俺マン2017の話

毎年行われている俺マン。
oreman.jp
今までこのブログでは特段触れていませんでしたが、毎年こっそり挙げていました。
新年一発目にして二か月半ぶりのブログということで、去年を振り返るべく、俺マン2017の俺ノミネート作品について感想を書いてみようと思います。
なお、俺ギュレーションとして、今年単行本が出た作品5本、というものが勝手に設定されております。あと、書いた順はよかった順というわけではありません。ノミネート5作品については、順不同の良かった5作品ということです。
月曜日の友達 1 (ビッグコミックス)
小学校から中学校に上がり、周りのみんなが途端に大人の振りをしだしたことに違和感を覚える一人の少女と、大人の振りばかりの中で浮いている一人の少年。月曜日の夜に学校で会うことを約束するようになった二人は、二人きりのときだけは、大人の振りをしている友人たちの間では口に出せない思いの丈を、素直に吐きだせる。
子供はいつまでも子供のままではいられない。でも、なれと言われて大人になれるものではない。無理して大人であろうとすることはできる。でも、それはまだ大人ではない。子供と大人の端境で揺れる少年少女の、恋とも友情ともつかない不安定な気持ちを紡ぐ言葉は、現実性という枠組みを軽々と超え、光のように、水滴のように、詩のようにこぼれだしていく。
一般的な漫画とは一線を画しているそのセリフ回しに、ボールや光線、水滴などの幾何学的なモチーフを多く配したポップアート的な絵面。そこに楽しさと裏腹の不穏さが同居した物語がたまりません。
阿部先生と言えば不穏さが代名詞だと勝手に思っていますが、本作にもそれは潜んでいて、少年少女の秘密の遊戯が楽し気に、開放的に描かれれば描かれるほど、その裏側の脆さを感じ取ってしまいます。この不穏さは唯一無二。あまりに不穏な作品は躊躇してしまいますが、本作は不穏さと明るさと脆さのバランスが絶妙で、読み返す度に、私の心の中の崖っぷちでふらふらと孤高に揺れています。ふらふら。
銀河の死なない子供たちへ(上) (電撃コミックスNEXT)
人類が死滅した地球上で、永遠に生きるπ(パイ)とマッキの姉弟。季節が巡り、山が崩れ、海が割れ、動物たちは子孫を残し、死に、その子孫がまた子孫を残し、そして死ぬ。変わり映えのしない千変万化の移ろいの中で、二人は子供のまま生き続けるが、その中で二人が出会ったものとは……
永遠を生きるもの、という、古今東西で語られているモチーフを、施川ユウキ先生が成長しない二人の子供の目を通して描いていきます。
答えの出ない問いを考えるときには、それと対立するものを考えることで、欠性的にそれに形を与える、という方法があります。すなわち、「死」を考えるには、それの存在しない「死なないもの」を考えることで、「死なないもの」から抜け落ちている「死」の形を知ろうとするのです。
そこで語られるものが唯一の答えであるわけではありません。そもそも、そんなものがないからこその答えの出ない問いなのですから。答えの出ない問いに対する優れた答えとは、より多くの人にその問いへと真剣に向かわせるものです。本作にはその気配をビンビンと感じます。
映画大好きポンポさん (ジーンピクシブシリーズ)
ポンポさんは敏腕映画プロデューサー。そんな彼女が見いだした、女優の卵・ナタリーと、映画スタッフ・ジーンという二つの原石は、環境と仕事という研磨を与えられて、見る見るうちに宝石へと化けていくのです。
それだけ聞くと、才能を持つも陽の目を見なかった者達がたまさか優秀なプロデューサーに見いだされたことによる、ただのシンデレラストーリーのようですが、陽の主役であるポンポさんに対比される、陰の主役であるところのジーン君の、映画に対する鬼気迫るとさえ言えるのめりこみの描写が、テンポよく進んでいく陽気な本作の中に一匙の狂気を混ぜ込んで、読み手にぞくぞくとしたものを感じさせます。
改めて読み返し印象に残ったのは、ジーン君がポンポさん脚本の映画を撮影していく中、要所要所で、ポンポさんがイメージした絵が今目の前に出来上がっていることに驚愕しているところです。ポンポさんが脚本を書き上げる中で浮かびあげたイメージと、それを読んで全体の構成を考え撮影を進めるジーン君が思い浮かべたイメージがピタリと一致し、それが二人のあいだで共有される。イメージがカメラの前で現前する度に、ジーン君は驚きに身体を震わせながらポンポさんを見て、ポンポさんはそんなジーン君に「それだよ」と言わんばかりに頷くのです。太極図の如くに陰と陽が一致した瞬間。そのシーンに、私の身体も思わず震えます。そう、なんでこんなに震えるの、と不思議になるくらいに。
作中でポンポさんが言う好みのとおり、テンポよくコンパクトにまとめられた、陽気と狂気の娯楽作品。
BLUE GIANT SUPREME(3) (ビッグコミックススペシャル)
日本で伝説的な一夜のライブを行った大は、一人ドイツへ飛んだ。誰も知り合いのいない街で、大は相棒のサックスとともに新たな一歩を踏み出す……
単行本が出る度に安定して高熱量を叩きだしている『BLUE GIANT』。『~SUPREME』になってもそれは変わりません。大の演奏する姿は、絵しかない漫画からも音が聞こえてくるようで、彼の演奏を耳にした聴衆と同じく心を鷲掴みにされます。
単純な技術を越えた、人を震わせる才能が大にあることは、作中でも彼の師匠から言われていますが、その才能も、才能を生かせるだけの技術なしには十全に活かされません。大が寸暇を惜しんで練習するのは、楽器を吹くことそれ自体が楽しいのはもちろんのこと、自分が楽しく演奏するためには、理屈に基づいた基礎的な、地道な、地味な反復練習が必要なことを知っているからです。
私事ですが、本作を読んだことも一因として、学生時代に吹いていたテナーサックスを久しぶりに再開しました。今更大のようになれるとは思いませんが、練習を繰り返して、少しずつできることが増えていくことを実感できると何とも楽しく、おそらく今が人生で一番楽器を楽しんでいるし、一番うまいです。
何かにひたむきになることの熱量を最も強く味わわせてくる作品だと思います。
GIANT KILLING(45) (モーニングコミックス)
イギリス帰りの元日本代表・達海監督が率いるETUのシーズンもいよいよ最終盤。
45巻まで出る中で、多少の中だるみもありながら、そのたるみがあったからこそ次の爆発があったのだと思わせてくれる長期連載作品。この継続的な面白さにはただただひれ伏す。一度読みだしたらしばらく止まれない作品。大掃除には鬼門だ。

ということで、俺マン2017ノミネートの5作品でした。
次点で『好奇心は女子高生を殺す』(高橋聖一)、『SPECIAL』(平方イコルスン)、『プリンセンス・メゾン』(池辺葵)、『ダンジョン飯』(九井諒子)、『シネマこんぷれっくす!』(ビリー)なんかがあります。
昨年はあまり更新できなかった弊ブログですが、今年こそはがんばりますとか言いませんので、ぼちぼちやっていこうと思います。元旦に更新したのはちょっとした罪滅ぼし。それでは今年もよろしくお願いします。



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