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漫画の話です。

「アニキ」に見る、自分の居場所、自分を見てくれる人 

アニキ 2 (ビッグコミックス)

アニキ 2 (ビッグコミックス)

別れた両親のどちらからも置いていかれてしまった少女・ゆず。彼女は遠縁に当たる篠原工務店に引き取られることになった。そこで待っていたのは、強面で寡黙で不器用な「アニキ」を中心とする面々。ゆずはそこでなんとか自分の居場所を見つけようとしていく……

こちら様のサイトで紹介されていて、買ってみました。
ぼくらはみんな「アニキ」になでてもらいたいんだ。
かなりガチンコでハートウォーミングなお話です。


まず父親が家から出て行き、そして新しい男性と一緒になった母親と三人で暮らしていたけど、ついには置いていかれてしまったゆず。このときゆずの心には決定的な傷が残りました。
それは、自分は世の中で邪魔な存在なんじゃないかという疎外感。他人にいつも迷惑をかけてしまっているのではないかという過剰な加害感情。
この傷は、物語を通してゆずの生活に陰を落としています。

新しく暮らすことになった篠原工務店でも、転入してきた学校でも、彼女は周囲との関係に自信がもてません。いつも気後れしてしまいます。
特に学校のクラスでは馴染めず、純粋がゆえに残酷な子供たちは、悪意はないけど同時にひどく心無い言葉をゆずに投げつけ、彼女の心を深く傷つけます。

このときにゆずが感じている、世界からの疎外感。私は邪魔な子なんだという暗い思い。私はそこに深くシンクロしてしまいました。
子供の頃に感じた、あの絶望的なまでの不自由感。自分の存在に自信がもてなかった孤独感。
それらが私の心の古傷のように、じわじわと疼くんです。

漫画の中で、ゆずはその痛みをアニキの強さに救われます。
何かに心傷ついたゆずは、自分をしっかり見つめて発されたアニキの言葉に、自分の存在を承認してもらったように感じているんです。
それは激励であったり、感謝であったり、あるいは叱咤だったりしますが、どれもゆずを真正面に見て、ゆずのことを芯から思って出た言葉でした。ゆすはなによりそのことに喜びを覚えます。

こうして話を重ねるごとに、ゆずの心の傷は少しずつ癒えていき、最後には満面の笑顔を見せるようになりました。
初めのうちは満足に感謝の言葉も言えなかったほどに内気で、自分の心を押し殺してきたゆずは、次第に笑顔も浮かべるようにになり、泣きじゃくりながらも感謝の言葉を言えるようになって、人に余計な気遣いをさせないようにと隠してきた自分の心情も吐露するようになります。自分の居場所を作るためというある種逼迫した気持ちからではなく、単純に誰かを思いやる気持ちから気を遣えるようにもなります。自分に自信がもててきたゆずは、ついには、学芸会に間に合わなかったアニキを教室で待ち、一人で自分の踊りを見せる、それも涙を見せずに!というところまで成長しました。

ゆずの心の成長という観点でこの全二巻を読み通すと、ゆずの心の強さ、余裕、優しさが少しずつ大きくなっていくことにはっとします。
笑顔が増えて、友達もできて、友達のために動くこともできるようになって。
そのことにとてもじんとします。


子供の頃に求めていた、そして今でも求めてしまう、他人から認められたいという気持ち。それをこの作品ではアニキが体現してくれています。
何かに傷ついても、自分がしっかりやっていたことを知っていれば、ちゃんと認めてくれる誰か。その存在にとても許された気持ちになる。
そんな気持ちを、自分とゆずを重ね合わせて読むことで得られると思いますよ。





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