ポンコツ山田.com

漫画の話です。

雑記

おかしみを生み出すズレの話 ボケとツッコミ編2

前回に引き続き。 おかしみを生み出すズレの話 ボケとツッコミ編1 - ポンコツ山田.com 前回の記事の引きで、前回取り扱ったボケとツッコミの関係を「逸脱修正型」と名付け、それとは違うものを「逸脱発見型」としました。今回は、そちらについて。 逸脱発見…

おかしみを生み出すズレについての話

笑いについて、過去から現代にいたるまで多くの知の巨人たちがさまざまな論考を残しており、もちろんその大半、どころか1%も読めてはいないだろうけど、その寡聞の中で私は、河合隼雄氏の、何かを対象化し、対象の中に見出したズレを楽しむ、というもの*1…

『水は海に向かって流れる』「いい子」の直達の怒りと大人への成長の話

前回の記事の最後で予告したくせに少し間が空いてしまいましたが、今回も『水は海に向かって流れる』の話です。前回一か月近くも前じゃん。 ともかく、予告どおりに今回は直達のお話。榊との出会いを通じて、子供のままでいようとする呪いを解いた直達の話で…

『水は海に向かって流れる』榊の怒りと幸せのなり方の話

先ごろ最終巻が発売された、『水は海に向かって流れる』。水は海に向かって流れる(3) (週刊少年マガジンコミックス)作者:田島列島発売日: 2020/09/09メディア: Kindle版16歳の少年と26歳のお姉さんの、一つ屋根の下の複雑な関係もこれに終幕。軽妙な中に…

『葬送のフリーレン』旅でフリーレンが知るもの、気づくものの話

先日発売された1巻を読んで以来、評価うなぎのぼり中の『葬送のフリーレン』。葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)作者:山田鐘人,アベツカサ発売日: 2020/08/18メディア: Kindle版レビューは前回の記事で書きましたが(魔王を倒しても世界は続…

『君が肉になっても』「君」の名は……の話

先日レビューした、とこみち先生の『君が肉になっても』。 yamada10-07.hateblo.jp その中では触れなかったんですが、このタイトルについて、ちょっと考えたことがあります。 それは、この「君」ってだれのこと?という疑問です。 普通に考えれば「君」は、…

『よふかしのうた』セリと秋山と対等な友達の話

前回の記事では、コウの行動原理について書きました。 yamada10-07.hateblo.jp 簡単にまとめれば、コウはナズナを好きになろうとしていますが、それは手段としての恋であり、最終的な目的は、彼女が示した価値観で生きることだ、ということです。 まだ恋をし…

『よふかしのうた』コウの行動原理の話

コトヤマ先生の、現在絶賛連載中の『よふかしのうた』。 本作は言ってみれば、日常に馴染めなくなってしまった少年が、そんな日常を気楽に無視して過ごす吸血鬼の少女と出会う、ボーイ・ミーツ・ガール。ささいなことをきっかけに、学校へ通うことができなく…

『鬼滅の刃』あけすけな言葉と物語の推進力の話

今更ながらに手を出した『鬼滅の刃』。 今月から買いだしたのですが、アニメ化によるフィーバーのあおりを受けて、5巻まで買ったところで品切れ。10月後半の入荷で8巻まで買ったもののまたすぐに品切れ。11月の再々入荷まで待たなければいけません。人気すご…

『BLUE GIANT SUPREME』大の揺るがなさとその意味の話

新刊が出る度にドキドキさせられる『BLUE GIANT SUPREME』。 相変わらず演奏シーンはカッコよく、演奏にしびれるお客さんの表情も秀逸。それがあるから、演奏を終えた後に健闘を称えあうメンバーの抱擁も、カタルシス溢れるものになります。個人的には、キメ…

『ワンダンス』ダンスの自由と動かされる感覚の話

三度あることは四度ある。『ワンダンス』のお話です。 今回は、ワンダの言うダンスの「自由」と、カボの感じたダンスの「動かされてい」る感覚の話。 ワンダはカボからダンスが好きな理由を聞かれ、その一つとして「なんか「自由になれる感じがする」と答え…

『ワンダンス』吃音とリズムとダンスの話

まだまだ書くよ、『ワンダンス』の話。今日はカボの吃音にスポットをあてた話。 本作の主人公カボこと小谷花木には吃音の症状があり、それが彼のコンプレックスとなっています。 吃音とは、簡単に言えばどもること。症状のパターンとして、 ・連発型:一つの…

『ワンダンス』世界を分割して乗るダンスの話

5月にして今年の俺マンに食い込むことがほぼ決定の『ワンダンス』。 レビューはこちら。 踊る彼女は自由に踊る『ワンダンス』の話 - ポンコツ山田.com 高校のダンス部を舞台にした漫画である本作では、ダンスのコツもそこかしこに出てくるのですが、その中で…

『Dr.STONE』と『人間の土地』科学と人間と責任についての話

「次にくるマンガ大賞2018」第2位に輝き、2019年7月からのアニメ化も決定している『Dr.STONE』。 ある日、世界中の人間(とツバメ)が何らかの理由により石化し、およそ3700年の時を越えて復活した主人公の石神千空。人為は自然に還り、野生が蔓延っている…

『映画大好きポンポさん』視線が円を描くキメシーンの話

2巻も最高だった『ポンポさん』。 とはいえやっぱり1巻も最の高。綺麗に完結した一冊の中に起承転結をぎゅっととじこめており、作中のポンポさんの嗜好通り、「シーンとセリフをしっかり取捨選択して 出来る限り簡潔に 作品を通して伝えたいメッセージを表…

『銀河の死なない子供たちへ』マッキの問いと、星になったπの話

下巻の発売からしばらく経ってしまいましたが、『銀河の死なない子供たちへ』の話。 上巻発売時のレビューはこちら。 yamada10-07.hateblo.jp 不老不死の二人の姉弟とその母が暮らす、他に人間のいない地球。三人だけの世界。永遠の生を健やかに享受するπと…

『へうげもの』価値の相対化と「清然」の話

最終巻が発売されてしばらく経ってしまった『へうげもの』。 衝撃的な古田織部の最期(?)に拙者の固き丹田も緩み候えば、何を書いていいものやらと思案していたのですが、全巻再読して、ようやくいくつかポイントが見えてきたので、それをまとめていこうと…

『HUNTER×HUNTER』「道草」の楽しさと、「会いたい」と「見つける事」の違いの話

前回書いたハンタについての記事で、ネテロの遺志とそれを受け継ぐパリストン、二人の共通点と相違点を考えました。 yamada10-07.hateblo.jp 今回の記事では、前回の最後に触れた、二人と同じく「楽しさ」を行動理念に据えているジンについてと、それを考え…

『HUNTER×HUNTER』ネテロの遺志とゲームを楽しむための土俵の話

先日発売された、『HUNTER×HUNTER』35巻。 この密度の作品が年に2冊刊行なら何も文句はないのですがそれはともかく、濃い内容のせいで既刊を読み返さなきゃ継承戦がどんなもんだかすっかり思いだせないでいたので、会長選挙編あたりから再読していたのです…

『ショート・ピース』監督の「想像の域を出」る魅力と、「本音」の肯定の話

前回の記事でレビューした『ショート・ピース』。 世界よ、この素晴らしき人間たちに喝采を 『ショート・ピース』の話 - ポンコツ山田.com そこでの置き土産で、人が根っこのところで抱えている感情の肯定と、主人公キヨハルの「映画が俺の、想像の域を出な…

『アウトレイジ最終章』『銀河の死なない子供たちへ』死ぬことの恐怖の話

つい先日、友人に誘われて、『アウトレイジ 最終章』を観てきました。実のところ、1も2も観ていないでいきなり最終章から観るという非常に罰当たりな観方をしたのですが、これが案外楽しめました。事前にウィキペディアで1と2のあらすじを読んでおいても…

『亜人ちゃんは語りたい』誰かに頭を預けるデュラハンの信頼感の話

今現在唯一、どころか、ここ数年レベルで唯一視聴継続しているアニメ『亜人ちゃんは語りたい』。亜人ちゃんは語りたい 1(完全生産限定版) [Blu-ray]出版社/メーカー: アニプレックス発売日: 2017/03/22メディア: Blu-rayこの商品を含むブログ (5件) を見る6…

『ど根性ガエルの娘』作品の外に実在する登場人物とそこから生まれる奇妙な面白さの話

1月20日の夜、にわかに私のtwitterのTLが騒がしくなりました。多くの人がある作品について語り、また感想のリツイートをしだしたのです。 その作品とは『ど根性ガエルの娘』。同日に第15話がアップされると、その内容に衝撃を受けた人が非常に多かったよ…

『亜人ちゃんは語りたい』デュラハン京子 見本のないものの描き方の話

ペトス先生原作のアニメ『亜人ちゃんは語りたい』の放送が始まりました。 TVアニメ「亜人ちゃんは語りたい」公式サイト とりあえず視聴してみようかと思いチャンネルを合わせました。初回は一時間スペシャルとのことだけど、実のところ、前半30分は声優陣に…

『アリスと蔵六』フキダシによって近づいた漫画とアニメの表現あるいは時間の話

アニメ化! 大事なことなのでもう一度言います。 ア ニ メ 化 ! !アリスと蔵六 7 (リュウコミックス)作者: 今井哲也出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2016/11/11メディア: コミックこの商品を含むブログ (3件) を見るということで、2016年も終わりに…

『GIANT KILLING』不遇不屈の天才・持田 傲慢の裏にある連帯の話

一か月遅れで発売された『GIANT KILLING』42巻。 A代表に呼ばれた東京Vの持田選手と、海外で活躍する現A代表10番の花森両選手の因縁から、ETU対東京Vの東京ダービーへ続いていく、非常に熱い巻となっています。序盤から激しく球際で競り合い、両者一…

『3月のライオン』原作に忠実なアニメと逸脱の面白さの話

アニメ『3月のライオン』の第一話が先日放送されました。3月のライオン 12 (ヤングアニマルコミックス)作者: 羽海野チカ出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2016/09/29メディア: コミックこの商品を含むブログ (33件) を見る原作のChapter.1から2の最終盤まで…

『3月のライオン』想像力と気遣いの成長の話

11巻での重たい父親話も終わり、わりかしライトな話の多かった『3月のライオン』12巻。3月のライオン 12 (ヤングアニマルコミックス)作者: 羽海野チカ出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2016/09/29メディア: コミックこの商品を含むブログ (33件) を見る…

『ベルセルク』世界を前に立つ「普通」の人間の美しさの話

『ベルセルク』38巻が発売されました。『HUNTER×HUNTER』33巻も発売されました。これは今年、何かある。蝕か?ベルセルク 38 (ヤングアニマルコミックス)作者: 三浦建太郎出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2016/06/24メディア: コミックこの商品を含むブログ …

『GIANT KILLING』孤独の道を行きかけた達海と、行ってしまった村越の話

『GIANT KILLING』最新刊の盛り上がりが「最高かよ……」って感じだったので、思わず全巻読み返してました。山田です。GIANT KILLING(39) (モーニングコミックス)作者: ツジトモ,綱本将也出版社/メーカー: 講談社発売日: 2016/03/23メディア: …