めがねを忘れてあの子が近い『好きな子がめがねを忘れた』の話

クラス替えで隣の席になった三重さんは、いつもぼうっとしている、めがねの女の子。いつもぼうっとしていて、口を開けば少しずれたことを言って、でも、そんな彼女のことが気になってしかたがない。そんなある日、三重さんはめがねを忘れて登校してきたのでさあ大変。文字通り距離感のつかめない彼女の一挙一動に小村君はもう目が離せないのです……
好きな子がめがねを忘れた(1) (ガンガンコミックスJOKER)
ということで、藤近小梅先生『好きな子がめがねを忘れた』のレビューです。
内容はタイトルそのまんま。隣の席の好きな子が眼鏡を忘れたせいで(おかげで)、男の子がドッキンバクバクするラブ(?)コメです。
まあこのコメディの何がいいって、ド近眼の三重さんがめがねを忘れるものだから、そして三重さんが小学校低学年レベルで恋愛感情が育ってないものだから、小村君に近い。とにかく近い。鼻と鼻が触れ合いそうな距離まで顔を近づけてくるし、それどころか平気で手まで握ってくる。純情な中学生男子が、そんな攻撃に抗えるわけがありません。自分の好きな人の顔が、文字通り、目と鼻の先にあって正気を保てる男子が何処にいましょう?そりゃあ焦点をぼやけさせて意識を半分飛ばして、機械的に受け答えをするしかない。
やってる三重さんにしてみれば、目が悪いんだから相手の顔を認識するために顔を近づけるのは当然だし、道案内してもらうのに手は握ってもらわなきゃだし、待ち望んでいたケーキはは「あーん」てしてもらわなきゃ食べられないし、授業中居眠りして寝ぼければ隣の男子をお父さんと間違えて肩に寄りかかって眠るくらい当たり前です。そうか?
いちいち心臓が跳ね上がり、顔も真っ赤になる小村君と、涼しい顔で目つきの悪い(めがねを忘れたから)三重さん。このギャップこそコメディですね。
さらにこの作品、セリフ回しが妙に癖になります。
ちょっとしたことをしてもらって「このお礼はいつか必ず」だの、めがねを忘れたままドッヂボールの内野に入って「敵も味方もわからない」だの、給食当番を代わろうかという申し出に「私がやる…ううん 私にやらせてほしいの」だの、やけに武士めいた言葉遣いをする三重さんに、三重さんの手を握った自分の手を見つめて「手を洗わないわけにはいかないけど今日の手の皮脂を綿棒などで拭って保存しておきたい」だの、三重さんと一日遊んだ後に「この星の言葉では伝えくれないくらい楽しかった」だの、ちょいちょい気持ち悪いことを口にする小村君。
基本的には、男を惑わす三重さんのド天然思わせぶりワーディングとそれにあたふたする小村君なのですが、その中グッとくるセリフをするっと入れてくるのが楽しいです。
まああとは、毛量の多いスッとした顔の女の子はかわいいという一般常識に踏襲しつつ、めがねを外すとやぶにらみになって、顔を近づけて焦点距離が合うととたんに柔らかい表情になる(目と鼻の距離で)という、宇宙の真理に触れた三重さんはとてもかわいいですよね。必要以上に、と言ってもいいほどに、カメラに近い三重さんの顔が描かれるのは、めがねを忘れてドッキンバクバクという本作の趣旨にのっとっているのです。
試し読みはこちらから。
magazine.jp.square-enix.com
つい何度も手に取って、うふふふふとニヤニヤしてしまういいラブ(?)コメ。おすすめどす。



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