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世界の神秘に触れるのは大巫女見習いの一人の少女 『一変世界』の話

“神の森”の中心にあるガーデラン女神の神殿。それは、人々の生活の中心であり、信仰の中心でもあった。けれど、その頂点にいるはずの大巫女の不在が長く続いており、今は大巫女見習いのプーリョが、大巫女になるべく日々修行を積んでいた。
神殿。それは神秘の力を探る場所。神がおわし、魔物がすまう世界で、大巫女見習いプーリョは何を知り、何をするのか……

一変世界 1 (BUNCH COMICS)

一変世界 1 (BUNCH COMICS)

ということで、明治カナ子先生『一変世界』のレビューです。
神に魔物に超常の力。本作は、私たちが住む世界とは別の理に生きる異世界を舞台にしたファンタジー作品となっています。
異世界の中心には女神の神殿があり、そこにいる大巫女が人々の信仰を一身に集めています。でも、今は大巫女がおらず、一人の大巫女見習いがいるばかり。本作の主人公は、その大巫女見習いの少女・プーリョです。大巫女の唯一の後継である彼女は、周囲を大人の神官らに囲まれ、日々神殿で修業を積んでいます。祝詞をあげ、朝の鐘を鳴らし、行事を差配し、そして何より、神との交感を果たす。大巫女以外には知りえない神秘に触れる、大巫女見習いのプーリョは、少しずつ神に近づいていくのです。
けれどそんなプーリョも、ひとたび神殿を離れれば一人の女の子。変装のためなのか男装をして、市井の友人のエズリンと遊んだりして羽を伸ばします。森の探検をしたり、祝日に夜遊びをしたり。大巫女見習いとしての真面目な顔と、一人の女の子としての無邪気な顔のギャップがとてもかわいらしいですね。


さて本作品の舞台。それは、私たちの常識とはまるで違う出来事が当たり前のものとされている世界と、その世界の中心にある一つの神殿。そしてその神殿の中心となる、大巫女。でも、いまは大巫女が不在であり、それをほとんどの人々は知らない。隠されている、中心の不在。
また、世界がなぜそうあるのか。神殿には、女神には、いったい何があるのか。神秘の力とは何か。それを知るのは大巫女ただ一人。でも、大巫女はいない。隠されている、世界の秘密。
世界の人々にとって隠されている秘密は多く、そしてそれらは私たち読者にも明かされていません。1巻の段階では、神秘の片鱗が無造作に提示され、むしろ謎は深まるばかり。神殿に多数ある石像は何なのか。神殿でゲームに興じる三人の男は何者なのか。15年前に終わった戦とは。大巫女の役割は何なのか。そして、神殿とはいかなる存在なのか。
最初の数話こそ、物語の導入として異世界での日常の話を描いていますが、進むにつれて明かされない謎がどんどん現れてきます。この、いっそ不親切とさえ言える謎の羅列を受け止められるかどうかが、本作を楽しめるか否かの分かれ目だとは思うのですが、そこを乗り越えられれば、魅惑の異世界に耽溺できるかな、と。
『魔法使いの嫁』 もそうなのですが、どうも私は、私にとっての当り前じゃないものが当たり前に描かれている世界に弱いですね。私の目にはひどく危なっかしく映るものが、その世界の理にさえ従えば、ある程度安全に傍にいられるものとできる描写に、妙に心惹かれるのです。この作品にはそれがあります。
2巻以降で謎が明かされだすのか、それとももっとてんこ盛りになっていくのか。まあすべて明かされる必要はないと思いますが、適度な安心感を得られるくらいには、物語の根幹に踏み入れては欲しい、かな。


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