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漫画の話です。

勇介君、いくら恋でもそれはストーカーです 恋愛初心者の危ない恋模様『ゆーあい』の話

高橋勇介君15歳。高校入学式の当日に一目惚れをしました。お相手はクラスメートの相沢あいさん。生まれて初めてのトキメキに、彼女へ話しかけることさえできない勇介君。しかし、あふれる恋心を抑えつけることは出来ず、彼は行動を起こしました。
とりあえず後をつける。
犯罪スレスレの行動っていうかぶっちゃけストーカー事案に、勇介の友人・巻弘樹君も、あいの友人・山里美咲もドンびき。ただ当人のあいだけは、事態を理解しているのかいないのか、勇介の気持ちに気づいているのかいないのか、飄々と振る舞うばかり。あいと目が合えば、まともに話すこともままならずに鼻血を流すだけの勇介君。彼の恋はいったいどうなるの……?

ゆーあい(1) (メテオCOMICS)

ゆーあい(1) (メテオCOMICS)

ということで、とこみち先生の初単行本『ゆーあい』のレビューです。
恋愛初心者の勇介君と、恋愛何考えてんだかわかんないあいちゃん。そんな二人の噛み合うわけのないやりとりに、二人の友人である巻君と美咲ちゃんがいつ果てるとも知れないツッコミをいれまくる。そんなドタバタラブコメディです。……ラブ? ストーキングが?
とまれ、基本的にコミュニケーション能力が高く、人見知りもしないような人間である勇介君が、おそらく生まれて初めてなのであろう、一目惚れ。フォーリンラブ。あいちゃんの顔も見られない、話しかけられない、うかつに向き合えば鼻血を出して卒倒してしまう。ウブを通り越して治療が必要なレベルの反応を見せる彼は、そこからどこをどう拗らせたのか、あいちゃんの後をつける、使用済みのストローをねだる、理科の実験で採取した粘膜細胞をほしがる。別の意味で治療が必要な行為に走る勇介君に、巻君も美咲ちゃんもなんとか彼を止めるべく、声も枯れよとツッコミ続けます。たいへんですね。時には勇介君のやまぬ奇行に疲れ果て、お互いがお互いにつっこむ役割を押し付けたりもしてます。
しかし、そんなわやくちゃに騒ぐ三人をよそに、当のあい本人は勇介君の奇行を基本スルー。後をつけてきても知ってて黙認。どころか、「なんでついてきたの?」とさも不思議そうに直接勇介君を問い詰める(そして勇介君は鼻血を出す)。ストローをねだられれば、「舐めなければいいよ」とあげる。細胞に関しては「ストローよりまぁいいかって思う」と許可(結局手に入れられなかったけど)。その、神秘的ともブラックホールとも形容される大きな目は、何を見てるのか何を考えているのかまるで読ませず、喜怒哀楽すべて同じ表情で済ませる女・相沢あい。ちょっと器が大きすぎやしませんかね。
そんなあいちゃんですが、要所要所で人間らしい、というと語弊がありそうですが、何を考えているかはよくわからないけど何かは考えていそうな表情を浮かべていて、それがただのスラップステイックでは終わらせなそうな予感をさせてくれます。
また、表現面について言うと、本作品は基本的に会話劇なのに、キャラクターがとてもよく動いているし、キャラクターたちがいる世界に奥行、空間を感じられます。それはたぶん、背景のあるコマや、カメラアングルを多方向から、しかも無理を感じさせないように配置しているから。詳しくは別稿に譲りたいところですが、キャラクターたちがいる空間やキャラクター自身が様々な角度から描かれているために、作中での彼らの動きに三次元性を強く感じられるのです。アニメ化(=キャラクターが実際に動いているところ)を想像しやすい、というとそれなりに近い言い方になるかもしれませんね。実際には省略されている、コマとコマの間にあるキャラクターの動作が、容易に想像できるというか、スムーズにコマ同士でつながっているというか。
ギャグ漫画でこういう描き方がされているものは少ないように思えるのですが、テンポの良い会話劇にこの動作のスムーズさがあいまって、ぐいぐい話に引き込まれていくのです。
1巻最終話では、どういう神様のおふざけか、あいちゃんとデートの約束を取り付けることのできた勇介君。さあ、初めてのデートはいったいどうなる?
お薦めのギャグ漫画です。
第一話はこちらからどうぞ。ゆーあい/コミックメテオ


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