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『グラゼニ』プロの中でのプロと、一般人から見るプロの話

グラゼニ』ちょうおもしろい。

グラゼニ(2) (モーニング KC)

グラゼニ(2) (モーニング KC)

時候の挨拶も済ませたところで、その『グラゼニ』の話。過去のレビューはこちら
傍目には華やかに見えるプロ野球選手の実は過酷な人生を、ペーソス交じりのユーモアで描く本作。1巻では引退後にラジオ解説者として「拾われた」元選手の話がありましたが、2巻では、甲子園優勝投手にしてドラフト一位入団にもかかわらず、怪我に泣いて引退、球場の売店で働く元選手や、主人公・凡田夏之介を取材する漫画家、大学野球ではずっと二軍だったものの、卒業後に就職した新聞社ではエースのスポーツ記者となった男性と、現役プロ選手外部からの視点のある話が増えました。
特にいいなと思ったのが、第7話「プロになれなかった男」です。神宮外苑の球場で草野球を楽しんでいる人間の中にいる、かつてサッカーのユースチームでエースだった男。でもプロにはなれなかった男。その彼が、たまたま同じ球場の隅で、リフティングをして遊んでいる凡田らを見かける。ほんのウォームアップ程度にサッカーボールで遊んでいる凡田の運動神経に、今まで凡田をドン臭い選手だと思っていた彼は驚愕します。

うん うん…… 凡田なんてドン臭い選手だと思ってたけど……
こう…… 近くで見るとすげー運動神経いいのな……
いや… ちょっと…… いい・・… なんてレベルじゃない……
これがプロのスポーツでメシを食ってる人種…… ――ってこと……?
(2巻 p11)

自分がやっていた分野でのプレイを目の当たりにしたからこそ、プロの凄さを実感するのです。
そう、当たり前の事ですが、プロはプロなんですよ。すごいんですよ。テレビで試合を見るくらいでは、そつが少ないばかりにむしろ気づかないんですが、そのそつの少なさこそプロの証。スポーツに限りません、漫画だって小説だって音楽だって演劇だって、人様からお金をいただけるだけのことをするには最低限のボーダーがあります。そのボーダーを越えて初めて、個性だなんだと言えるのです。音楽を趣味でやっている身としては、自分の演奏の録音を聴くと、プロのプロたる所以がよくしみじみわかります。生ではなく、録音したものがきちんと聴けるレベルというのは、それだけで難しいことなのです。普段は音楽も聞き流しているかもしれませんが、聞き流せるというのはすなわちはっきりした失敗がないということ。それだけのことが、実はとても難しい。
本作の主人公は、左のワンポイントリリーフの凡田。プロの最前線で活躍しているというわけではありません。作中でそれは、年俸という身も蓋もないもので表現されています。年俸が大きいから才能がある、期待されている。年俸が少ないのはその逆。26歳で1800万の凡田の自己評価は「全然ダメ」なんです。でも、そんな「全然ダメ」の凡田もプロはプロ。アマチュアから見れば、とんでもない運動神経なのです。そもそもプロ選手になれること自体、日本全国の球児の中からほんの一握りなのですか。でもやっぱり、プロの中ではパッとしなくて……
そんな、一握りとしてのプロなんだけど、プロの中では一握り以外。プロの中での凡田と、外の社会から見た凡田。この視点があることで「プロはすげえなあ」と「プロは大変だなあ」の2つの感慨を抱けて、この作品をもっと面白く読めると思うのです。
とりあえず『グラゼニ』ちょうおもしろいからみんな読むといいよ。



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