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漫画の話です。

「かわいいは、正義!」だけじゃない 『苺ましまろ』の話

苺ましまろ 1 (電撃コミックス)

苺ましまろ 1 (電撃コミックス)

「かわいいは、正義!」のキャッチコピーがあまりにも有名な、ばらスィー先生『苺ましまろ』のレビューです。
そのキャッチコピーの通り、登場するメインキャラクターたちが実にかわいい。黒髪ショートカット、世話焼き気遣い屋の千佳。茶髪ツインテールのトラブルメーカー美羽。おっとり眼鏡っ娘の茉莉。日本語ペラペラ日本文化大好き、金髪英国人のアナ。気だるげな眼差しの千佳の姉、伸恵。地獄のミサワ先生に怒られそうなくらいギリギリまで両目を離した顔のバランスは、もはや職人芸。毎回変わる衣装といい、小学生の幼児体型を隠すどころか意識た上で明確に描く寸胴とか、「ああ、この人はかわいい女の子(ローティーン)が大好きなのだな」と思わずにはいられません。コミックスでは、余白ページにキャラクターの季節のファッションやコスプレなんかも描いてます。

(5巻 p52)
ぽっこりしたお腹とか、パジャマとかの微妙にゆったりした服にできる皺とか、ここまでくると、趣味を通り越して業ですね。
で、この作品の素晴らしいところは、キャラクターのかわいさのみならず、ギャグ漫画としても秀逸であるという点です。
以前の記事でも触れましたが(「苺ましまろ」に見るコマ送り技法によるシュールな笑いの話)、日常の悪ふざけの中で生み出すシュールな笑い。シュールな笑いとは何かというのはなかなかに難しい問題ですが、この作品の場合、一つに、文脈に沿わない表情あるいは無表情、という点が挙げられるでしょう。特にトラブルメーカー美羽に顕著なのですが、悪ふざけをしている最中に真顔になったり、逆に真面目なことをしている最中に変な顔をしていたりと、場の空気にそぐわない表情を大真面目でしているのです。他のキャラクターは一般的なボケとツッコミの構造に組み込まれて、それに則った振る舞い・表情を見せるのですが、美羽がそこにそぐわない表情で、にもかかわらず構造の中にいるために場の文脈が乱れ、一風変わった笑いにつながっているかと思います。美羽とよくからむ千佳世話焼き体質、言い換え得れば苦労人のツッコミ気質なために、美羽がしでかす度にいちいち構造に則ったツッコミを入れてくれるので、美羽の異質さがより浮き上がりますね。
個人的には、1巻からではなく2巻から読んだ方が話に乗れるかなと思います。絵柄が安定しますし、アナちゃんも登場しますし。別に1巻を読まなくても、関係性はすぐにわかります。登場人物が絞られてる作品のメリットですね。
苺ましまろ 2 (電撃コミックス)

苺ましまろ 2 (電撃コミックス)

なにはともあれ私は千佳原理主義なので、そこのところよろしく。


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