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三人の女が荒ぶる叛逆ずべ公アクション『ベアゲルター』の話

新堂九良彦が立ち上げた「噪天会」は、ヤクザ組織としては新興かつ末端でありながら多額の金を稼いでいる。その資金源となっている石婚島いしくなぎじまの秘密を探ろうと懸巣組は、彼らの船に発信器を忍ばせ取引を監視させた。噪天会と、取引相手の謎のドイツ人と、それを監視する懸巣会の三者。そして、その場に忽然と現れた、ドイツ人達を狙う金髪の女殺し屋と、彼女を止めるためにヘリでやってきたチャイナドレスの女殺し屋。一触即発の状況下、懸巣会と一緒に監視をしていた女も場を収めるために出てこざるを得なくなって。
女たちが牙を剥きあう叛逆ずべ公アクションが今始まる……

ベアゲルター(1) (シリウスKC)

ベアゲルター(1) (シリウスKC)

ということで、沙村広明先生『ベアゲルター』のレビューです。性と暴力が溢れ、血やら汗やら涙やらピーやらもろもろの体液が臭い立つ、恐い女たちの物語。
左目に大きな傷と、右腕に鉄の手を持つドイツ人の女・トレーネ。カウンセラーの顔と殺し屋の顔を持つ中国人の女・睫毛ジェマオ。壮絶でありきたりな転落人生を歩んできた、石婚島出身の日本人の女・忍。「石婚島」を軸にヤクザ達が右往左往する中で、三人の女たちがそれぞれの事情で首を突っ込んでいくのです。
恐い女たちの物語と言えば、高橋慶太郎先生の『デストロ246』を以前レビューしましたが、1巻時点で比べると、血腥さではあっちの方が上で、性的な臭さではこっちの方が上って感じ。性的な意味でのプレイが複数出てくるのですが、まあその、いろいろな体液が、ね。
しかしなんですな、『デストロ246』のレビューでも書きましたが、「悪くて強い女」というのには妙な魅力がありますね。「悪くて強い男」とはまた別の。彼女らが美貌の持ち主として描かれているからというのも大きいのでしょうが、細腕で武器をぶん回して大の男達を次々と打ち倒していく姿には、虚淵玄先生いうところの「モンスターというか、もっとおっかないもの」があって、爽快感と、恐怖感と、緊張感と、それらをひっくるめた美しさがある。
そしてこの作品で面白いのは、「悪くて強い女」に交じって、「悪いけど強くはない女」がいること。それは忍。トレーネや睫毛と違い、直接的な暴力手段を有していない(1巻時点)彼女は、何の因果か彼女らが暴力の嵐を吹きすさばせている場に闖入せざるを得なくなり、内心のばっくんばっくんを押し隠しながら、命を賭けた綱渡りに踏み出す。忍の「強くなさ」は、トレーネと睫毛の強さ・異様さを引き立たせ、同時に彼女自身の「強くなさ」ゆえの美しさ、それは弱い者が弱さを自覚したうえで戦うという、悲壮で脆い美しさなのですが、それを際立たせるのです。
物語の前線で飛び回る彼女らの裏では、日本のヤクザ、そしてドイツの怪しげな組織が暗躍していて、彼らが何をやっているのか、そして石婚島がそれとどうかかわっているのか、まだまだ謎は明かされません。女達の背後に進む、理不尽なきな臭い状況なんてのも『デストロ246』ぽいですね。そっちにぐっときた方は一読してみたらいかがでしょう。もちろんあちらが未見の方も是非。


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