の秋谷を除けば、綺麗に二分されました。
このまとめから何か考えてみようか。
あまりまとめずに、思いついたことを箇条書きにしようと思います。
- 騎士と従者で、陰陽の対応は見られない。あってる組もあれば、あってない組もある。まあ不明もいるんだけど。
- 両者が綺麗に分かれるのには、やはり後々意味が出てくるのだろうか。
- 括りに恣意的な所があるのは否めないよね。
- さみだれの夢やアニムスの夢で出てくる場所が月のようであったり(ビスケットハンマーの上という解釈もできるけど)、アニマの頭上の意匠(輪に月と地球のミニチュアがついている)などから察するに、この作品では「月」に大きな意味合いがあるように思える。月は古来から「陰」の象徴であり、「女性」の象徴でもあった。
- 考えてみれば、名前の解釈で恣意性が薄いのは「夕日」、「半月」、「三日月」、「八宵」(これもけっこう微妙だが)、「太陽」くらいで半分以下。やっぱ名前はあんまり関係ないのだろうか。
- でも「夕日」と「茜」の対応は、共に「(初めは)地球の破壊に肯定的である」という意味合いがある気はするな。
- 雪待ってこんな苗字だと「おまえの父ちゃんサムライ〜」っていじめられるんじゃないだろうか。腕っ節が強いから平気か。
- 「ムー」の一単語はやはり浮いている。登場は三番目だと言うのに、12の獣の中で一番影が薄い。時折身体の表面が斑になっている(それともこれは印刷ミスか?)。色々謎なヤツだ。
- シュバリエの意味が浮いているのは、早々に死んだキャラだからという牽強付会な意見はどうだろう。
こんな感じでしょうか。今の段階では、確定的なことはまるでわかりませんね。でも、調べて色々なことが知れてちょっと面白かったです。
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