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私だけの悪魔を探す、ある少女の旅『フラウ・ファウスト』の話

ファウスト博士。それは、悪魔メフィストフェレスと契約し、悪徳の限りを尽くした一人の伝説の男。多くの人間が知る、おとぎ話フォルクスメルヒェンの登場人物。けれど、少年マリオンが出会った、少女ヨハンナ・ファウストこそ伝説上のその人だった。彼女の目的は、教会によって封じられたメフィストを解放すること。街々をさすらい、メフィストの跡をたどる彼女と、彼女に付き従い知識を得ようとするマリオン。二人の旅路は、悪魔の復活を阻止しようとする教会のために、決して安楽なものとはならない。ヨハンナがメフィストを解放したとき、いったいそこには何があるのか……

フラウ・ファウスト(1) (KCx)

フラウ・ファウスト(1) (KCx)

ということで、ヤマザキコレ先生『フラウ・ファウスト』のレビューです。やはり現在連載中の『魔法使いの嫁』同様、魔法や悪魔が存在する世界のファンタジーとなっております。
ファウストと言えば、ゲーテによる戯曲『ファウスト』があまりにも有名ですが、もともとは中世ドイツに実在していたとされる人物で、その生涯から、ゲーテ以外にも多くの人間の手によって作品のモチーフとなっています。
参考:Wikipedia-ヨハン・ファウスト
本作もそのファウスト伝説の系譜に連なる作品。ヤマザキ先生はファウストを女性とし、封印されたメフィストを解放させるための旅をさせました。
伝説上の人物・ファウスト博士。曰く、頭はいいが強欲。悪魔メフィストと契約し、数多くの悪事を働く。その実態は、膨大な知識欲を抱えた一人の女性でした。己の知識欲を満たすため、悪魔の力を用いる。ただしその力は、あくまで実験や蒐集の手助けのみに用いられ、知識を学びとることそのものは自身の手によって行っていました。
そしてそれは、今から100年余りも前の話。当時は大人の姿だった彼女は、少年マリオンと出会った時、彼より少しばかり年上の、少女と言って差し支えない身体となっていました。教会の異端審問官は、ヨハンナを100年前に死んだはずと言いました。死んだはずの彼女。若返っている彼女。致命傷を受けても傷がふさがる彼女。彼女が死んだとされるとき、そしてメフィストが教会によって封印されたとき、いったい何が起こったのでしょう。彼女とマリオンの旅は、彼女の過去に近づく旅でもあります。
世の噂話では悪行の限りを尽くしたとされるファウスト博士ですが、噂と現実が違うのは世の常。知識欲の充足のために余人には推し量りがたいこともしていた彼女ですが、単純な善悪の物差しを当てはめることが難しいことも多かったようです。たとえば、収穫量が多いかわりに人体に害をなしうるかもしれない麦を、飢餓に苦しむ村に渡したこと。人造生命を造ったこと。それは、あるいは人の道にから外れることかもしれないし、神の教えに反することかもしれない。しかし、それによって救われた人や、それによって生み出された存在は、果たして彼女を恨むのでしょうか。
また気になるのは、彼女とメフィストの契約です。悪魔と契約をすれば見返りを要求されるのは必定で、彼女が譲り渡すものも、例に漏れず魂であるようです。ですがそれは、いつメフィストの手に渡るのでしょう。
人生の不充足を感じていたゲーテファウストは、この世の美しさを実感し、「時よとまれ、汝は美しい」と言ったときに魂を譲り渡すものとされました。では、ヨハンナは? 歯を食いしばりながら件の麦を渡した後に、彼女がメフィストに言った「簡単に堕ちると思うな」という言葉に、なにか秘密がありそうです。
そもそもなぜ彼女はファウストを復活させようとしているのでしょうか。本人曰く、「あいつをシメ」、「あの人間をバカにしたような無駄にいい顔をぶん殴って這いつくばらせたい」というのですが、その言葉を額面通りに受け取るには、彼女が一人の時に見せる姿が感傷的に過ぎるように思えます。100年の時をかけてメフィストを捜し歩く彼女の胸中には、一方ならぬ思いがあるようです。
そして、彼女の知識に憧れ旅を共にする少年マリオン。ヨハンナと同じく知識欲に溢れる彼は、いわば過去の彼女。ヨハンナのすぐそばで彼女の人となりを知り、彼女の知識に触れるマリオンは、悪魔と契約をするような少年になるのでしょうか。それとも、ヨハンナとはまた別の道を見つけるのでしょうか。
第一話の試し読みは、以下のリンク先で。
フラウ・ファウスト-ヤマザキコレ


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