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好奇心の先には「すこしふしぎ」『好奇心は女子高生を殺す』の話

女子高生。それは世界で一番好奇心旺盛な生き物。話しかけたい人がいれば臆せず話しかけ、見知らぬ建物があれば面白そうだからと行ってみて、しゃべれる動物が捨てられていれば事情を聞いて元の飼い主に文句を言い、世界のためなら宇宙彼方の星でも何のその。頭はいいけど無愛想で社交性の低いあかね子と、社交性が高くて運動神経も抜群だけど壊滅的に勉強のできないみかんの二人は、今日も「すこしふしぎ」に首を突っ込むのです......
好奇心は女子高生を殺す(1) (サンデーうぇぶりコミックス)
ということで、高橋聖一先生『好奇心は女子高生を殺す』のレビューです。
高校入学式の日、青紫あかね子が,後ろの席の柚子原みかんに話しかけられ、窓の向こうに見える謎の建物へ赴くところから第一話は始まります。
「あの建物に興味はありません」
「世界一好奇心旺盛なのは女子高生なんだよ」
そんな会話を交わしつつ、行き着いた先は「初体験館」。春の初体験祭を開催中のそこでは「未体験の出来事を成功させるまでは決して出ることはできません」と謳っていました。体験者としてあかね子は1回500円の体験料を受付で払い、みかんは付添として無料で入り、受付の扉の向こう、暗闇を抜けた先で凸凹女子高生コンビが立っていたのは、なんと絶海の孤島。大きな木が一本立っているだけのそこで、あかね子はいったいどんな未体験を体験しなければならないのか……。
とまあ、古くは藤子F先生、近くは石黒正数先生やつばな先生の系譜に連なるような、「すこしふしぎ」な世界の描き方。日常の中で当たり前に存在する「すこしふしぎ」なことに、当たり前に接して、当たり前のようにトラブルに巻き込まれ、当たり前のように楽しんでいる。そんな世界です。
絶海の孤島に飛ばされた二人も、それ自体を不思議がることはなく、受け入れた上でとりあえず生活を始めようとする。普通ならあり得ないシチュエーションを普通にこなそうとしたらどうなるか。普通ならあり得ない人と出会って、普通に楽しもうとしたらどうなるか。そんな「すこしふしぎ」な世界を、一話完結でコミカルに描いています。
この上手い一話完結ぶりは、最近の作品で言うと山田胡瓜先生の『AIの遺電子』とも通じるところがありますね。一つの話の中で登場させたゲストギミックを軸に、登場人物たちを無理なく動かす感じ。背景や小物にコミカルな情報をいろいろ描き込んでいても、物語を駆動させる描写には余分なものがないから、あるいはそのコミカルな情報の中にさりげなく駆動させる情報を紛れ込ませているから、少ないページ数でも綺麗に物語を落着させています。
主役二人の関係性を見ても、頭でっかちな引っ込み思案のあかね子と、考えるより先に体が動くみかんの二人は、お互いがお互いのいいところ悪いところを補い合い、お互いがお互いに救われ、そして、正反対なのに導き出す答えが同じだったりする、とてもいいコンビ。一話のエンディングで「二人は友達である」という前提を強固に作ったおかげで、以降の話で、二人は当然のごとく仲のいい友達であり、話が進むにつれてもうそれ友達っていうか一歩踏み越えそうになっちゃってね?的なキャッキャウフフ領域まであと少し。
それはともかく、そんな二人が主役なものですから、物語の転がし方やオチは「友達はいいもんだ」というような考え方が強くあるのですが、デフォルメを効かせながら可愛くなりすぎない(具体的には目が小さい)絵柄や、素っ頓狂な設定、小気味の良い台詞回しなどのおかげか、くっさい風にはならず、コミカルにコンパクトにまとまった一話完結となっています。
暇だからなんの気なしにさらっと読むというよりは、あの話が読みたくなったからと狙い撃ちで手にとりたくなるような、山椒は小粒でもぴりりと辛く仕上がった作品です。
好奇心は女子高生を殺す サンデーうぇぶり



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