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漫画の話です。

「けいおん」が人気のようだけど、そういやジャズがテーマの漫画ってあんまないよなという話

最近「けいおん」のアニメが始まって、どうやら人気沸騰のようですね。原作もアニメも観ていないので「けいおん」の中身に直接触れはしませんが、高校時代からサックスをやっている自分のことを考えながら、音楽と漫画にまつわる話をぽやぽやと。


Wikiを見てみたところ、そのものずばり、「音楽漫画」という項目があります。
wikipedia:音楽漫画
もちろんここから漏れている作品も多くあるんでしょうが、ぱっと見て気づくのが、ジャンルがやっぱり似たり寄ったりだってことですかね。この項に載っているものを大別すれば

  • 伝記物
  • クラシック、吹奏楽
  • (広義の)ロック、バンドもの

あたりでしょうか。伝記物なんて最近じゃとんと見ないので、ほとんどがクラシック系かバンド系かに分けられそうです。
そう、日本の音楽漫画には、私がやってきたジャズを扱っているものがほとんど見られないんですよ。Wikiの中では細野不二彦先生の「Blow Up!」があるだけで、それ以外では最近の「坂道のアポロン」がジャズを扱っているみたいです。試し読み冊子で一話を読んだだけなので、今現在どうなっているかはわかりませんが。
あとは、オペラやミュージカルなど、直接的に(歌)声を扱うものもそう多くはないようです。雅楽やその他民族音楽を題材にしたものも聞きませんね。
ジャズがマイナーだとは思いませんが、メインカルチャーに対すればサブ、あるいはカウンターカルチャー的な位置づけになる気はします。その成り立ちから考えても、世間の王道を行くようなものでは決してない。演奏人口も、聴衆も、そりゃあ正確な人数はわかりませんが、クラシックには負けるんじゃないかなと思います。結局のところ、漫画家サイドにその分野に対する教養、少なくとも興味がないとそれを題材にしようとは考えないでしょうから、全体的にメジャーなジャンルの方が作品となりやすいのかなと思います。
絵的な映えの面では、たいした問題はないと思うんですけどね。一応私の好きな曲でも挙げておきましょうか。




さて、ロック系の作品が若者の群像劇として成立しやすい理由に、楽器が比較的安い、というものがあると思います。そりゃあ上を見れば数十万、下手をすればもう一桁上にもいけるギターやベース、あるいはドラムやキーボですが、アマチュア、それも初心者が使う分には五、六万円のものでオッケーでしょう。高校生くらいががんばってバイトして、念願かなって買うには頃合の値段ですし、登場人物たちと同い年くらいの読み手も、「それなら俺も」と思いやすいでしょう。
けれど、管楽器やクラシック系の弦楽器は、高校生が買うにはちょいと気後れしてしまう値段になってしまいます。例えば私のやっているサックス。雑誌の広告などに\29800で教本付き、なんてのがありますが、それを買うのははっきり言ってハイリスクノーリターンです。リターンは皆無。
サックスを真面目にやろうと思ったら、アルトサックスで15万以上、テナーサックスで20万以上は出さなければ、あまりに成長しない自分の音にすぐにへこたれてしまうでしょう。音が悲しいぐらいに値段に左右されてしまうんです。だから、数万くらいで買った管楽器がもう部屋のインテリアって人は結構いるんじゃないでしょうか。


もし全くの初心者を主人公に、バンド的なノリ(=非部活的なノリ)でジャズなどをモチーフに描こうとしても、そもそも気楽に始められないんです。楽器がサックスならば、リードやマウスピース、リガチャーなどの各種小物、メンテナンスや修理などの維持費もかなりかかりますし(そこらへんはギターなども同様ですが)。毎日吹こうと思ったら、楽器本体以外で年間四万円くらいはかかります。自分好みの音に変えようと小物を色々変えれば、その都度万単位でプラス。高校生あたりにこれはきついですぜ。
「放課後ウインドオーケストラ」のような高校部活ものなら、学校側で楽器の貸し出しができたりするので、管楽器と言えども初期投資にそこまでかからず、初めから楽器を吹けるんですが。


ちなみにヴァイオリンなどの弦楽器になるとさらにピンキリ。世界レベルで上を見れば、億にまで届きます。高価なヴァイオリンではストラディバリウスが有名ですが、命より大事な楽器と言うのは決して大袈裟じゃなかったりします。ま、そういうのは数百年の歴史を持っているような、正真正銘のヴィンテージなんですけど。




けど、誰かと演奏するってのは本当に楽しいことだと思います。コール&レンスポンスですか。あいつの音を聴いて、自分の音を聴いてもらって、それで重なる音。音楽を演奏する楽しみって、かなり肉体的ですよ。リズムとメロディに乗って、鳴っている音で身体を震わせ、やりたいように自分たちの音をすり合わせてあーだこーだと言い合うのは、普通の生活では味わえないことだなーと思います。それはもう分野を問わずね。
ロックでもジャズでもクラシックでも、音楽がカッコイイと思ったら一度は手を出してみるといいですよ。ネットのおかげで一頃よりぐっと同好の士を見つけるのも楽になりましたし。故・ナンシー関は三十路を前にしてベースに手を出しましたが、彼女曰く「バンドは大人の遊びだ」です。全くの素人でも、みんなで音を合わせるってのが単純に楽しいんですよ。若者のもやもやした衝動をぶつけるロックもいいですが、いい歳してから楽器に手を出すのも乙なものです。イエイ、レッツ・ミュージック。


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以下余談なんですが、私は吹奏楽を扱っている最近の漫画が、あまり好きではありません。上に挙げた「放課後〜」とか、「ひかるファンファーレ」とか。それらを読むと、なーんか私の中で「アレは違う」というアラームがビーコンビーコン鳴っているんです。
私は高校時代は吹奏楽部に入っていたんですが、たぶんその思い出があまりにもよすぎて、作品に共感ではなく「そんなんじゃねえよ」と反発してしまっているんです。なまじ男子校の、みんな高校に入って初めて楽器に触ったような人ばかり、そんな中で必死こいて色々やって、最終的に県大会で二位、さらに上の大会に進む、という感慨深い経験があるもんだから、鷹揚になれないんですよね。もっと歳をとれば、読めるようになるのかもしれませんけど。
過剰な美化さえされている可能性すらある過去だと、些細なところでさえ引っかかってしまうようです。同様の理由で、ジャズを題材にしている「坂道のアポロン」も読む気になれません。以前、高校の部活以来の友人に「お前は音楽に潔癖すぎる」と言われたことがあるんですが、まあそういうことなんでしょうね。ロックやクラシックなら、その畑に打ち込んだことがないからか気軽に読めるんですけど。
吹奏楽やジャズが読めないんじゃなくて、間口が極端に狭いんだろうな。柏木ハルコ先生の「ブラブラバンバン」は特に気にせず読めた気がするけど、あれはまさに打ち込んでいた真っ最中に読んだからかもしれないし、純粋に音楽ってのとはちょっと違う切り口だったからかもしれないし。まあよくわからん。


上記以外のジャズを扱っている作品を知っている人がいましたら、ご一報いただけたら幸いでーす。








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