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漫画の話です。

プラネテス/幸村誠/講談社

プラネテス(1) (モーニング KC)

プラネテス(1) (モーニング KC)

時は西暦2070年代。人類は宇宙への進出を着々と進めている。
主人公は、スペースデブリ(宇宙に散乱している、廃棄された人工衛星や宇宙船の残骸などのゴミ)回収会社に勤める青年星野八郎太。通称ハチマキ。彼は、自分の宇宙船を持つことを目標に、不満を抱えつつも日々の労働に勤しんでいる。

とまあ、こんな感じの出だし。近未来SFではあるけれど、あまりその要素は強くない。基本的には人間ドラマ。

青雲賞受賞も頷ける面白い作品だと思うけれど、単純な作品評はamazonレヴューにでも任せて、私的に気になったこと。それは、PHASE13「風車の町」で口ずさまれているブルーハーツの曲。
その回で、タナベの養父が風車を点検しながら口ずさんでいるのは「夕暮れ」と「ながれもの」。
前者はブルーハーツ名義では最後から二枚目の(実質的には最終の)アルバム「DUG OUT」の曲、さらにそこからリカットされた最終シングル。後者は三枚目のアルバム「TRIN-TRAIN」の中の曲。ありていに言ってしまえば、どちらも非常にマイナーな曲ですな。アルバムを持ってなければまず知らない曲です。私は両方とも好きなんですけど。

で、重要なのは「夕暮れ」の方。
PHASE13は全4巻のうちの、第3巻の2話目。この近辺の話は、ハチマキの二度ある心情転換のうちの二度目の辺り。3巻の後半からハチマキは、物語最後に結実する自身の心情に傾向していく。そのキーパーソンとなるタナベの生い立ちの話であり、物語全体の一つのメルクマールと言える。
そんな話の中で歌われる(それもカラーで)「夕暮れ」。これが軽視できる代物であるはずがない。
多くを語るのはネタバレとなるので控えるが、全4巻を読み終わった後で、是非「夕暮れ」を聴いてもらいたい。歌ってもらいたい。思わず温かな涙がにじんでくること請け合いだ。
ヒロトの朴訥な歌声と古臭いポップスとフォークの合いの子のようなメロディが、じんわりと胸に染み入っていく。「ああ、作者はこういうことがこういう風に言いたいのかな」と。

いいよ。「プラネテス」とブルーハーツ、あわせてお薦めします。ブルーハーツを借りるなら、「Singles 1990-1993」が後期のいいとこどりな感じで初心者向け。有名どころで「情熱の薔薇」も入っているし。

Singles 1990-1993

Singles 1990-1993









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