大学に通うため、佐賀から上京した男子学生・アキ。一人暮らしの侘しさを噛み締めている彼のもとに、突然女子高生が転がり込んで来たものだからビックリ。で、その女子高生が実家で飼っていたネコ・ミルが化けた姿だというのだから二度ビックリ。女子高生の姿をしていながら実年齢が86歳だというのだから三度ビックリ。見た目は女子高生、中身は86歳のおばあさん、その正体は家のネコ。一つ屋根の下の同居生活は、今日もドタバタ……
- 作者: 手原和憲
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/04/28
- メディア: コミック
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家のネコが女子高生になって、一人暮らしの男のもとに転がり込む。それなんてエロゲと思わず呟きかねない設定ですが、意外と言うかなんと言うか、そのようなキャッキャウフフな展開には転がりません。いや、キャラクターは可愛いんですけど、なにせ中身は86歳の大正生まれ。親と子って言うか祖母と孫。でもネコ。
こういうネコのマイペースさと、バァさんのおせっかいがゴッチャになってて…
なかなかついていけんなあ。
(1巻 p13)
その極端な振れ幅は、ラブのほぼないコメディです。そりゃあ女子高生に化けられる86歳の化けネコが家にやってくればドタバタする。中身バァさんのミルのすっとぼけた言動に重ねられる大仰なリアクション、大仰なツッコミ。そのコメディの印象は、ベタな芸人のコントのような、と言うと近いかもしれません。
で、そのベタなコメディと並行して、ミルの生涯にもスポットがあてられます。女子高生に化ける86歳の老描、人並みの知性を持ち、人語を解し、老いず、死なずの化けネコがどう生きて来たか、どう生きざるを得なかったということも、しんみりと描いているのです。
普通のネコなら、ネコとして生きただけです。飼い猫なら飼い猫として、野良猫なら野良猫として、幸福もあり不幸もありのネコらしい生き方が待っていただけなのですが、ミルは化けネコになってしまった。なれてしまった。人並みの知性を持ち、人語を解し。そうなるともう、人になれるネコというよりも、ネコになれる人といった方が近いかもしれません。死なないネコでは、一つの家にとどまり続けることはできない。そんな猫は怖がられる。人並みの知性を持ったから、そんなこともわかってしまう。だからミルは、飼い猫としての幸せはもう望めない、望まない。アキに飼われる前、かつて一度だけ、この人とならと思った飼い主はいたけれど、ミル曰く、「自分のせいでダメにしてしまったから」と、一層自分は一匹で生きるしかないと思い込むことになった。
そんなミルがアキの家で暮らすようになるには、彼とのある出会いがあったからですが、それは1巻の山場のエピソードですのでゴニョゴニョ。
とにかく、コメディとしての化けネコだけではなく、孤独に生きざるを得ない化けネコも同時に描いていて、そのギャップにきゅんとします。
小学館のサイトで一話が試し読みできるので、まずはそちらをどうぞ。
ソク読み ミル/手原和憲
僕もかわいい女子高生に化けるネコが飼いたいんですが、どこにいますか。佐賀ですか。
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