今月号のアフタヌーンで、西尾維新原作『零崎軋識の人間ノック』のコミカライズがスタートしました。それを読んで、以前ふと思ったことを検証してみた記事ですので、漫画でこれから描かれるかもしれない内容について触れています(第1話時点では、まだそこにまでいたってません)。原作未読の方は注意してください。まあ本筋にはかかわらない重箱つつきの話なのですが。
- 作者: 西尾維新,竹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/05/15
- メディア: 文庫
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主人公の軋識からして鉛を鋳造して作り上げた一体成型の釘バット(=凶悪なトゲトゲのついた鉛の棍棒)を自在に振り回す人間ですし、二振りの大型ナイフを組み合わせて鋏にしたものを武器とする殺人鬼とか、自分の主人以外には姿を見られたことがないのが自慢の暗殺者とか、山一つに糸を張り巡らしてその糸から伝わる振動で山中で何が起こっているか手に取るように把握する技術者とか、その糸に一切触れぬまま山中を闊歩する殺し屋とか、そんなんばっか。
で、原作はその軋識と、彼の「家族」である零崎人識がとあるマンションに殴り込むエピソードから始まります(漫画版でも同様です)。高級マンションの最上階にいる標的を軋識が皆殺しにしたところで、それ以外のフロアの全住民(含むペット等)を皆殺しにした人識がやってきました。
地獄絵図と化した部屋の中で、皆殺しまでの過程に違和感を覚えて考え込む軋識でしたが、第六感からか何かに気づき、ぼうっとしていた人識を突き飛ばしつつ自らもその場から飛び退くと、そこに着弾する銃弾。そして遅れて聞こえてくる銃声。弾速が音速を超えるライフルによる1km以上先からの狙撃でした。標的がそのマンションのその部屋に集まり、そこへ軋識らが皆殺しにやってくる、という状況そのものが、その狙撃のための罠だったのです(漫画版第1話はここまでとなっています)。
別々の物陰に隠れる二人。ライフル相手に迂闊に動けない状況で、人識は軋識に、彼が持っている携帯を投げて寄越すよう要求しました。携帯や固定電話で外部へ連絡することができないことは軋識が既に確認済みでした。その上でなぜこれを必要とするのか、いぶかりながらも軋識が携帯を投げると、銃弾がそれを撃ち抜く。そして響く銃声。
これは「突然放り投げられた携帯を撃ち抜けるくらいに狙撃手の技量が高い」ということを示すワンシーンでした。
さて、ここで重箱の隅をほじくってみます。
ライフルの弾速を800m/s(音速の2倍以上。漫画版では、ライフルの弾速を2000〜3000km/h=555〜833m/sとしています)、狙撃地点からマンションまでの距離を1.2km(原作では「1km強」「概算で1.5km」、漫画版では「1km以上」とあります)と仮定しましょう。すると、弾丸がマンションに着弾するまで1.5秒となりますので(空気抵抗や射出角度による加減速は無視)、放り投げられて空中にある携帯をライフル弾が撃ち抜くためには、携帯が撃ち抜かれたその地点に到達する1.5秒前に弾丸は発射される必要があることになります。
ここで、二人が隠れた物陰の距離を5m(原作では言及がありませんが、漫画ではその程度と推測できます)、携帯を放り投げたときの角度を30度としましょう(こちらは完全に推測。5m先に物を放り投げようと思えばそのくらい?)。すると、携帯の滞空時間は約0.76秒となります(放物運動(角度と距離から計算)) 。
約0.76秒。
発射から着弾まで1.5秒かかる弾丸が、姿を現してから消えるまで約0.76秒しかない携帯を撃ち抜く。罠なのでその部屋に盗聴器はありますから、携帯が放り投げられるタイミングはある程度計れるにしてもそれは無論完璧ではないし、どのような軌道をとるかなど予測の埒外。それを撃ち抜く。
早い話、携帯や投げる動作などは一切見えないままに、携帯が放り投げられる前に、1km以上先から既に狙撃点を定めトリガーを引かなければならない、っちゅうことです。ゴルゴでもできるかンなこと。
で、その狙撃手が誰かと言えば、立案や交渉などの戦略面では作中随一ではあるものの、身体能力では人外犇めく作中で珍しく常人並みという設定であるところの中学生・萩原子荻。
ええ、常人並み。
……
…………
……………………………
まあそりゃそんなバランスブレイカーな彼女は、早々に本筋(「戯言」シリーズ)から消されますよね。彼女が生きていれば、アメリカあたりからゴルゴ暗殺の依頼が舞い込んでいたことでしょう。
次号のアフタでここが原作から変更されているかどうか、ちょっと気になってる。お気に召しましたらお願いいたします。励みになります。
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