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腹が減っては戦ができぬ 魔物を食べてダンジョン探検『ダンジョン飯』の話

ある日存在が白日の下にさらされた、地下深くに眠る黄金の王国。その深奥にあると言われる宝を目指し、人々は我先にとダンジョンへ潜った。待ち受けるモンスター、食人植物、罠。そして、空腹。深く潜れば潜るほど、モンスターの攻撃は苛烈になり、手持ちの食糧は心もとなく。そんな時、誰かがふと思ったのだ。
「モンスターって食えるんじゃね?」
これは、宝探しそっちのけでモンスター食に心を奪われた男たちの物語である……

ということで、九井諒子先生の新作『ダンジョン飯』のレビューです。エルフもドラゴンも出てくるファンタジーファンタジーした作品でありながら、テーマは飯。モンスターや畸形植物など、ダンジョンで獲(採)れるやつらでどんな料理ができるか、という飯漫画。ファンタジー版『山賊ダイアリー』という認識で大体あってるかもしれませんな。
主人公は戦士のライオス。彼をリーダーとするパーティーはダンジョンへ潜っていましたが、最深部で遭遇したドラゴンによってパーティーは壊滅。かれの実妹である魔法使いファリンのおかげで、辛くもダンジョンから脱出することはできましたが、当のファリンは脱出魔法が効かずドラゴンの腹の中。ライオスはすぐにとって返して彼女を蘇生させようとしますが、あいにくと手元不如意。ダンジョンに入る前の腹ごしらえさえできない状況です。そもそもダンジョンに潜るには、ただ高価な武具があればいいというものではありません。野営道具、ランプなどの灯り、ロープ、各種薬など、戦闘以外に必要なものはいろいろありますが、何より必要なのは食糧。腹が減っては戦ができぬ。ドラゴンに負けたのも、罠にかかって食料の大部分を失ってしまったために、パーティーの士気や体力が落ちてしまったことが大きな要因でした。
ダンジョン探索にとって死活的に重要な食料を買うことすらできなかったライオスが、一刻も早く妹を助けるために考え出したアイデア。それがダンジョン飯でした。

食料は迷宮内で自給自足する
迷宮内には魔物が溢れている つまり生態系が存在しているということだ
肉食の魔物がいればその糧となる草食の魔物が! 装飾の魔物が食う植物に植物の栄養となる水や光や土が!
すなわち人間も迷宮で食っていけるということだ!
(1巻 p17)

彼と一緒にファリンを救おうとしていたパーティーメンバー、エルフのマルシルとハーフフットのチルチャックも、これにはさすがにドンびき。
なにしろ彼らがダンジョン内で目にした魔物は、歩くキノコにバジリスク、大サソリ、大コウモリ、ドラゴンと、どう贔屓目に見ても食いたいと思える代物ではありません。しかし、妹を救うためにそれしかないのなら、ライオスは厭わずそいつらを食ろうてやるのです。ま、本当は昔からいつか機会があったら食べてやろうと思っていたのですが。
こうして、彼ら三人にダンジョン飯の先達、ドワーフのセンシも加わって、自給自足ダンジョン探索が始まったのです。
ダンジョン飯にやたら執着するライオスと、ダンジョン飯にやたら詳しいセンシと、基本毛嫌いするマルシルと、外から諦観混じりの冷静なツッコミを入れるチルチャックとで、話はコメディでテンポよく進んでいきます。なにしろ一話冒頭から肉親がドラゴンに食われてるくせに、深刻さがまるでなし。「みじん切りまでは蘇生した奴がいたよな!?」だの「うんこから生き返った冒険者の例は!?」だの、そんなに命が軽いのかと。この兄、妹を助けるより魔物を食う方が完全にメインだよね。きっとホヤやナマコを初めて食べたのもライオスの係累。
1巻で彼らが作ったのは、「大サソリと歩き茸の水炊き」、「人喰い植物のタルト」、「ローストバジリスク」、「マンドレイクバジリスクのオムレツ」などなど。なんだこの出オチ料理は。「人喰い植物のタルト」の文字列の破壊力、ハンパない。
調理の描写がいちいち細かいのもポイント。大サソリの可食部とか、スライムのさばき方とか、美味しいマンドレイクの採取方法など、現実の料理にはまずもって役に立ちそうもない説明がてんこ盛り。無駄にリアル。
それでいてずるいのは、意外に美味そうなところ。「マンドレイクのかき揚げと大蝙蝠天」、ビールと一緒に食べてみたいぞ。
最初は尻込みしまくるマルシルも、空腹には勝てず嫌々手を伸ばすのですが、その美味さには驚くことしきり。マジかよ。
すごいなこの作品。このままどこまででも行ってほしい。
かなりお薦めなので、書店で見かけたらぜひ手に取ってみてください。



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