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きつねのはなし/森見登美彦

きつねのはなし

きつねのはなし

去年の年末から集中的に読んでいた森見氏の作品。「夜は短し歩けよ乙女」、「四畳半神話体系」、「太陽の塔」と読んできて、これが既刊のものの中では一番最後になりました。
でも、刊行された順番は「太陽の塔」(デビュー作)、「四畳半〜」、「きつね〜」、「夜は〜」の順です。読んだ順番はたまたまですね。本屋で見つけた順。
四作品の中で、この「きつねのはなし」は唯一毛色の違う作品になっています。他の作品は、古めかしい言葉遣いを芝居がかった口調でひらひらと講談のように語るスタイルなのですが、この作品だけ、そのような語り口を強いて押し殺しているのです。淡々と、訥々と、ぽつぽつと、短めの文で乾いているリズムを生み出しています。
しかし、文章のリズムは乾いているのですが、そこに文章の内容が加味されると、妙にウエットな雰囲気を帯びてきます。例えて言うなら、夜の海中のような、ゆらゆらと揺れ、先の見通せない暗さ。でもそれは濁っているわけではない。あくまで暗さゆえの見通しの悪さ。その水は澄んでいる。しかし、それでもその澄み方は、水質が完全に綺麗なのではなく、水に動きがないせいで海底に泥や砂が溜まっているようなイメージ。うーん、自分で書いててわかるようなわからないような。
内容は一応ホラーに分類されるんでしょうか。骨董屋を軸にしたちょっと無気味な話が四篇収録されています。けれど、これは他の作品に言える事かも知れませんけど、森見氏の作品は、内容よりもその語り口、独特な筆致にこそ価値があると思います。言葉のリズム、文章のメロディー。それがかなり独特。

機会があれば、氏の作品を一読してみてください。お薦めは「夜は〜」ですかね。手に入れやすいのは「太陽の塔」。今新潮社から文庫本で出版されています。お話としては、最後の収束の仕方がおざなりな気がしてあんまりでしたけど。








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