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アイドルだって生身の女の子 『きれいなあのこ』の話

リアルJC・JK六人組アイドルユニット、その名も「平成絶対領域委員会」。大きく芽を出すこともないまま数年で消えていった、数多あるアイドルグループの一つだけど、中の女の子たちには、もちろんそれぞれの人生がある。「絶会」前後の彼女らの一時期を切り取った、百合短編集……

きれいなあのこ (ひらり、コミックス)

きれいなあのこ (ひらり、コミックス)

ということで、吉田丸悠先生の処女単行本『きれいなあのこ』のレビューです。芸能界活動をしている(た)六人の女の子たちに起こった、同性の子たちとの密やかな関係。小学生から大学生まで、その関係が描かれている時期は様々ですが、アイドルあるいは芸能人としてのアイデンティティに由来する、同性の少女への想いがあります。
「清純派」というラベルを貼られ、どうすればそうなれるのかわからない中、同級生の谷本にその範を見出し、彼女に惹かれていく真鈴(高2)。
生活のほとんどを賭けても上手くならない歌に悩んでおり、両親が有名アーティストで自身も歌がうまいくせにそれを粗雑に扱っている(と感じてしまう)同級生の五百森に敵愾心を燃やす、玲歌(中1)。
幼い外見にコンプレックスを感じ、なんとか大人っぽく見られるよう努力しているときに、外見だけは大人びていて中身はまだまだ子供っぽい、同い歳の子役・ちさとに出会ってしまった、里緒(小6)。
「絶会」のメンバーとして、アイドルに命を懸けると公言する美優と、彼女のその熱意に苛立ちと憧れを抱く麻由(中2)。
自分の猛烈なファンだったみつきと同棲をする、グループ解散後の歩(大2)。
彼女たちのエピソードに共通するのは、「自分にないものを持つ子への憧憬」です。
本当の清純に憧れる真鈴。
歌唱力に憧れる玲歌。
大人っぽさに憧れる里緒。
美優のかわいさと熱意に憧れる麻由。
歩のスター性に憧れるみつき。
彼女らは皆、自分が(意識的にであれ無意識にであれ)追い求めている、でもそれを得ることができていないものを持っている同世代の子に憧れを、あるいはその裏返しとしての妬み嫉みを、抱いているのです。
憧憬と嫉妬という背中合わせの感情に振り回される、思春期の女の子。うまくのりこなすことのできないそれのせいで、時には相手を傷つけ、時には自己嫌悪に陥り、時には思いがけない形で爆発してしまう。
そんな、脆くも不安定な思春期がつまった、短編集なのです。お話としては、玲歌のエピソード「ソプラノ・フォルテッシモ」が好き。
描き下ろしで、各キャラの小ネタと後日談が収録されていて、後日談スキーの私としてはとっても満足。あるエピソードの後が描かれると、キャラクターにもちゃんとその後の人生があることがわかって、なんだか安心するのです。
これが初単行本なので、今後がとても期待の作者さん。今後はもうちょっと長めのお話も描いてほしいなーなんて思ってます。


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